日商簿記1級

【図解】子会社の資産・負債の時価評価|連結会計

日商簿記1級
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今回は連結会計の支配獲得時の

子会社の資産・負債の時価評価」について解説します。

時価評価替えによる差額は「評価差額(株主資本)」という勘定科目で連結修正仕訳を行います。

本記事の内容
  • 支配獲得日の連結の流れ
  • 子会社の資産・負債の時価評価
  • 仕訳方法①税効果適用しない場合
  • 仕訳方法②税効果適用する場合
  • ※本記事は日商簿記1級の試験範囲になります。
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支配獲得日の連結の流れ

会社(P社)が他の会社(S社)の株式を取得して支配を獲得することで、

P社は「親会社、S社は子会社」となります。

この支配獲得日に両社の個別財務諸表を合算し

下記2つの連結修正仕訳を起票する必要があります。

支配獲得日の連結修正仕訳

  1. 投資と資本の相殺消去(資本連結)
  2. 子会社の資産・負債の時価評価※日商簿記1級

今回は「子会社の資産・負債の時価評価」について解説します。

※こちらは日商簿記1級の試験範囲になります。

投資と資本の相殺消去(資本連結)については下記をご参照ください。

子会社の資産・負債の時価評価

支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを

支配獲得日の時価により評価替えする必要があります。

これを「全面時価評価法」といいます。

【なぜ時価評価するのか?】

通常の取引で資産を外部から取得した場合、取得時の時価で購入します。

連結も同じで子会社の資産・負債を取得する場合

支配獲得日の時価で取得する必要があるためです。

この時価評価による差額は

評価差額(純資産)で計上します。

評価差額とは?

評価差額は連結上、子会社の純資産の[株主資本]に分類されます。

この評価差額は株主資本となるため

「投資と資本の相殺消去」で相殺する必要があります。

株主資本とは?】

B/Sの純資産の部のうち下記に当たります。

  • 資本金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金
  • 評価差額

その他有価証券評価差額その他の包括利益累計額)や
新株予約権は株主資本ではありません。

例題1

[子会社の資産・負債の時価評価]のみの仕訳について解説します。

例題1

P社はS社の株式を取得して子会社で取得し支配を獲得した。

支配獲得日のS社の個別財務諸表上の土地は以下の通りである。

  • 土地の帳簿価額が500円
  • 土地の支配獲得日の時価が600円

連結修正仕訳を示しなさい。

上記の場合は下記のような連結修正仕訳を計上します。

土地100/評価差額100

時価600-帳簿500=100円

補足

連結により親会社P社と子会社S社のB/Sを合算させたとき

子会社S社の土地は帳簿価額500円で合算させます。

しかし時価600円で取得したことにするため、

連結修正仕訳により土地100円(600-500)を増加させ

その相手勘定科目は「評価差額(純資産)」で計上します。

※評価差額は株主資本

例題2

[子会社の資産・負債の時価評価]と

[投資と資本の相殺消去]

の仕訳について解説します。

例題2

P社はS社の発行株式100%を1,000円で取得し支配を獲得した。

支配獲得日のS社の個別財務諸表上の

土地・株主資本は以下の通りである。

  • 土地の帳簿価額が500円
  • 土地の支配獲得日の時価が600円
  • 資本金300円
  • 利益剰余金600円

連結修正仕訳を示しなさい。

(資産・負債の時価評価)

土地100/評価差額100

時価600-帳簿500=100円(評価差額)

(投資と資本の相殺消去)

資本金300/子会社株式1,000
利益剰余金600/
評価差額100/

株主資本(純資産)を減少させる場合、評価差額100円も減少させます。

※評価差額は株主資本となるため、減少(借方)させる必要があります。

100%子会社のため[非支配株主持分]はなしとなります。

貸借差額0のため、[のれん]もなしとなります。

[投資と資本の相殺消去]の際に評価差額(純資産)の減少を忘れないように注意しましょう。

問題

資産・負債の時価評価による評価差額が発生すると

税務上の資産・負債との間に一時差異が発生します。

そのため「評価差額」は税効果会計の適用となります。

  • 税効果会計を適用しない場合
  • 税効果会計を適用する場合

上記それぞれについて解説します。

税効果会計についての解説は下記をご参照ください。

税効果会計を適用しない場合

問題
  • X1年3月31日、P社はS社の発行株式70%を700円で取得し支配を獲得した。
  • X1年3月31日時点の両社のB/Sは下記の表の通りである。
  • 支配獲得日のS社の土地の時価は600円となる。
  • 支配獲得日の連結修正仕訳を求めなさい。
  • 評価差額に対して税効果会計は適用しないとする。

(解答)

問題文のB/Sの黄色塗りつぶし箇所は連結修正仕訳で使用する箇所になります。

今回はわかりやすく説明するため、要点は黄色塗りつぶししました。

(資産・負債の時価評価)

土地100/評価差額100

土地:時価600-帳簿500=100円(評価差額)

土地の時価評価は子会社S社です。

誤って親会社P社の土地400円で差額計算しないように注意しましょう。

(投資と資本の相殺消去)

資本金600/子会社株式700
利益剰余金200/非支配株主持分270
評価差額100
のれん70
  • P社の子会社株式700を減少させるため貸方へ
  • S社の資本金600利益剰余金200評価差額100を減少させるため借方へ
  • 70%保有のため、100-70=30%は非支配株主持分
  • 株主資本900(資本金600+利益剰余金200+評価差額100)×30%
    =270円(非支配株主持分)
  • 貸借差額により借方差額70円は「のれん」となる。

【間違いやすいポイント】

非支配株主持分を算出する際に

評価差額」を含めて計算すること。

※評価差額は資本金と同じく[株主資本]に分類されるため

計算式は下記である。

株主資本900(資本金600+利益剰余金200+評価差額100)×30%
=270円(非支配株主持分)

税効果会計を適用する場合

問題
  • X1年3月31日、P社はS社の発行株式70%を700円で取得し支配を獲得した。
  • X1年3月31日時点の両社のB/Sは下記の表の通りである。
  • 支配獲得日のS社の土地の時価は600円となる。
  • 支配獲得日の連結修正仕訳を求めなさい。
  • 評価差額に対して税効果会計(税率40%)は適用する

(解答)

(資産・負債の時価評価)

土地100/評価差額60
/繰延税金負債40

土地:時価600-帳簿500=100円(評価差額)

評価差額100円×40%=40円(繰延税金負債)

上記仕訳の内訳は下記のようになります。

土地100/評価差額100
評価差額40/繰延税金負債40

評価差額は[純資産]のため

[その他有価証券評価差額金]の税効果と同じような仕訳になります。

(投資と資本の相殺消去)

資本金600/子会社株式700
利益剰余金200/非支配株主持分258
評価差額60
のれん98
  • P社の子会社株式700を減少させるため貸方へ
  • S社の資本金600利益剰余金200評価差額60を減少させるため借方へ
  • 70%保有のため、100-70=30%は非支配株主持分
  • 株主資本860(資本金600+利益剰余金200+評価差額60)×30%
    =258円(非支配株主持分)
  • 貸借差額により借方差額98円は「のれん」となる。

評価差額税効果適用後の[60円]を用います。

誤って税効果適用前の[100円]で計算しないこと。

解き方の手順

解き方の手順をまとめると下記のようになります。

【解き方の手順】※評価差額がある場合

  1. 子会社の資産・負債に[評価差額]が発生したら、時価評価替えする。
  2. 評価差額に対して税効果の適用がある場合は税率を掛けて、繰延税金負債(または資産)へ計上する。
  3. 親会社の[子会社株式(資産)]を減少させるため貸方
  4. 子会社の[株主資本(純資産)]を減少させるため借方
    ※評価差額も減少させること。
  5. 100%子会社でなければ非支配株主割合(%)を求めて、株主資本×非支配株主割合(%)で[非支配株主持分]を算出する。
    ※[株主資本]には評価差額も含めること。
  6. 株主資本は4.により全て減額させたため、[非支配株主持分(純資産)]を増加させるため貸方
    ※[非支配株主持分]は親会社が保有している訳ではないため、連結相殺不要となるため、相殺させた(減少した)純資産を増加させる必要がある。
  7. 貸借差額が生じたら「のれん(借方差額)」or「負ののれん(貸方差額)」で計上する。

時価評価による評価差額は日商簿記1級の範囲です

まとめ

今回は連結会計の投資と資本の相殺消去(資本連結)について解説しました。

図解で表すと下記のようになります。

評価差額の発生の際の仕訳は簡単ですが、

「投資と資本の相殺消去」の際に、

評価差額は株主資本のため、

  • 借方で計上し減少させること
  • 非支配株主持分を算出するとき、評価差額も含めて算出すること

上記2つが忘れないように気を付けましょう。

日商簿記1級
かつお

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