日商簿記2級日商簿記3級経理の知識

「洗替法」「切放法」「差額補充法」の違いとは?

日商簿記2級
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時価評価に関する会計処理で「洗替法あらいがえ」「切放法きりはなし」というものがあります。

また貸倒引当金では「差額補充法さがくほじゅうほう」という処理があります。

洗替法あらいがえ」「切放法きりはなし」「差額補充法さがくほじゅうほう」の3つの方法で比較というよりは

  • 洗替法あらいがえ」⇔「切放法きりはなし
  • 洗替法あらいがえ」⇔「差額補充法さがくほじゅうほう

のように比較されています。例をあげると

  • 有価証券や棚卸資産の評価替えでは
    洗替法あらいがえ」「切放法きりはなし
  • 貸倒引当金の設定では
    洗替法あらいがえ」「差額補充法さがくほじゅうほう

で比較されています。

会社によってどちらを採用しているか様々です。

今回はそんな「洗替法」「切放法」「差額補充法」について解説します。

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「洗替法」「切放法」とは?

洗替法」は前期末に計上した評価差額について、その翌期首に振り戻し仕訳を行う方法です。

対して「切放法」はその翌期首に振り戻し仕訳を行わない方法になります。

【洗替法

翌期首に振り戻し仕訳を行う方法

【切放法

翌期首に振り戻し仕訳を行わない方法

売買目的有価証券の時価評価替えを例に説明します。

例題 有価証券の評価替え

例題

X1年期中に取得したX株式1,200円、X1年3月末決算では時価1,500であった

※時価1,500-取得原価1,200=評価益300

洗替法)の場合

X1年3月
(当期末)
売買目的有価証券
(資産)
300/有価証券評価益
(収益)
300
X1年4月
(翌期首)
有価証券評価益
(収益)
300/売買目的有価証券
(資産)
300

切放法)の場合

X1年3月(期末)売買目的有価証券
(資産)
300/有価証券評価益
(収益)
300
X1年4月(翌期首)仕訳なし

このように翌期首に逆仕訳で処理するかしないかの違いになります。

補足

また、「洗替法」と「切放法」のどちらか選択できる場合とそうでない場合があります。

【売買目的有価証券】の評価

洗替法or切放法

【その他有価証券】の評価

洗替法のみ

【有価証券】の減損

切放法のみ

また、日商簿記の試験では

当期末の時価評価替えする際に、評価差損益を計上するとき

下記のように差額の求め方が変化するので気をつけましょう。

  • 切放法」の場合
    →当期末の時価と前期末の時価の差額を計上する。
  • 洗替法」の場合
    →当期末の時価と取得原価の差額を計上する。

洗替法」の場合。前期末の評価替えしても翌期首に戻すため、決算整理前の残高は取得原価になります。

「洗替法」「差額補充法」とは?

「洗替法」「差額補充法」の違いは下記のようになります

洗替法

前期末の残高を逆仕訳して、新たな残高を計上する方法

差額補充法

前期末の残高を逆仕訳せず、差額を計上する方法

下記の例題に沿って解説します。

例題 貸倒引当金の計上

例題

X2年3月決算で、貸倒引当金60円を設定した。前期末に計上した貸倒引当金の残高は20円である。

洗替法)の場合

貸倒引当金
(資産のマイナス)
20/貸倒引当金繰入
(費用)
20
貸倒引当金繰入
(費用)
60/貸倒引当金
(資産のマイナス)
60

1行目では前期末の残高を逆仕訳して、2行目では当期末の残高で計上しております。

差額補充法)の場合

貸倒引当金繰入
(費用)
40/貸倒引当金
(資産のマイナス)
40

60円(当期末の貸倒引当金)ー20円(前期末の貸倒引当金)=40円

どちらの方法でも試算表に影響する金額は同じになります。

貸倒引当金:60円

貸倒引当金繰入:40円

となります。

日商簿記の試験では貸倒引当金の洗替法は廃止

日商簿記の試験では貸倒引当金の洗替法は廃止となりました。

貸倒引当金の問題に指示がない場合は「差額補充法」で処理しましょう。

「洗い替え」とは?

「洗い替え」という言葉は経理の実務でもよく耳する用語です。

翌期首に振り戻し仕訳を行う方法を「洗替法」と記載しましたが

経理の実務では「洗い替え」=翌期首・期末問わず振り戻し(逆仕訳)を行うことと認識している事が多いです。

例えばX1年3月で貸倒引当金が100円で、X2年3月は120円のとき、同じ洗い替えでも

このような2パターンで分かれるケースがあります。

パターン① 翌期首で洗い替え

X1年3月
(期末)
貸倒引当金繰入100/貸倒引当金100
X1年4月
(翌期首)
貸倒引当金100/貸倒引当金繰入100
X2年3月
(期末)
貸倒引当金繰入120/貸倒引当金120

パターン② 翌期末で洗い替え

X1年3月
(期末)
貸倒引当金繰入100/貸倒引当金100
X2年3月
(期末)
貸倒引当金100/貸倒引当金繰入100
X2年3月(期末)貸倒引当金繰入120/貸倒引当金120
  • パターン①はX1年4月(翌期首)
  • パターン②はX2年3月(期末)

で逆仕訳しており、厳密にはパターン②は翌期首で振り戻していないため

差額補充法」になりますが、実際の経理の実務では

逆仕訳ということで、どちらも洗い替えと呼ばれることが多くあります。

また貸倒引当金に関しては、翌期末で逆仕訳するパターン②で採用されているのが原則になります。

翌期首・翌期末どちらで洗い替えがいいのか?

パターン①と②どちらを採用するかですが、会社によって異なるため正解はありません。

ただ、私は下記のように考えています。

  • ①P/Lに影響しない場合
    翌期首で振り替える
  • ②P/Lに影響する場合
    翌期末で振り替え

①のPLに影響しないというのは、借入金の長短の振替が例で、BS科目の振替になります。

長期借入金
(B/S)
/短期借入金
(B/S)

②のPLに影響するのは、上記の貸倒引当金が例になります。

貸倒引当金繰入
(P/L)
/貸倒引当金
(B/S)

あくまで私の考えです。会社の採用している方法によって違うので参考程度に認識して頂ければと思います。

まとめ

今回は「洗替法」「切放法」「差額補充法」について解説しました。

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