今回は【事業主貸・事業主借・元入金】について解説します。
事業主貸・事業主借とは?
事業主貸・事業主借は個人事業主特有の勘定科目になります。
法人では存在しない勘定科目です。
個人事業主の場合、
「事業のお金」と「プライベートのお金」
を区別しなければなりません。
しかし生活上、一時的に
「プライベートの費用」を「事業のお金」で支払ったり、
「事業の費用」を「プライベートのお金」で支払ったりする場面があります。
この時に「事業主貸」「事業主借」という勘定科目を使用します。
事業主貸とは?
事業主貸は「事業のお金」を「事業主」に貸すことです。
貸しているから「事業主“貸“」になります。
事業主貸は「資産」になります。
法人の勘定科目でいうと事業主に対する「貸付金」のようなイメージになります。
事業主借とは?
事業主借は「事業のお金」を「事業主」から借りることです。
借りているから「事業主“借“」になります。
事業主借は「負債」になります。
法人の勘定科目でいうと
事業主に対する「借入金」のようなイメージになります。
事業主貸の仕訳例
事業主貸の仕訳の具体例を挙げると下記のようになります。
(解答)
事業主貸 (資産) | 1,000 | / | 普通預金 | 1,000 |
事業用の普通預金が減少するため、貸方に計上します。
そのお金は事業主(プライベートの自分)に貸したことになるため
「事業主貸(資産)」の増加となります。
生活費は事業の費用ではなく、プライベートの費用になります。
(解答)
地代家賃 | 6,000 | / | 普通預金 | 10,000 |
事業主貸 (資産) | 4,000 | / |
個人事業主の場合、自宅兼事務所で家賃を支払っている場合があります。
住居用の部分の家賃を、事業のお金で支払った場合、
そのお金は事業主(プライベートの自分)に貸したことになるため
「事業主貸(資産)」の増加となります。
- 事業用:10,000×60%=6,000円
- 住居用:10,000×40%=4,000円
住居用の部分の家賃は事業の費用ではないため、事業主に貸したことになります。
事業主借の仕訳例
事業主借の仕訳の具体例を挙げると下記のようになります。
(解答)
普通預金 | 3,000 | / | 事業主借 (負債) | 3,000 |
事業用の普通預金が増加するため、借方に計上します。
そのお金は事業主(プライベートの自分)から借りたことになるため
「事業主借(負債)」の増加となります。
事業主からお金を借りたことになります。
(解答)
消耗品費 | 300 | / | 事業主借 (負債) | 300 |
事業用の消耗品を購入したため、費用の増加として消耗品費を借方で計上します。
これはプライベートのお金で支払い、
そのお金は事業主(プライベートの自分)から借りたことになるため
「事業主借(負債)」の増加となります。
事業の費用を事業主のお金で支払っているため、事業主から借りたことになります。
事業主貸・事業主借の相殺のタイミングは?
- 「事業主貸」は、貸したお金
- 「事業主借」は、借りたお金
この2つが両建てで計上されている時
どこかのタイミングで「相殺して整理した方がいいのか?」と考える人もいると思います。
「貸したお金」と「借りたお金」を相殺するということです。
相殺する必要はありません。
ただし、決算時に「元入金」という勘定科目に振り替える必要があります。
事業主貸・事業主借の決算時の仕訳
事業主貸・事業主借は決算時に「元入金(もといれきん)」へ振り替えます。
元入金とは?
元入金とは、個人事業主で扱う純資産の科目です。
これも事業主貸・事業主借と同様に法人では存在しない勘定科目です。
法人でいう「資本金」になります。
これの個人事業主が「元入金」です。
決算時の処理
事業主貸・事業主借は決算時には残高を0にして
「元入金」へ振り替えます。
事業主貸・事業主借の相殺がない代わりに
(解答)
事業主借 (負債の減少) | 3,000 | / | 事業主貸 (資産の減少) | 5,000 |
/ | 元入金 (純資産の増加) | 3,000 |
元入金はマイナスになってもいいのか?
上記の場合、元入金3,000円とプラスになっていますが
事業主借>事業主貸の場合は元入金がマイナス残となります。
しかし、元入金がマイナスになることは特に問題ありません。
元入金はマイナスになっても問題ありません。
法人の場合はどうなるのか?
法人では「事業主貸」「事業主借」という勘定科目は使いません。
しかし法人も個人事業主と同様に
「会社のお金」と「社長・従業員のお金」で入り繰りが発生する場合もあります。
小さい会社の場合は一時的に入り繰りが発生することがあります。
この場合、法人では下記のような勘定科目を用います。
- 「事業主貸」の代わりに
→「役員貸付金」「従業員貸付金」 - 「事業主借」の代わりに
→「役員借入金」「従業員借入金」
役員借入金の仕訳の具体例
(解答)
(1) | 水道光熱費 | 1,000 | / | 役員借入金 (負債の増加) | 1,000 |
(2) | 役員借入金 (負債の減少) | 1,000 | / | 普通預金 | 1,000 |
(1)の解説
会社の水道光熱費について、
社長の個人のクレジットカードで支払いました。
会社のお金から支払っていませんが、社長からお金を借りたことになるため
役員借入金の増加となります。
(2)の解説
会社は、社長から借りたお金を返済する必要があります。
返済することで、役員借入金の減少し、普通預金が減少します。
まとめ
今回は【事業主貸・事業主借・元入金】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 事業主貸・事業主借は個人事業主特有の勘定科目になります。
- 事業主貸は「事業のお金」を「事業主」に貸すこと
- 事業主借は「事業のお金」を「事業主」から借りること
- 事業主貸・事業主借の相殺はしない。代わりに元入金への振り替える。
- 元入金は法人でいう資本金のようなもの
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