全部純資産直入法で「その他有価証券」の評価差額が発生した場合
「その他有価証券評価差額金(純資産)」
の勘定科目で処理します。
その他有価証券評価差額金は
費用(または収益)ではなく
なぜ純資産なのでしょうか?
今回はその理由について解説します。
「その他有価証券評価差額金」はなぜ純資産か?
その理由は下記になります。
事業遂行上などの理由からただちに売却・換金できない場合があるため
売買目的有価証券の場合
その他有価証券
「その他有価証券」の場合は、売買目的で取得したものではないため、
換金性は低いと言えます。
直ちに売却して換金することができないため、
評価差額は当期の損益として計上することができません。
そのため「その他有価証券評価差額金」は純資産で計上します。
換金性があるかどうかがポイントになります。
「部分純資産直入法」の場合の疑問
では「部分純資産直入法」の場合の時価評価は下記のようになります。
【部分純資産直入法の時価評価】
- 評価益の場合
→「その他有価証券評価差額金(純資産)」 - 評価損の場合
→「投資有価証券評価損(営業外費用)」
評価損の場合、投資有価証券評価損(営業外費用)となる理由
それは企業会計原則の1つ「保守主義の原則」によるものです。
六.保守主義の原則
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
これは要するに収益は遅く少なめに、費用は早く多めに処理することをいいます。
つまり、費用である[評価損]は当期の費用として計上し
収益である[評価益]は、保守主義の原則にもとづき
当期の収益として計上しないで純資産として計上するのが
「部分純資産直入法」となります。
「部分純資産直入法」は保守主義の原則によるものになります。
↓「保守主義の原則」については下記でも詳しく解説しております。
有価証券の評価について
また他の有価証券の時価評価については下記のようになります。
①【売買目的有価証券】
→時価
②【満期保有目的債券】
→取得原価(または償却原価)
③【子会社株式・関連会社株式】
→取得原価
④【その他有価証券】
→時価
なぜ②③は取得原価なのか?
「満期保有目的債券」「子会社株式・関連会社」は取得原価で評価します。
これは売却することがめったにないためです。
- ②満期保有目的債券
→満期まで保有するため - ③子会社株式・関連会社
→支配を目的で保有するため
売却することはめったにないため、時価ではなく取得原価で評価します。
有価証券を売却する時は時価をもって算出されることが多くあります。
そのため売却する可能性が高い有価証券は時価で評価します。
「満期保有目的債券」「子会社株式・関連会社」は
売却可能性が低いため取得原価となります。
売却することがめったにない②③は時価への評価替えをしません。
なぜ①④は時価なのか?
それに対して
- ①売買目的有価証券
→売却することを目的とするため - ④その他有価証券
→すぐに売却するはないが売却する可能性があるため
時価で計上します。
ただし、その他有価証券はすぐに売却することがないため、評価差額は純資産である「その他有価証券評価差額」を用いる。
- 売却する可能性が高い場合
→時価評価する - 売却する可能性が低い場合
→時価評価しない
まとめ
今回は「その他有価証券評価差額金」はなぜ純資産か?について解説しました。
まとめると下記のようになります。
- 「その他有価証券」はただちに売却・換金できない場合があるため、
評価差額は当期の損益ではなく、「純資産」となります。 - 「部分純資産直入法」は保守主義の原則によるもの
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