今回は【新株予約権】について解説します。
新株予約権とは?
新株予約権とは、あらかじめ決められた価額で
株式を買うことができる権利のことをいいます。
新株予約権を発行した時は「新株予約権(純資産)」で計上します。
行使とは?
行使期間について
新株予約権は発行されたら、
すぐに行使して株式を取得できる訳ではありません。
行使できる期間は定められており、
この期間のことを「行使期間」といいます。
つまり行使期間内でないと、行使すること(株式を取得すること)が出来ないということです。
行使価額について
新株予約権は、あらかじめ決められた価額で株式を買うことができる権利のことです。
このあらかじめ決められた価額を「行使価額」といいます。
株価の変動に関わらず、あらかじめ決められた「行使価額」で株式を取得できます。
新株予約権の発行時の仕訳
新株予約権の発行時に払い込まれた金額は新株予約権(純資産)で計上します。
権利を行使され、新株が発行した時に「資本金」に振り替えます。
新株の発行→資本金
株式を買うことができる権利→新株予約権
(解答)
当座預金 | 2,000 | / | 新株予約権 | 2,000 |
(解説)
新株予約権の払込金額:@200×発行数10個=2,000円
権利行使時の仕訳
権利行使時では下記の2通りがあります。
- 新株を発行する場合
- 自己株式を処分する場合
下記でそれぞれについて解説します。
新株を発行する場合
新株を発行する場合、下記の合計を発行した株式の払込金額とします。
- 新株予約権の金額
→(新株予約権の減少) - 権利行使にともなう払込金額
→(当座預金の増加)
これを「資本金等」として計上します。
(解答)
新株予約権 | 1,000 | / | 資本金 | 4,250 |
当座預金 | 7,500 | / | 資本準備金 | 4,250 |
(解説)
〇新株予約権の金額
例題1で新株予約権10個(10個×@200円=2,000)を発行しました。
このうち5個が行使されたため下記のように新株予約権を減少させます。
- @200×5個=1,000円
〇権利行使にともなう払込金額
また、権利行使により行使価額の払込みがされます。
行使価額は1株につき100円で、新株予約権1個につき株式は15株のため
下記のように当座預金へ払い込みされます。
- @100×新株予約権5個×15株=7,500円
〇資本金等の増加
会社法の指示があるため容認処理として2分の1を「資本金」で処理し
残りを「資本準備金」で処理します。
- (1,000+7,500)×1/2=4,250円
↓[資本準備金を用いる容認処理]については下記で詳しく解説しております。
自己株式を処分する場合
自己株式を処分する場合、下記の合計を移転した自己株式の処分の対価とします。
- 新株予約権の金額
→(新株予約権の減少) - 権利行使にともなう払込金額
→(当座預金の増加)
そして[合計額]と[自己株式の帳簿価額]の差額は「その他資本剰余金」で処理します。
(解答)
新株予約権 | 800 | / | 自己株式 | 5,400 |
当座預金 | 6,000 | / | その他資本剰余金 | 1,400 |
(解説)
〇新株予約権の金額
例題1で新株予約権10個(10個×@200円=2,000)を発行しました。
このうち4個が行使された場合されたため
下記のように新株予約権を減少させます。
- @200×4個=800円
〇権利行使にともなう払込金額
また、権利行使により行使価額の払込みがされます。
行使価額は1株につき100円で、新株予約権1個につき株式は15株のため
下記のように当座預金へ払い込みされます。
- @100×新株予約権4個×15株=6,000円
〇自己株式の帳簿価額
自己株式の帳簿価額@90×新株予約権4個×15株=5,400円
〇その他資本剰余金の計上
貸借差額を「その他資本剰余金」として計上します。
800+6,000-5,400=1,400円
権利行使期間の満了時の仕訳
権利行使を行わずに、行使期間の満了を迎えた場合
新株予約権を「新株予約権戻入益(P/L)」に振り替えます。
行使期間が過ぎれば新株予約権を行使することが出来ません。
そのため新株予約権を減少させ、「新株予約権戻入益」へ振り替えます。
(解答)
新株予約権 (B/S) | 200 | / | 新株予約権戻入益 (P/L) | 200 |
(解説)
発行した新株予約権10個のうち、5個は例題2で、4個は例題3で行使しました。
残り1個(10-5-4=1)は未行使です。
行使期間が到来したため、この新株予約権は行使することはできないため
「新株予約権戻入益」へ振り替えます。
- @200×1個=200円
または - 2,000(例題1)-1,000(例題2)-800(例題3)=200円
新株予約権の取得側の仕訳
上記で解説したのは新株予約権の「発行側」の仕訳です。
参考までに新株予約権の「取得側」の仕訳も解説します。
上記の例題1-4の「発行側」と「取得側」の仕訳は下記のようになります。
例題1(発行時・取得時)
(発行側)
当座預金 | 2,000 | / | 新株予約権 | 2,000 |
(取得側)
その他有価証券 | 2,000 | / | 現預金など | 2,000 |
新株予約権を取得した場合は「その他有価証券」で計上します。
例題2(権利行使時/新株の発行)
(発行側)
新株予約権 | 1,000 | / | 資本金 | 4,250 |
当座預金 | 7,500 | / | 資本準備金 | 4,250 |
(取得側)
その他有価証券 | 8,500 | / | その他有価証券 | 1,000 |
/ | 現預金など | 7,500 |
取得側が新株予約権の権利を行使した場合
行使価額7,500円を支払います。(現預金の減少)
この行使価額を加算した金額で「その他有価証券」を振り替えます。
例題3(権利行使時/自己株式の処分)
(発行側)
新株予約権 | 800 | / | 自己株式 | 5,400 |
当座預金 | 6,000 | / | その他資本剰余金 | 1,400 |
(取得側)
その他有価証券 | 6,800 | / | その他有価証券 | 800 |
/ | 現預金など | 6,000 |
自己株式の処分による権利行使は発行側の処理のため
取得側の仕訳は例題2と同様の仕訳で処理します。
例題4(権利行使期間の満了時)
(発行側)
新株予約権 (B/S) | 200 | / | 新株予約権戻入益 (P/L) | 200 |
(取得側)
新株予約権未行使損 (P/L) | 200 | / | その他有価証券 | 200 |
行使期間の間に行使しなければ、行使は出来ず株式の取得は出来ません。
そのため、取得側が行使期間に行使しなかった場合、
取得時に計上した「その他有価証券」を減少させ、「新株予約権未行使損(P/L)」で計上します。
まとめ
今回は【新株予約権】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 新株予約権とは、あらかじめ決められた価額で株式を買うことができる権利のことである。
- 新株予約権を発行した時は「新株予約権(純資産)」で計上する。
- 新株予約権は行使期間に行使することができる。
- 権利を行使され、新株が発行した時に「資本金等」に振り替える。
- 行使期間に未行使となった新株予約権は「新株予約権戻入益」へ振り替える。
コメント