日商簿記3級

貸倒引当金の仕訳【簿記3級】

日商簿記3級
この記事は約5分で読めます。
Pocket

貸倒引当金かしだおれひきあてきん」は日商簿記3級の中では、なかなか理解しづらい分野になります。

今回は「貸倒れ」と「引当金」の意味をまず解説しその後、

貸倒引当金」について解説します。

スポンサーリンク

「貸倒れ」とは?

貸倒れかしだおれ」とは

得意先の企業が倒産することで売掛金などの債権を回収することが出来なくなること

をいいます。

回収できないとわかった以上、売掛金を減少させる必要があります。

当期に発生した売掛金で、貸倒れが起きた場合、

貸倒損失(費用)で処理します

前期で発生した売掛金が、当期で貸し倒れした場合の説明は後述します。

例題1

例題

得意先が倒産し当期に発生した売掛金100円が貸し倒れた。

貸倒損失
(費用の増加)
100/売掛金
(資産の減少)
100

売掛金が減少し、貸倒損失(費用)が増加します。

なぜ売掛金を減少させるのか?

貸し倒れ処理する時、なぜ売掛金を減少させるのか?

売掛金とは、後日代金を受け取る権利です。

もし得意先が倒産して貸し倒れた場合、

売掛金の回収は出来なくなりません。

そうなると売掛金は資産としての価値はありません。

そのため、売掛金を減少させる必要があります。

「引当金」とは?

引当金とは、

将来の損失に備えるため、当期の費用を計上することをいいます。

商品を販売して掛けで売上を計上しても、代金が回収されないリスクがあります。

当期末の売掛金残高も、翌期に全額回収されるという保証はありません。

来期に得意先が倒産して回収できないという可能性があります。

当期に発生した売掛金であり、将来損失が見込まれるのであれば、当期で費用計上をする

というのが会計の考え方になります。

とはいえ、今ある売掛金が将来いくら回収不能になるのかは将来のことは誰にもわかりません。

そこで過去の実績を参考に引当率を計算し、概算で見積もり金額を算出し計上します。

引当金」の詳しい解説は下記に記載しているのでご参考ください

「貸倒引当金」の設定の仕訳処理

貸倒引当金」は評価性引当金の1つで

資産のマイナスの区分されます。

評価性引当金」は当期の資産の価値の減少が将来見込まれる場合の引当金です。

負債ではなく、資産のマイナスなので注意しましょう。

また貸倒引当金の相手科目「貸倒引当金繰入(費用)」となります。

貸倒引当金を繰り入れる(組み込む)ため「〇〇引当金繰入」と表記されます。

では貸倒引当金の仕訳を次の例で解説します。

例題1

例題

X1年3月決算で、売掛金の期末残高1,000に対して、2%の貸倒引当金を設定した。

貸倒引当金の残高は0である。

貸倒引当金繰入
(費用)
20/貸倒引当金
(資産のマイナス)
20

※売掛金残高1,000×引当率2%=20円

これは今ある売掛金1,000円のうち、将来20円回収不能となる可能性があると示しております。

例題2

例題

X2年3月決算で、売掛金の期末残高3,000に対して、2%の貸倒引当金を設定した。

貸倒引当金の残高は20円である。(差額補充法で処理すること。)

今度は例題1の翌年に貸倒引当金を計上する場合です。

前期に計上した20円のが残っていますので、これを考慮して計上します。

また仕訳の方法としては差額補充法さがくほじゅうほう洗替法あらいがえほうの2つの方法があります。

日商簿記3級で出題されるのは差額補充法さがくほじゅうほうのため、洗替法の解説は省略します。

差額補充法

貸倒引当金繰入
(費用)
40/貸倒引当金
(資産のマイナス)
40

当期末の売掛金残高3,000×2%=60円

60円(当期末の貸倒引当金)ー20円(前期末の貸倒引当金)=40円

差額補充法とは、前期末の残高と当期末の残高の差額を計上する方法です。

前期末で貸倒引当金が計上されているので、その分を差し引く必要があります。

60円と記載しないように注意しましょう。

「貸倒引当金」が貸し倒れた時の仕訳処理

次は貸倒引当金を計上した後に、実際に取引先が倒産して回収不能となり貸し倒れたときの仕訳処理です。

例題3

例題

X3年3月、得意先が倒産し売掛金200円が貸し倒れた。

貸倒引当金の残高は40円である。

貸倒引当金
(資産のマイナス)
40/売掛金200
貸倒損失(費用)160/

まず貸倒引当金の残高40円を取り崩し、

その差額を貸倒損失(費用)で処理します。

また回収不能となることで売掛金200円を減少させます。

例④

例題

X4年3月、貸倒処理した売掛金200円が普通預金に振り込まれ回収された。

普通預金
(資産)
200/償却債権取立益
(収益)
200

得意先が倒産した後でも破産続きの関係で

弁護士を通じて債権の支払いをされる場合があります。

すでに貸倒処理して売掛金の減少もしてしまっているため、

この場合は償却債権取立益(収益)という勘定科目で処理します。

償却債権取立益」は臨時的な収益のため特別利益に区分されます。

貸倒損失の計上は慎重に

経理の実務の話になりますが、

「貸倒損失」の計上は慎重に行う必要があります。

「貸倒損失」は会計上は費用となり、税務上も損金となります。

むやみに貸倒処理すると、課税所得が減少し、納める税金を減らすことになります。

もし貸倒処理したあとに入金があれば「貸倒損失の計上に問題があったのでは?」と税務署に指摘される可能性があります。

債権の回収をする努力をし、その努力の過程を記録し、回収できないという事実を証明するものが必要となります。

貸倒損失を計上要件は下記になります。

法律上の貸倒れ
②事実上の貸倒れ
③形式上の貸倒れ

貸倒損失の要件に満たさないが、将来回収不能となる可能性がある場合は

「貸倒損失/売掛金」ではなく「貸倒引当金繰入/貸倒引当金」で計上します。

まとめ

今回は貸倒引当金の仕訳処理について解説しました。

前期で貸倒引当金の設定をされている場合は当期では差額で計上するので注意しましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました