今回は法人契約の生命保険の仕訳【1/2養老保険】について解説します。
保険制度とは?
まず保険制度について解説します。
保険は大きく下記2つに分類されます。
【公的保険】
国や地方公共団体が運営している保険
【私的年金】
民間の保険会社が運営している保険
そして私的保険はさらに下記にように分類されます。
【生命保険】
※第一分野の保険
人の生死に関して保証する定額給付の保険
(例)定期保険・終身保険・養老保険など
【損害保険】
※第二分野の保険
事故で発生した損害を補てんする保険
(例)火災保険・自賠責保険・自動車保険など
【第三分野の保険】
上記どちらにも属さない保険。ケガや病気に備える保険。
(例)医療保険・介護保険・がん保険
今回解説するのは法人契約の【生命保険】の仕訳処理になります。
生命保険の仕訳処理
生命保険の場合
保険の種類や契約形態によって経理処理が異なります。
生命保険の場合は下記のような経理処理を行います。
- 貯蓄性のない保険
(定期保険など)
→損金に算入 - 貯蓄性のある保険
(終身保険・養老保険・年金保険など)
→資産に計上
※ただし、受取人が被保険者またはその遺族の場合は損金で処理します
損金とは税務上の費用のことです。
他の保険と大きく違うのは
生命保険の場合、費用ではなく、資産として処理する場合があるということです。
今回は上記の中の【1/2養老保険】について解説します。
1/2養老保険(ハーフタックスプラン)
養老保険は、貯蓄性のある保険のため全額資産として計上します。
しかし下記の要件を満たしていれば、
保険料の半分を損金として計上することができます。
- 契約者・・法人
- 被保険者・・役員・従業員の全員
- 満期保険金の受取人・・法人
- 死亡保険金の受取人・・役員・従業員の遺族
これを「1/2養老保険(ハーフタックスプラン)」といいます。
2分の1は損金計上が認められるため、このような呼び方になります。
【1/2養老保険(ハーフタックスプラン)】
- 2分の1は資産で計上
→「保険料積立金」 - 2分の1は損金に算入
→「福利厚生費」
例題:保険料を支払った時
(解答)
保険料積立金 (資産) | 500,000 | / | 現金 | 1,000,000 |
福利厚生費 (損金) | 500,000 | / |
1/2養老保険の場合、
資産(保険料積立金)・損金(福利厚生費)を半分ずつ計上します。
例題:保険金を受け取った時
保険金を受け取った時の仕訳は下記3つに分けて解説していきます。
- 死亡保険金を受け取った時
- 満期保険金を受け取った時
- 解約返戻金を受け取った時
死亡保険金を受け取った時
(解答)
雑損失 | 500,000 | / | 保険料積立金 (資産) | 500,000 |
保険金を受け取った時は資産として計上されている「保険料積立金」の取り崩しを行います。
これにより入金額と差額が生じた場合は
雑損失・雑収入で処理します。
今回の保険金は従業員の遺族が受け取ったため、法人にはお金は入金されません。
そのため全額、雑損失で計上します。
保険金の受取人が法人ではない場合、お金が入金されないため、全額雑損失となります。
満期保険金を受け取った時
(解答)
普通預金 | 1,050,000 | / | 保険料積立金 (資産) | 500,000 |
/ | 雑収入 | 550,000 |
保険金を受け取った時は資産として計上されている「保険料積立金」の取り崩しを行います。
これにより入金額と差額が生じた場合は
雑損失・雑収入で処理します。
保険金額1,050,000-保険料積立金500,000=550,000(雑収入)
解約返戻金を受け取った時
(解答)
普通預金 | 450,000 | / | 保険料積立金 (資産) | 500,000 |
雑損失 | 50,000 | / |
解約返戻金を受け取った時は資産として計上されている「保険料積立金」の取り崩しを行います。
これにより入金額と差額が生じた場合は
雑損失・雑収入で処理します。
解約返戻金450,000-保険料積立金500,000=50,000(雑損失)
資産として計上された「保険料積立金」は満期を迎えた時や解約した時に取り崩します。
なぜ2分の1は損金として認められるのか?
1/2養老保険は、なぜ2分の1は損金として認められるのでしょうか?
それは下記のような構成となっているためです。
- 従業員が死亡しなかった場合、満期保険金を法人が受け取ります。
→資産性がある。 - 従業員が死亡した場合、死亡保険金は被保険者が受け取り、法人は受け取りません。
→資産性がない。
資産性がある場合は「資産」、ない場合は「損金」となりますが
上記が起こる確率は半々ということで、それぞれ資産と損金で計上します。
まとめ
今回は法人契約の生命保険の仕訳【1/2養老保険】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 保険制度は「公的保険」と「私的保険」があります。
- 私的保険は大きく下記に分類される。
- 生命保険※第一分野の保険
- 損害保険※第二分野の保険
- 第三分野の保険
- 生命保険の中の[1/2養老保険]は下記のように経理処理を行います。
【1/2養老保険(ハーフタックスプラン)】
〇経理処理
- 2分の1は資産で計上
→「保険料積立金」 - 2分の1は損金に算入
→「福利厚生費」
〇要件
- 契約者・・法人
- 被保険者・・役員・従業員の全員
- 満期保険金の受取人・・法人
- 死亡保険金の受取人・・役員・従業員の遺族
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