会社員が給料を支払われる時、健康保険、厚生年金などが差し引かれて支払われます。
この健康保険、厚生年金などを「社会保険料」といいます。
今回は【社会保険料】について解説します。
社会保険料とは?
社会保険料とは、社会保険にかかる費用になります。
会社が従業員に給料や賞与を支払う時
源泉所得税・社会保険料を差し引いて支払います。
社会保険は何のための加入するのか?
社会保険は、被保険者が、ケガ・病気・失業などで働けなくなった時でも、
安心して生活できるようにするための制度になります。
会社員は働けなくなった時に備えるため加入します。
社会保険料の種類
社会保険とは下記5つの種類の総称になります。
【社会保険の種類】
- 健康保険
→業務外のケガや病気に備えるための保険 - 厚生年金保険
→老後に備えるための積み立てる保険 - 介護保険
→介護に備えるためお保険 - 雇用保険
→失業に備えるための保険 - 労災保険
→業務中または通勤時のケガや病気に備えるための保険
「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」
社会保険の意味としては、
「広義の社会保険」と「狭義の社会保険」があります。
「広義の社会保険」は労働保険も含めます。
社会保険の加入要件
フルタイムで働いている正社員や契約社員は
社会保険の加入の対象となります。
ただし下記のように従業員の年齢によって加入要件も変わっていきます。
- 「厚生年金保険」は70歳未満
- 「健康保険」は75歳未満
- 「介護保険」は40歳以上65歳未満
介護保険は40歳未満であれば加入対象外となります。
アルバイト・パートの場合
フルタイムでないアルバイト・パートの場合は
下記2つのどちらかを満たす場合は加入対象となります。
- ①勤務時間や日数が正社員の4分の3以上の場合
- ②を満たさなくても下記5つすべて満たす場合
- (1)週の所定労働時間が20時間以上
- (2)勤務期間が1年以上見込まれる
- (3)月額賃金が8.8万円以上
- (4)学生以外
- (5)従業員501人以上の企業に勤務していること
労働保険の加入条件
労働保険には「雇用保険」と「労災保険」があります。
【労働保険の種類】
- 雇用保険
→失業に備えるための保険 - 労災保険
→業務中または通勤時のケガや病気に備えるための保険
雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件は下記3つになります。
【労働保険の種類】
- 31日間以上働く見込みがある場合
- 所定労働時間が週20時間以上の場合
- 学生ではないこと(ただし例外あり)
ただし学生でも下記に該当する場合は雇用保険の適用となります
- 1.卒業見込証明書を有する者であって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定のもの
- 2.休学中の者(事実を証明する文書が必要)
- 3.大学の夜間学部・高等学校の夜間又は定時制課程のもの
- 4.事業主の命により又は、事業主の承認を受け(雇用関係を存続したまま)大学院等に在学するもの
- 5.一定の出席日数を課程修了の要件としない学校に在学する者であって、同種の業務に従事する他の労働者と同様に勤務し得ると認められるもの(事実を証明する文書が必要)
労災保険の加入条件
労災保険は雇用形態(正社員・アルバイトなど)に関わらず
全ての労働者が適用となります。
しかし労災保険は全額、会社が負担となります。
そのため従業員が労災保険を負担することはありません。
社会保険料の計算
次に社会保険料の計算について解説します。
社会保険料は、「従業員」と「会社」の両方が負担します。
この負担の割合は社会保険の種類によって異なります。
社会保険料の負担割合
社会保険料の負担割合は下記のようになります。
【社会保険料の負担割合】
- 健康保険
→会社と従業員で50%ずつ負担 - 厚生年金保険
→会社と従業員で50%ずつ負担 - 介護保険
→会社と従業員で50%ずつ負担 - 雇用保険
→会社と従業員で負担するが、負担割合は会社の方が多い - 労災保険
→全額、会社が負担する。従業員の負担はなし
標準報酬月額とは?
社会保険料の計算では「標準報酬月額」が用いられます。
標準報酬月額とは、社会保険料の計算をするために作られたもので
1~50の等級(厚生年金は1~32)に区分されます。
4月-6月の3ヶ月間の標準報酬月額の平均額をもとに決定します。
よく「4-6月に残業すると給料の手取りが減る」と言われますが、これは社会保険料の計算に使われるためになります。
この4月-6月の給与によって、
9月から翌年の8月までの標準報酬月額が決定し、
社会保険料が計算されます。
賞与も社会保険料の対象となるのか?
上記は毎月支払われる給与の話になりますが、
賞与の場合も社会保険料の対象となります。
しかし賞与の場合は、標準賞与額によって社会保険料が決定します。
①健康保険の計算
従業員負担の健康保険料=標準報酬月額×健康保険料率 ×50%
健康保険は「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と「健康保険組合」があり
健康保険料率は都道府県によって異なります。
また、従業員と会社で折半となるため、50%かけます。
②厚生年金保険の計算
従業員負担の厚生年金保険料=標準報酬月額×厚生年金保険料率 ×50%
厚生年金保険料率はその年によって変動することがありますが
2017年9月以降は18.3%で固定されています。
③介護保険の計算
従業員負担の介護保険料=標準報酬月額×介護保険料率 ×50%
介護保険料は40歳以上65歳未満が対象となります。
④雇用保険の計算
雇用保険料 = 賃金総額 × 雇用保険料率
雇用保険では標準報酬月額は用いません。
賃金総額を用いて計算します。
賃金総額は、会社が従業員に対して支払う給与や賞与、通勤手当なども含めたものになります。
また従業員(労働者)と会社(事業主)による雇用保険料率は下記のようになります。
○令和4年4月1日 ~ 令和4年9月30日
労働者負担 | 事業主負担 | |
一般の事業 | 3/1,000 | 6.5/1,000 |
農林水産・ 清酒製造の事業 | 4/1,000 | 7.5/1,000 |
建設の事業 | 4/1,000 | 8.5/1,000 |
○令和4年10月1日 ~ 令和5年3月31日
労働者負担 | 事業主負担 | |
一般の事業 | 5/1,000 | 8.5/1,000 |
農林水産・ 清酒製造の事業 | 6/1,000 | 9.5/1,000 |
建設の事業 | 6/1,000 | 10.5/1,000 |
雇用保険料率の値上げはコロナ渦による失業が増えたためと言えます。
⑤労災保険の計算
労災保険料=従業員の賃金総額×労災保険料率
労災保険は全額、会社が負担するため
従業員が負担することはありません。
労災保険料率は、業種によって異なります。
まとめ
今回は【社会保険料】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 社会保険は、被保険者が、ケガ・病気・失業などで働けなくなった時でも、安心して生活できるようにするための制度である。
- 社会保険は下記の5種類である。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 健康保険、厚生年金保険、介護保険は標準報酬月額を用いて計算する。
- 標準報酬月額とは、社会保険料の計算をするために作られたもので
4月-6月の3ヶ月間の給与の平均額をもとに決定する。