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引当金とは?4つの要件などわかりやすく解説

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引当金の仕訳処理を学習した時、下記のように疑問に感じたことはないでしょうか。

  • なんでこんなことやる必要あるのか?
  • やらなくてもよくないか?

今回は「引当金」について解説します。

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「引当金」とは?

引当金」は将来の特定の支出や損失に備えるため計上するものです。

引当金には種類がたくさんありますが、「貸倒引当金」を例に説明していきます。

商品を販売して売上を計上しても、

その代金が回収されないというリスクがあります。

例えば

当期末に残っている売掛金も、翌期に全額回収できるという保証はありません。

翌期に「得意先が倒産して回収できない」という可能性があります。

翌期に倒産したら、翌期に貸倒損失で計上すればいいのでは?

と思う方がいるかもしれませんが

当期に発生した売掛金であり、将来損失が見込まれるのであれば、当期で費用計上をする

というのが会計の考え方になります。

当期に発生した債権のうち、将来いくら損失するかは誰にもわかりません。そのため概算で計算し「引当金」という勘定科目で計上します。

引当金は「保守主義の原則」の考え方によるもの。

この考え方は「企業会計原則」「一般原則」の中の

保守主義の原則」から由来してます。

保守主義の原則

六 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。

保守主義による会計処理とは簡単に言えば、

収益は遅く少なめに、費用は早く多めに見積もる会計処理のことになります。

そのため、当期が発生起因で、将来の損失する可能性があるなら当期に計上するべきということです。

次に「引当金」の要件を解説します。

引当金の4つ要件

引当金は

下記の4つの要件が全て当てはまる場合に計上します。

【引当金の要件】

  1. 将来の特定の費用または損失であること
  2. 発生が当期以前の事象に起因すること
  3. 高い発生可能性があること
  4. 金額が合理的に見積り可能であること

※企業会計原則注解18より

1つでも要件に当てはまらなければ、引当金の計上は出来ません。

①将来の特定の費用または損失であること

売掛金の貸倒れは将来起こる可能性あります。

将来の特定の費用になるため、該当します。

②発生が当期以前の事象に起因すること

当期に発生した売掛金のため、該当します。

③高い発生可能性があること

例えば、以前に貸倒れ実績がある場合は、今後貸し倒れる可能性があるため、該当します。

また得意先が倒産はしていないが回収予定日を過ぎて長い期間入金がない場合は、回収不能となる可能性が高いため該当します。

④金額が合理的に見積り可能であること

実際に貸し倒れた金額から売掛金残高を割ることで「引当率」を計算することができるため、該当します。

※税務上は「法定繰入率」があり、業種によって決定されている引当率を用いることができます。

また回収予定日を過ぎて長い期間入金がない場合は将来倒産となり回収不能となる可能性が高いため、この場合は全額引当金で計上します。つまり見積り可能なため該当します。

このように4つの要件に全て当てはまれば引当金として計上します。

4つのうち1つでも当てはまらなければ、引当金として計上することはできません。

引当金の種類

上記では「貸倒引当金」を例に説明しましたが、引当金にはいくつか種類があります。

それぞれの種類と名前、特徴、仕訳について解説します。

貸倒引当金

貸倒引当金繰入(費用)/貸倒引当金(資産のマイナス)

当期以前に発生した売掛金や貸付金などの金銭債権が、

将来回収できず損失する可能性がある場合に見積もって計上します。

↓貸倒引当金の解説は下記にありますのでご参考ください。

賞与引当金

賞与引当金繰入
(費用)
/賞与引当金
(負債)

将来における賞与の支払いに備えて、当期分に見込まれる賞与の金額を見積もって計上します。

例えば7月支給の賞与の査定期間が12-5月の6ヶ月とします。

3月決算の会社の場合、12-3月の4ヶ月を引当金として計上する必要があります。

退職給付引当金

退職給付費用
(費用)
/退職給付引当金
(負債)

将来、従業員が退職する際に支払う退職金のうち、当期に見込まれる金額を見積もって計上します。

※退職給付引当金の金額の算出方法は日商簿記1級の分野ですが、複雑ですので省略します。

余談になりますが、「賞与引当金」と「退職給付引当金」は税務上は否認項目で一時差異の損金不算入になります。損金算入されるのは支払時になります。

返品調整引当金

返品調整引当金繰入
(費用)
/返品調整引当金
(負債)

販売した商品が将来返品されることにより

売上総利益の損失が見込まれる金額を見積もって計上します。

注意するのが計上するのは「売上」ではなく、「利益」の金額になります。

※2021年4月新収益認識基準の適用により、売上は「変動対価」として整理されました。

返品や値引きを考慮して売上は計上されるため、

引当金の計上は不要となります。

新収益認識基準が適用されれば「返品調整引当金」は廃止となります。

↓新収益認識基準の詳しい解説は下記になります。

↓返品調整引当金が廃止となった要因の

変動対価については下記で解説しております。

評価性引当金と負債性引当金

引当金の区分は下記の2パターンがあります。

  • 資産のマイナス
    →評価性引当金
  • 負債
    →負債性引当金

評価性引当金

資産のマイナス

例:貸倒引当金

負債性引当金

負債

例:賞与引当金・退職給付引当金・返品調整引当金

評価性引当金とは?

評価性引当金」は将来、資産の価値の一部が損失すると見込まれたときに資産から控除する引当金になります。

その資産とは、「売掛金」「貸付金」です。

①例えば得意先が倒産すれば、回収できないと確定したことになるので

貸倒損失
(費用)
/売掛金
(資産のマイナス)

で計上します。

②将来回収できない可能性がある場合は

貸倒引当金繰入
(費用)
/貸倒引当金
(資産のマイナス)
  1. 回収できないと確定の場合
    売掛金の減少
  2. 回収できない可能性である場合
    貸倒引当金

上記のように実質2つとも売掛金の減少→つまり、資産の減少となります。

ただ②については回収できないと確定した訳ではないため、

売掛金の減少ではなく、貸倒引当金で計上しています。

貸倒引当金が負債ではなく、資産のマイナスの理由はこのようになります。

負債性引当金とは?

負債性引当金」は

当期起因による費用が将来の支出が見込まれる場合の引当金になります。

賞与引当金であれば、当期の査定期間の賞与は、翌期に支出されます。

翌期に支出される賞与のうち、当期分を費用して計上する必要があります。

貸倒引当金と違い、資産計上もされていないため、負債性引当金」はとなります。

  • 評価性引当金
    →当期の資産の価値の減少が将来見込まれる場合
  • 負債性引当金
    →資産ではなく、当期の費用が将来支出されると見込まれる場合

用語は難しそうに聞こえますが、資産の価値の減少なのか費用なのかが違いのポイントになります。

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まとめ

今回は「引当金」について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 引当金とは将来の特定の支出や損失に備えるため計上するものである。
  • 引当金の4つの要件は下記になります。
    • 将来の特定の費用または損失であること
    • 発生が当期以前の事象に起因すること
    • 高い発生可能性があること
    • 金額が合理的に見積り可能であること

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