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消費税の「個別対応方式」「一括比例配分方式」の違い

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今回は消費税の「個別対応方式」「一括比例配分方式」の違いについて解説します。

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仕入税額控除とは?

「個別対応方式」「一括比例配分方式」について解説する前に

仕入税額控除について解説します。

仕入税額控除」とは?

課税仕入れ等に係る消費税額のこと。

消費税の計算では

「預かった消費税(仮受消費税)」から

「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引いて税額が決定します。

「預かった消費税(仮受消費税)」ー「支払った消費税(仮払消費税)」=納税額(未払消費税)

この「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引くこと

仕入税額控除」といいます。

しかし、支払った消費税が全額控除できない場合もあります。

仕入税額控除の要件

課税売上割合が95%、課税売上高が5億

上回るか下回るかによって「仕入税額控除」の計算方法が異なります。

【課税売上割合95%以上】かつ【課税売上高5億円以下】

全額控除(100%控除)

【課税売上割合95%未満】または【課税売上高5億円超え】

一部控除不可

課税売上割合とは?

課税売上割合とは

全ての売上(不課税除く)のうち、課税売上高(消費税が課される売上高)が何%占めていたかを表す割合のことをいいます。

下記のような計算式で求めることができます。

課税売上割合

↓【課税売上割合】については下記で詳しく解説しております。

全額控除(100%控除)

下記2つの要件を満たす場合は全額控除となります。

  • 課税売上割合95%以上
  • 課税売上高5億円以下

一部控除不可

下記2つの要件をいずれか満たさない場合は一部控除不可となります。

  • 課税売上割合95%以上
  • 課税売上高5億円以下

課税仕入にかかる消費税を全額控除することはできず

一部控除不可となります。

この場合、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の

2種類の方法のいずれかを選択して消費税額を計算します

前置きが長くなりましたが、このような過程で「個別対応方式」「一括比例配分方式」という用語が出てきます。

個別対応方式とは?

個別対応方式では、「課税仕入」を3つに区分して仕入税額控除を計算する方法になります。

◆課税売上にのみ対応する課税仕入

全額控除

◆課税売上と非課税売上の両方に共通する課税仕入

[課税売上割合部分]のみ控除ができる

◆非課税売上にのみ対応する課税仕入

控除不可

個別対応方式では、このように課税仕入を3つに分類して仕入税額控除を計算します。

課税売上にのみ対応する課税仕入

例・・仕入

仕入など課税売上に直接対応する課税仕入が対象となります。

この場合、全額控除できます。

課税売上と非課税売上の両方に共通する課税仕入

例・・水道光熱費・通信費・家賃などの経費

上記のような課税売上と非課税売上の両方に共通する課税仕入が対象となります。

共通対応仕入」とも呼ばれます。

この場合、[課税売上割合部分]のみ控除ができます。

非課税売上にのみ対応するもの課税仕入

例・・土地を売却した時の手数料

上記のような非課税売上に対応する課税仕入が対象となります。

この場合は控除不可となります。

例題

例題
  • 売上高11,000,000円
    (消費税1,000,000円)
  • 仕入6,600,000円
    (消費税600,000円)
  • 家賃550,000円
    (消費税50,000円)
  • 土地を売却した時の手数料220,000円
    (消費税20,000円)

当社は個別対応方式を採用している。課税売上割合は90%である。

上記の場合の[①仕入税額控除]と[②消費税の納税額]を求めなさい。

(解答)

①仕入税額控除

645,000円

②消費税の納税額

355,000円

(解説)

①仕入税額控除

個別対応方式の場合、課税仕入を3つに区分します。

  • 仕入の消費税600,000円
    →「課税売上にのみ対応する課税仕入」
    →「全額控除
    →600,000×100%
    =600,000円
  • 家賃の消費税50,000円
    →「課税売上と非課税売上の両方に共通する課税仕入」
    →「課税売上割合部分のみ控除ができる
    →50,000×課税売上割合90%
    =45,000円
  • 土地売却手数料の消費税20,000円
    →「非課税売上にのみ対応するもの課税仕入」
    →「控除不可
    →控除不可のため0円

これにより仕入税額控除は下記のようになります。

600,000+45,000円+0円

645,000円

②消費税の納税額

  • 課税売上高は1,000,000円
  • 仕入税額控除は645,000円

課税売上高1,000,000-仕入税額控除645,000円

=355,000円

一括比例配分方式とは?

一括比例配分方式では、「課税仕入」の総額を課税売上割合部分のみ控除をして計算する方法です。

個別対応方式では、3つに区分しましたが、一括比例配分方式ではこれを行いません。

【一括比例配分方式の場合の仕入税額控除】

・課税仕入総額に対する税額×課税売上割合(%)

例題

例題
  • 売上高11,000,000円
    (消費税1,000,000円)
  • 仕入6,600,000円
    (消費税600,000円)
  • 家賃550,000円
    (消費税50,000円)
  • 土地を売却した時の手数料220,000円
    (消費税20,000円)

当社は一括比例配分方式を採用している。課税売上割合は90%である。

上記の場合の[①仕入税額控除]と[②消費税の納税額]を求めなさい。

(解答)

①仕入税額控除

603,000

②消費税の納税額

397,000

(解説)

①仕入税額控除

個別対応方式の場合、課税仕入を3つに区分します。

  • 仕入の消費税600,000円
  • 家賃の消費税50,000円
  • 土地売却手数料の消費税20,000円
    →計:670,000円

これにより仕入税額控除は下記のようになります。

670,000円×課税売上割合90%

=603,000円

②消費税の納税額

  • 課税売上高は1,000,000円
  • 仕入税額控除は603,000円

課税売上高1,000,000-仕入税額控除603,000円

=397,000円

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「個別対応方式」「一括比例配分方式」メリット・デメリット

「個別対応方式」「一括比例配分方式」それぞれの

メリット・デメリットは下記にようになります。

個別対応方式

【メリット】

  • 一括比例配分方式より納税額が少なくなる場合がある。

【デメリット】

  • 「課税仕入」を3つに区分する必要があるため、事務負担が増える

一括比例配分方式

【メリット】

  • 「課税仕入」を3つに区分する必要がないため、事務負担が少なく済む。

【デメリット】

  • 個別対応方式より納税額が多くなる場合がある。

つまり、納税額を減らしたい場合は【個別対応方式】

事務負担を減らしたい場合は【一括比例配分方式】を採用するといいでしょう。

一般的に【個別対応方式】を採用している会社が多いですが、

どちらを選択しても納税額があまり変わらない会社の場合は【一括比例配分方式】を採用していることがあります。

補足

前述でも述べましたが、【個別対応方式】【一括比例配分方式】の選択は

【課税売上割合95%未満】または【課税売上高5億円超え】の法人が対象となります。

【課税売上割合95%以上】かつ【課税売上高5億円以下】

全額控除(100%控除)

【課税売上割合95%未満】または【課税売上高5億円超え】

一部控除不可
個別対応方式or一括比例配分方式

【課税売上割合95%以上】かつ【課税売上高5億円以下】の場合は

全額控除となるため、【個別対応方式】【一括比例配分方式】の選択は不要となります。

まとめ

今回は消費税の「個別対応方式」「一括比例配分方式」の違いについて解説しました。

要点をまとめると下記になります。

【個別対応方式】

「課税仕入」を3つに区分して仕入税額控除を計算する方法

  • 課税売上にのみ対応する課税仕入
    全額控除
  • 課税売上と非課税売上の両方に共通する課税仕入
    [課税売上割合部分]のみ控除ができる
  • 非課税売上にのみ対応する課税仕入
    控除不可

【一括比例配分方式】

「課税仕入」の総額を課税売上割合部分のみ控除をして計算する方法

  • 課税仕入総額に対する税額×課税売上割合(%)

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