「圧縮記帳」の会計処理は下記の2つあります。
この中で「積立金方式」は税効果会計の適用となります。
今回は税効果会計を適用した積立金方式の仕訳処理について解説します。
税効果会計とは?
まず税効果会計とは何か簡単に説明します。
「税効果会計」とは会計上と税務上の一時的な差異を調整することになります。
税法上の利益を所得といい、会計上の利益と税法上の所得は=ではありません。
(会計上)
収益 – 費用 = 利益
(税務上)
益金 – 損金 = 課税所得
課税所得×税率=法人税等
つまり会計上は費用、税法上は損金とならない計上が発生すると
税効果会計の適用となります。
税効果会計の適用は将来差異が解消される一時差異のみになります。
↓税効果会計の詳しい解説は下記をご参考ください。
積立金方式が税効果の適用となる理由
「直接減額方式」が税効果の適用にはなりませんが
「積立金方式」はなぜ税効果の適用なのでしょうか?
それは会計上どちらを選択しても、
税法上は直接減額方式である固定資産圧縮損で損金として計上するからです。
【積立方式の税効果会計】
積立金方式を適用すると下記のようになります。
- 会計上→積立金方式
- 税法上→直接減額方式
会計と税務で計上方法が異なるため税効果会計の適用となります。
税効果会計を適用した積立金方式の仕訳処理
(解答)
※赤字が税効果の仕訳です。
※青字は税効果の適用前と適用後で金額が変更となる箇所です。
(1)国庫補助金受け取った時
現金 | 500,000 | / | 国庫補助金収入 | 500,000 |
法人税調整額等 | 200,000 | / | 繰延税金負債 | 200,000 |
会計上は利益が500,000円になりますが
税法上は全額損金計上できるため0円になります。
そのため500,000円×実効税率40%=200,000円
(2)機械を購入した時
機械 | 1,500,000 | / | 現金 | 1,500,000 |
機械の取得原価は1,500,000円で変わらずです。
(3)X3年3月決算時
① | 減価償却費 | 300,000 | / | 機械減価償却費累計額 | 300,000 |
② | 繰越利益剰余金 | 300,000 | / | 圧縮積立金 | 300,000 |
③ | 圧縮積立金 | 60,000 | / | 繰越利益剰余金 | 60,000 |
④ | 繰延税金負債 | 40,000 | / | 法人税調整額等 | 40,000 |
①減価償却費の計算
取得原価(1,500,000)÷5年=300,000
②圧縮積立金の積み立て
税効果相当額を控除します。500,0000→300,000
※国庫補助金500,000円×(100-40)%=300,000
③圧縮積立金を耐用年数の期間で取り崩す
会計上:圧縮積立金300,000円÷5年=60,000円
④減価償却の会計上と税務上の差額
- 会計上:取得原価(1,500,000)÷5年=300,000
- 税法上:取得原価(1,500,000-500,000)÷5年=200,000
差額300,000-20,000=100,000に実効税率40%掛けます。
100,000×40%=40,000
あるいは①の法人税調整額200,000÷5年=40,000でも求められます。
(参考)
(3)X3年3月決算時の税効果適当なしの場合の仕訳になります。
(3)X3年3月決算時(税効果適用なし)
減価償却費 | 300,000 | / | 機械減価償却費累計額 | 300,000 |
繰越利益剰余金 | 500,000 | / | 圧縮積立金 | 500,000 |
圧縮積立金 | 100,000 | / | 繰越利益剰余金 | 100,000 |
↓税効果適用なしの詳しい解説はこちらになります。
仕訳は複雑ですが
税効果の適用あり・なしで仕訳を比較すると理解しやすくなります。
税効果適用あり・なしの違い
税効果適用あり・なしの違いを下記の表でまとめました。
まとめ
今回は税効果会計を適用した積立金方式の仕訳処理について解説しました。
税効果の適用によって変化するのは下記になります。
- 国庫補助金収入は税務上損金算入のため実効税率掛けて繰延税金負債を計上
- 上記を耐用年数で割って毎年取り崩す
- 圧縮積立資産の積み立ては税効果控除後(100%-実効税率)で計上する。
- 上記を耐用年数で割って毎年取り崩す
- 一時差異のため繰延税金負債は償却終了後に解消される
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