今回は税効果会計の下記2つの適用方法について解説します。
- 資産負債法
- 繰延法
税効果会計の適用方法
税効果会計の適用方法は「資産負債法」と「繰延法」の2種類ありますが
現行の会計基準は資産負債法を採用しております。
この2つの違いをおおまかに述べると下記のようになります。
- 資産負債法 → B/Sを重視
- 繰延法 → P/Lを重視
資産負債法とは?
(1) 資産負債法
資産負債法とは、会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額との間に差異が生じており、当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額又は増額する効果を有する場合に、当該差異(一時差異)が生じた年度にそれに係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法である。
したがって、資産負債法により計上する繰延税金資産又は繰延税金負債の計算に用いる税率は、一時差異の解消見込年度に適用される税率である。
税効果会計に係る会計基準の適用指針89項
資産負債法では会計上と税法上の差異は、資産または負債に着目しております。
また、税率は差異の解消が見込まれる年度の税率を適用します。
繰延法とは?
(2) 繰延法
繰延法とは、会計上の収益又は費用の額と税務上の益金又は損金の額との間に差異が生じており、当該差異のうち損益の期間帰属の相違に基づくもの(期間差異)について、当該差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額又は軽減額を当該差異が解消する年度まで、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法である。
したがって、繰延法により計上する繰延税金資産又は繰延税金負債の計算に用いる税率は、期間差異が生じた年度の課税所得計算に適用された税率である。
税効果会計に係る会計基準の適用指針89項
資産負債法では会計上と税法上の差異は、収益または費用に着目しております。
また、税率は差異が発生した年度の税率を適用します。
資産負債法は一時差異
繰延法は期間差異
が発生したら計上します。
資産負債法と繰延法による仕訳方法の違い
資産負債法と繰延法による差異はほぼ一致しますが
下記のような場合は仕訳方法が異なります。
- 有価証券などの評価差額
- 差異が発生した時の税率と解消見込まれる時の税率が異なる場合
その他有価証券評価差額金はどうなるか?
資産負債法における一時差異と繰延法における期間差異の範囲はほぼ一致するが、有価証券等の資産又は負債の評価替えにより直接純資産の部に計上された評価差額は、一時差異ではあるが期間差異ではない。なお、期間差異に該当する項目は、すべて一時差異に含まれる。
税効果会計に係る会計基準の適用指針90項
資産負債法と繰延法によって仕訳方法が大きく変わるのは「その他有価証券評価差額金」になります。
繰延法は期間差異を繰延税金資産(または負債)として計上しますが
「その他有価証券評価差額金」は純資産であり、損益計算書(P/L)に影響ないため期間差異はないとします。
そのため、その他有価証券評価差額金(純資産)は
- 資産負債法では計上する
- 繰延法では計上しない
となります。
繰延ヘッジ損益(純資産)も上記と同じ処理になります。
適用する税率
上記の資産負債法と繰延法の解説でも記載しましたが
適用する税率は上記2つによって異なります。
- 「資産負債法」→差異の解消が見込まれる年度の税率
- 「繰延法」→差異が発生した年度の税率
次に例題に沿って資産負債法と繰延法の仕訳を解説します。
例題
資産負債法
(1) | 商品評価損 | 2,000 | / | 商品 | 2,000 |
繰延税金資産 | 600 | / | 法人税等調整額 | 600 | |
(2) | その他有価証券評価差額金 | 500 | / | その他有価証券 | 500 |
繰延税金資産 | 150 | / | その他有価証券評価差額金 | 150 |
資産負債法は差異の解消される見込みの年度の実効税率30%を用います。
(1)2,000×30%=600
(2)(3,000-2,500)×30%=150
その他有価証券評価差額金は純資産です。
法人税等調整額は用いませんので注意しましょう。
繰延法
(1) | 商品評価損 | 2,000 | / | 商品 | 2,000 |
繰延税金資産 | 800 | / | 法人税等調整額 | 800 | |
(2) | 仕訳なし |
繰延法は差異が発生した年度の実効税率40%を用います。
また有価証券の評価差額は純資産でP/Lに影響なく期間差異なしとなるため
仕訳なしになります。
(1)2,000×40%=800
まとめ
今回は税効果会計の「資産負債法」「繰延法」の適用方法について解説しました。
まとめると下記のようになります。
現行の会計基準では資産負債法を採用しています。
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