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事業主貸・事業主借・元入金とは?仕訳や相殺のタイミング

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今回は【事業主貸・事業主借・元入金】について解説します。

本記事の内容
  • 事業主貸・事業主借とは?
  • 事業主貸・事業主借の仕訳例
  • 事業主貸・事業主借の相殺のタイミングは?
  • 事業主貸・事業主借の決算仕訳
  • 元入金とは?
  • 法人でも事業主貸・事業主借は使うことはあるのか?
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事業主貸・事業主借とは?

事業主貸・事業主借は個人事業主特有の勘定科目になります。

法人では存在しない勘定科目です。

個人事業主の場合、

事業のお金」と「プライベートのお金

を区別しなければなりません。

しかし生活上、一時的に

「プライベートの費用」を「事業のお金」で支払ったり、

「事業の費用」を「プライベートのお金」で支払ったりする場面があります。

この時に「事業主貸」「事業主借」という勘定科目を使用します。

「事業主貸」「事業主借」は個人事業主特有の勘定科目のため

企業経理として仕事している人は、あまり馴染みがないかもしれません。

しかし、税理士事務所フリーランスで仕事している場合はよく使う勘定科目です。

事業主貸とは?

事業主貸は「事業のお金」を「事業主」に貸すことです。

貸しているから「事業主”“」になります。

事業主貸は「資産」になります。

事業主貸は「資産

法人の勘定科目でいうと事業主に対する「貸付金」のようなイメージになります。

事業主借とは?

事業主借は「事業のお金」を「事業主」から借りることです。

借りているから「事業主”“」になります。

事業主借は「負債」になります。

事業主借は「負債

法人の勘定科目でいうと

事業主に対する「借入金」のようなイメージになります。

事業主貸・事業主借の

「貸」「借」は「貸方」「借方」ではなく

「貸付金」「借入金」の略になります。

事業主貸の仕訳

事業主貸の仕訳の具体例を挙げると下記のようになります。

例題

生活費支払うために事業用の普通預金の銀行口座から1,000円を引き出した

(解答)

事業主貸
(資産)
1,000/普通預金1,000

事業用の普通預金が減少するため、貸方に計上します。

そのお金は事業主(プライベートの自分)に貸したことになるため

事業主貸(資産)」の増加となります。

生活費は事業の費用ではなく、プライベートの費用になります。

例題

事業所兼住居の家賃10,000円が事業用の普通預金の銀行口座から引き落とされた。

事業所の面積は40%、住居の面積は60%である。

(解答)

地代家賃6,000/普通預金10,000
事業主貸
(資産)
4,000/

個人事業主の場合、自宅兼事務所で家賃を支払っている場合があります。

住居用の部分の家賃を、事業のお金で支払った場合、

そのお金は事業主(プライベートの自分)に貸したことになるため

事業主貸(資産)」の増加となります。

  • 事業用:10,000×60%=6,000円
  • 住居用:10,000×40%=4,000円

住居用の部分の家賃は事業の費用ではないため、事業主に貸したことになります。

事業主借の仕訳

事業主借の仕訳の具体例を挙げると下記のようになります。

例題

プライベートのお金3,000円を

事業用の普通預金口座に入金した。

(解答)

普通預金3,000/事業主借
(負債)
3,000

事業用の普通預金が増加するため、借方に計上します。

そのお金は事業主(プライベートの自分)から借りたことになるため

事業主借(負債)」の増加となります。

事業主からお金を借りたことになります。

例題

仕事で使う消耗品500円を

プライベートのお金で支払った。

(解答)

消耗品費300/事業主借
(負債)
300

事業用の消耗品を購入したため、費用の増加として消耗品費を借方で計上します。

これはプライベートのお金で支払い、

そのお金は事業主(プライベートの自分)から借りたことになるため

事業主借(負債)」の増加となります。

事業の費用を事業主のお金で支払っているため、事業主から借りたことになります。

事業主貸・事業主借の相殺のタイミングは?

  • 「事業主」は、したお金
  • 「事業主」は、りたお金

この2つが両建てで計上されている時

どこかのタイミングで「相殺して整理した方がいいのか?」と考える人もいると思います。

「貸したお金」と「借りたお金」を相殺するということです。

では、相殺のタイミングはいつなのか?

→実はこれは相殺する必要はありません。

しかし、代わりに決算時に「元入金」という勘定科目に振り替える必要があります。

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事業主貸・事業主借の決算時の仕訳

事業主貸・事業主借は決算時に「元入金(もといれきん)」へ振り替えます。

個人事業主であれば12月31日が決算になります。

元入金とは?

元入金とは、個人事業主で扱う純資産の科目です。

これも事業主貸・事業主借と同様に法人では存在しない勘定科目です。

法人でいう「資本金」になります。

これの個人事業主が「元入金」です。

決算時の処理

事業主貸・事業主借は決算時には残高を0にして

元入金」へ振り替えます。

事業主貸・事業主借の相殺がない代わりに

例題

決算時の残高が下記の場合の決算仕訳を示しなさい。

  • 事業主貸5,000円
  • 事業主借3,000円

(解答)

事業主借
(負債の減少)
3,000/事業主貸
(資産の減少)
5,000
/元入金
(純資産の増加)
3,000

元入金はマイナスになってもいいのか?

上記の場合、元入金3,000円とプラスになっていますが

事業主借事業主貸の場合は元入金がマイナス残となります。

しかし、元入金がマイナスになることは特に問題ありません。

詳しく解説

事業が上手くいっていない時、事業のお金だけでは資金が足りないため

プライベートのお金を事業用の口座につぎ込むことがあります。

元入金のマイナス残は上記のような場合に発生します。

元入金はマイナスになっても問題ありません。

法人の場合はどうなるのか?

法人では「事業主貸」「事業主借」という勘定科目は使いません。

しかし法人も個人事業主と同様に

会社のお金」と「社長・従業員のお金」で入り繰りが発生する場合もあります。

小さい会社の場合は一時的に入り繰りが発生することがあります。

この場合、法人では下記のような勘定科目を用います。

  • 「事業主貸」の代わりに
    →「役員貸付金」「従業員貸付金
  • 「事業主借」の代わりに
    →「役員借入金」「従業員借入金

役員借入金の仕訳の具体例

例題

下記の仕訳を示しなさい

  • (1)会社の水道光熱費1,000円を社長の個人のクレジットカードで支払った。
  • (2)上記について会社の普通預金から社長へ支払った。

(解答)

(1)水道光熱費1,000/役員借入金
(負債の増加)
1,000
(2)役員借入金
(負債の減少)
1,000/普通預金1,000

(1)の解説

会社の水道光熱費について、

社長の個人のクレジットカードで支払いました。

会社のお金から支払っていませんが、社長からお金を借りたことになるため

役員借入金の増加となります。

(2)の解説

会社は、社長から借りたお金を返済する必要があります。

返済することで、役員借入金の減少し、普通預金が減少します。

詳しく解説

例えばクレジットカードを使って事業のお金を支払う時

法人カードを使用します。

しかし、小さい会社では信用力が低いため

法人カードの審査に通らない場合があります。

この時、社長の個人カードを利用して会社の経費を支払います。

一時的に会社が社長のお金から借りたことになるため、

役員借入金となります。

まとめ

今回は【事業主貸・事業主借・元入金】について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 事業主貸・事業主借は個人事業主特有の勘定科目になります。
  • 事業主貸は「事業のお金」を「事業主」に貸すこと
  • 事業主借は「事業のお金」を「事業主」から借りること
  • 事業主貸・事業主借の相殺はしない。代わりに元入金への振り替える。
  • 元入金は法人でいう資本金のようなもの

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