有価証券には下記4つに分類されます。
【有価証券の4つの種類】
今回はその中の「満期保有目的債券」について解説します。
満期保有目的では
- 「取得価額」
- 「額面金額」
という用語が出てきますが、こちらも混在しやすいポイントです。
2つの違いや
償却原価法で、なぜこの差額を調整する必要があるのか?
についても解説していきます。
満期保有目的債券とは?
「満期保有目的債券」とは、満期日までに保有することで利息を受け取る目的とした公社債になります。
注:満期保有目的債券は株式ではありません。
「売買目的有価証券」と違い売買することが目的ではなく、満期日までに保有することが目的です。
満期までに保有するメリットとは?
「売買目的有価証券」は売買して利益を得ることにメリットがありますが
「満期保有目的債券」は満期までに保有して何かメリットがあるのでしょうか?
そのメリットは下記になります。
【満期保有目的債券】のメリット
- 利払日に利息が受け取ることが出来る
- 取得時に額面金額より安く購入して、満期時に額面金額で償還される
「償還」とは返却すること。つまり、債務を返済することです。
1.利払日に利息が受け取ることが出来る
利払日には下記のように利息を計算し、この利息を受け取ることができます。
(1)額面金額×年利(%)×対象期間(月)/12カ月
または
(2)額面金額×年利(%)×対象期間(日)/365日
※(1)は月割りで計算した場合、(2)は日割りで計算した場合の利息です。
貸付金による受取利息と同じような考えです。
(例題)
(解答)
普通預金 | 125 | / | 有価証券利息 (収益) | 125 |
計算式:
額面金額10,000×年利3%×5ヶ月/12=125円
対象期間(月):
X1年8月1日-12月31日の5ヶ月
利息の計算は額面金額を用います。取得金額ではないので注意しましょう。
2.取得時に額面金額より安く購入して、満期時に額面金額で償還される
少しわかりにくいと思うので、例に沿って説明します。
このとき購入した金額は970円ですが、5年後の満期日には1,000円で返済されます。
この差額の30円が利益になります。
「取得価額」「額面金額」とは?
上でも少し説明しましたが「取得価額」「額面金額」の違いは下記のようになります。
「取得価額」
→購入したときの金額
「額面金額」
→満期時に償還される金額
「債券の発行」では、必ずしも額面金額=取得金額とは限りません。
債権の発行は下記3つの位置づけがあります。
取得価額=額面金額の場合
→平価発行
取得価額価<額面金額
→割引発行
取得価額>額面金額
→打歩発行
※「打歩発行」は購入時より低い金額で償還されるためメリットがありません。
詳しくは下記で解説しています。
満期保有目的債券の評価替え
「売買目的有価証券」では決算時に時価へ評価替えする必要がありますが
「満期保有目的債券」では時価への評価替えは不要です。
「売買目的有価証券」は売却することが目的で、
売却額は時価を持って算出されることが多いため、時価への評価替えが必要ですが
満期保有目的債券は売却目的ではないため、時価への評価替えが不要となります。
ただし、額面金額と取得金額の差額が金利調整差額と認められる場合、
決算時に「償却原価法」によってこの差額を調整する必要があります。
「償却原価法」とは?
「償却原価法」は定額法と利息法があります。
今回は定額法で説明します。
「定額法」は簿記2級の範囲、「利息法」は簿記1級の範囲になります。
「償却原価法」とは額面金額と取得金額の差額を当期までの保有期間に応じて下記のように算出します。
〇償却原価法(定額法)
(額面金額ー取得金額)×当期の経過月数/取得日から満期日までの期間
次の例に沿って解説します。
(例題)
(解答)
(1)購入時の仕訳
満期保有目的債 (資産) | 9,700 | / | 現金 | 9,700 |
取得価額:額面金額10,000×97/100=9,700円
(2)決算時の仕訳
満期保有目的債 (資産) | 40 | / | 有価証券利息 (収益) | 40 |
(10,000-9,700)×8カ月/60カ月=40
・当期の経過月数:
X1年8月~X2年3月の期間の8カ月
・取得日から満期日までの期間:
X1年8月からX6年7月の60カ月
なぜ「償却原価法」による評価替えが必要なのか?
この「償却原価法」の評価替えで
と疑問に思う人もいるのではないのでしょうか?
その理由は下記になります。
上の例題では取得日から5年後のX6年には償還され
1,000-9,700=300円が有価証券利息(収益)として受け取ることができます。
しかし、この300円はX6年の収益ではありません。
この300円は[X1年8月からX6年7月]の60ヶ月分の収益になります。
- [X1年8月からX2年3月]の収益はX2年3月期に計上し
- [X2年4月からX3年3月]の収益はX3年3月期に計上する必要があります。
その年度の収益はその年度の収益として計上する必要があるため
この「償却原価法」という方法で決算仕訳をする費用があります。
また相手勘定は「満期保有目的債券(資産)」で取得価額から額面金額に近付けるイメージになります。
考え方としては、貸付金の経過勘定である未収収益と似ています。
こちらも受け取っていない分の当期の利息は「未収利息(資産)/受取利息(収益)」で計上してますよね。
まとめ
今回は満期保有目的債券について解説しました。
まとめると下記のようになります。
【満期保有目的債券】
- 満期まで保有することが目的のため時価への評価替えはしない
- ただし、額面金額≠取得金額で金利調整差額が認められる場合は、「償却原価法」による評価替えが必要
- 利息の計算では取得価額ではなく額面金額を用いるので注意
↓また「金利調整差額が認めらない場合」はどういう時か?について下記で解説しております。
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