日商簿記1級

新株予約権とは?仕訳方法をわかりやすく解説

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今回は【新株予約権】について解説します。

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新株予約権とは?

新株予約権とは、あらかじめ決められた価額で

株式を買うことができる権利のことをいいます。

補足

新株予約権者は、権利を行使すれば

株式の時価が上昇した場合でも、

あらかじめ決められた価額で株式を取得することができます。

そのため時価より低い金額で取得して、それを時価で売却することで利益を得ることができます。

新株予約権を発行した時は新株予約権(純資産)」で計上します。

行使とは?

【行使とは?】

行使とは、与えられた権利を実際に用いることをいいます。

つまり、新株予約権の権利を行使するとは、

「株式を買うことができる権利」を使うことをいいます。

行使期間について

新株予約権は発行されたら、

すぐに行使して株式を取得できる訳ではありません。

行使できる期間は定められており、

この期間のことを「行使期間」といいます。

つまり行使期間内でないと、行使すること(株式を取得すること)が出来ないということです。

行使価額について

新株予約権は、あらかじめ決められた価額で株式を買うことができる権利のことです。

このあらかじめ決められた価額を「行使価額」といいます。

株価の変動に関わらず、あらかじめ決められた「行使価額」で株式を取得できます。

詳しく解説

例えば1株あたりの行使価額が@100円の場合で

株価が上昇し、株式の時価が@2,000円の時に

行使して売却すれば1株あたり@1,900円(@2,000-@100)の利益を得ることができます。

新株予約権の発行時の仕訳

新株予約権の発行時に払い込まれた金額は新株予約権(純資産)で計上します。

権利を行使され、新株が発行した時に「資本金」に振り替えます。

新株予約権はなぜ純資産なのか?>

新株を発行した場合「資本金(純資産)」で計上します。

新株予約権は「株式を買うことができる権利」のため資本金と同じ純資産となります。

新株の発行→資本金

株式を買うことができる権利→新株予約権

例題1

X1年4月1日、次の条件の新株予約権を発行した。

払込金額はただちに当座預金に預け入れた。

  • 新株予約権の発行数:10個(1個につき15株)
  • 新株予約権の払込金額:1個につき200円
  • 行使価額:1株につき100円
  • 行使期間:X1年9月1日からX2年12月31日

(解答)

当座預金2,000/新株予約権2,000

(解説)

新株予約権の払込金額:@200×発行数10個=2,000円

補足

※「行使価額の1株につき100円」は権利行使された時に用います。

そのため今の時点(新株予約権の発行時)では用いません。

権利行使時の仕訳

権利行使時では下記の2通りがあります。

  1. 新株を発行する場合
  2. 自己株式を処分する場合

下記でそれぞれについて解説します。

新株を発行する場合

新株を発行する場合、下記の合計を発行した株式の払込金額とします。

  • 新株予約権の金額
    →(新株予約権の減少)
  • 権利行使にともなう払込金額
    →(当座預金の増加)

これを「資本金等」として計上します。

例題2

上記の例題1の続きで

X1年9月1日、発行した新株予約権のうち

5個について権利が行使され、払込みを受けたため、新株を発行した。

なお、払込金額を当座預金へ預け入れ

「会社法」で認められる最低金額を資本金として処理した。

[新株予約権の条件]

  • 新株予約権の発行数:10個(1個につき15株)
  • 新株予約権の払込金額:1個につき200円
  • 行使価額:1株につき100円
  • 行使期間:X1年9月1日からX1年12月31日

(解答)

新株予約権1,000/資本金4,250
当座預金7,500/資本準備金4,250

(解説)

〇新株予約権の金額

例題1で新株予約権10個(10個×@200円=2,000)を発行しました。

このうち5個が行使されたため下記のように新株予約を減少させます。

  • @200×5個=1,000円

〇権利行使にともなう払込金額

また、権利行使により行使価額の払込みがされます。

行使価額は1株につき100円で、新株予約権1個につき株式は15株のため

下記のように当座預金へ払い込みされます。

  • @100×新株予約権5個×15株=7,500円

〇資本金等の増加

会社法の指示があるため容認処理として2分の1を「資本金」で処理し

残りを「資本準備金」で処理します。

  • (1,000+7,500)×1/2=4,250円

↓[資本準備金を用いる容認処理]については下記で詳しく解説しております。

自己株式を処分する場合

自己株式を処分する場合、下記の合計を移転した自己株式の処分の対価とします。

  • 新株予約権の金額
    →(新株予約権の減少)
  • 権利行使にともなう払込金額
    →(当座預金の増加)

そして[合計額]と[自己株式の帳簿価額]の差額は「その他資本剰余金」で処理します。

【自己株式とは?】

自己株式とは、自社で保有する自社株式のことをいいます。

※自己株式は「純資産のマイナス」となります。

【自己株式の処分とは?】

自己株式の処分とは、会社が所有する自己株式を売却することです。

自己株式を処分した場合は純資産の増加(貸方)で処理します。

例題3

上記の例題2の続きで

X1年10月1日、発行した新株予約権のうち

4個について権利が行使され、代金が当座預金に払い込まれた。

発行者は自己株式(帳簿価額@90円)を移転した。

[新株予約権の条件]

  • 新株予約権の発行数:10個(1個につき20株)
  • 新株予約権の払込金額:1個につき200円
  • 行使価額:1株につき100円
  • 行使期間:X1年9月1日からX1年12月31日

(解答)

新株予約権800/自己株式5,400
当座預金6,000/その他資本剰余金1,400

(解説)

〇新株予約権の金額

例題1で新株予約権10個(10個×@200円=2,000)を発行しました。

このうち4個が行使された場合されたため

下記のように新株予約権を減少させます。

  • @200×4個=800円

〇権利行使にともなう払込金額

また、権利行使により行使価額の払込みがされます。

行使価額は1株につき100円で、新株予約権1個につき株式は15株のため

下記のように当座預金へ払い込みされます。

  • @100×新株予約権4個×15株=6,000円

〇自己株式の帳簿価額

自己株式の帳簿価額@90×新株予約権4個×15株=5,400円

〇その他資本剰余金の計上

貸借差額を「その他資本剰余金」として計上します。

800+6,000-5,400=1,400円

権利行使期間の満了時の仕訳

権利行使を行わずに、行使期間の満了を迎えた場合

新株予約権を「新株予約権戻入益(P/L)」に振り替えます。

行使期間が過ぎれば新株予約権を行使することが出来ません。

そのため新株予約権を減少させ、「新株予約権戻入益」へ振り替えます。

例題4

上記の例題3の続きで

X1年12月31日、発行した新株予約権の行使期間が到来した。

発行した10個のうち、9個は行使され、1個は未行使である。

[新株予約権の条件]

  • 新株予約権の発行数:10個(1個につき20株)
  • 新株予約権の払込金額:1個につき200円
  • 行使価額:1株につき100円
  • 行使期間:X1年9月1日からX1年12月31日

(解答)

新株予約権
(B/S)
200/新株予約権戻入益
(P/L)
200

(解説)

発行した新株予約権10個のうち、5個は例題2で、4個は例題3で行使しました。

残り1個(10-5-4=1)は未行使です。

行使期間が到来したため、この新株予約権は行使することはできないため

新株予約権戻入益」へ振り替えます。

  • @200×1個=200円
    または
  • 2,000(例題1)-1,000(例題2)-800(例題3)=200円
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新株予約権の取得側の仕訳

上記で解説したのは新株予約権の「発行側」の仕訳です。

参考までに新株予約権の「取得側」の仕訳も解説します。

上記の例題1-4の「発行側」と「取得側」の仕訳は下記のようになります。

例題1(発行時・取得時)

(発行側)

当座預金2,000/新株予約権2,000

(取得側)

その他有価証券2,000/現預金など2,000

新株予約権を取得した場合は「その他有価証券」で計上します。

例題2(権利行使時/新株の発行)

(発行側)

新株予約権1,000/資本金4,250
当座預金7,500/資本準備金4,250

(取得側)

その他有価証券8,500/その他有価証券1,000
/現預金など7,500

取得側が新株予約権の権利を行使した場合

行使価額7,500円を支払います。(現預金の減少)

この行使価額を加算した金額で「その他有価証券」を振り替えます。

例題3(権利行使時/自己株式の処分)

(発行側)

新株予約権800/自己株式5,400
当座預金6,000/その他資本剰余金1,400

(取得側)

その他有価証券6,800/その他有価証券800
/現預金など6,000

自己株式の処分による権利行使は発行側の処理のため

取得側の仕訳は例題2と同様の仕訳で処理します。

例題4(権利行使期間の満了時)

(発行側)

新株予約権
(B/S)
200/新株予約権戻入益
(P/L)
200

(取得側)

新株予約権未行使損
(P/L)
200/その他有価証券200

行使期間の間に行使しなければ、行使は出来ず株式の取得は出来ません。

そのため、取得側が行使期間に行使しなかった場合、

取得時に計上した「その他有価証券」を減少させ、「新株予約権未行使損(P/L)」で計上します。

まとめ

今回は【新株予約権】について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 新株予約権とは、あらかじめ決められた価額で株式を買うことができる権利のことである。
  • 新株予約権を発行した時は「新株予約権(純資産)で計上する。
  • 新株予約権は行使期間に行使することができる。
  • 権利を行使され、新株が発行した時に「資本金等」に振り替える。
  • 行使期間に未行使となった新株予約権は「新株予約権戻入益」へ振り替える。

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