今回は連結会計の
[支配獲得日後1年目の連結の開始仕訳]
について解説します。
支配獲得日後1年目の連結
支配獲得日時点では、貸借対照表(B/S)のみ連結しましたが、
支配獲得日後は損益計算書(P/L)・株主資本等変動計算書も(S/S)も連結する必要があります。
【Q.支配獲得日時点はなぜB/Sのみ連結なのか?】
→[B/S]はある時点の残高を表すもの
それに対して[P/L]・[S/S]は特定の期間の数値を表すものだからです。
例えばX2年3月決算であれば
- B/SはX2年3月時点の残高
- P/L・S/SはX1年4月-X2年3月の期間の数値
と少し性質が異なります。
X1年3月31日に支配獲得した場合、その前まで(3月30日以前)の期間は支配獲得されていないため、P/S・S/Sは連結する必要はありません。
↓支配獲得時の仕訳に関しては下記をご参照ください。
開始仕訳とは?
連結財務諸表は、毎期末に各社の当期の個別財務諸表を合算して新たに作成します。
当期の個別財務諸表には、前期まで行った連結修正仕訳は反映されません。
そこで前期まで行った連結修正仕訳を当期で再度仕訳する必要があります。
これが開始仕訳です。
上記の図解のように支配獲得日から前期までの連結修正仕訳は、当期で開始仕訳します。
※評価差額は日商簿記1級の試験範囲になります。
個別の仕訳と違い、連結修正仕訳は翌期に繰り越されません。そのため開始仕訳が必要となります。
開始仕訳の勘定科目
開始仕訳では、支配獲得日から前期までの連結修正仕訳を当期で再度仕訳しますが
資本金や利益剰余金などの[純資産項目]については
後ろに「当期首残高」とつけて、連結株主資本等変動計算書S/Sの勘定科目で仕訳します。
開始仕訳では[純資産項目]の勘定科目が
下記のようにを変化する
- 資本金
→【資本金当期首残高】 - 資本剰余金
→【資本剰余金当期首残高】 - 利益剰余金
→【利益剰余金当期首残高】 - 非支配株主持分
→【非支配株主持分当期首残高】 - 評価差額
→【評価差額】
※評価差額は変化しない
◆開始仕訳で使用する勘定科目
- 【純資産の項目】
→後ろに「~当期首残高」と付ける - 【損益項目(P/L)】
→「利益剰余金当期首残高」の勘定科目へ変更する
評価差額は相殺されて残高0となるため、勘定科目は変わりません。
なぜ開始仕訳は「当期首残高」と付ける必要があるのか?
例題
(X1年3月31日の連結修正仕訳)
資本金 | 200 | / | 子会社株式 | 400 |
利益剰余金 | 300 | / | 非支配株主持分 | 150 |
のれん | 50 | / |
- P社の子会社株式400を減少させるため貸方へ
- S社の資本金200利益剰余金300を減少させるため借方へ
- 70%保有のため、100-70=30%は非支配株主持分
- 株主資本500(資本金200+利益剰余金300)×30%=150円(非支配株主持分)
- 貸借差額により借方差額50円は「のれん」となる。
↓上記の例題(投資と資本の相殺消去)の詳しい解説は下記をご参照ください。
支配獲得日後1年目の開始仕訳
(X2年3月31日の開始仕訳)
資本金当期首残高 | 200 | / | 子会社株式 | 400 |
利益剰余金当期首残高 | 300 | / | 非支配株主持分 当期首残高 | 150 |
のれん | 50 |
前期(X1年)の支配獲得日の連結修正仕訳は
当期(X2年)で開始仕訳する必要があります。
開始仕訳では純資産項目には後ろに「~当期首残高」と付けます。
上記は支配獲得日後1年目の仕訳です。2年目以降になると少し複雑になります。
支配獲得日後1年目の連結修正仕訳
先程の例題で示した開始仕訳は
上記の図解の「1年目の開始仕訳」の部分になります。
[支配獲得日後1年目の連結修正仕訳]では
開始仕訳の他に下記の連結修正仕訳が必要となります。
※上記は翌年度以降は開始仕訳の対象となります。
①のれんの償却
のれん償却額 | / | のれん |
支配獲得日の投資と資本の相殺消去(資本連結)の際に
貸借差額が発生した場合、
「のれん(無形固定資産)」で計上します。
この「のれん」は20年以内で毎年償却する必要があります。
②子会社の当期純損益の振替え
非支配株主に 帰属する当期純損益 | / | 非支配株主持分 当期変動額 |
仮に80%子会社の場合、
残り20%は[非支配株主持分]になります。
この20%は親会社に帰属しないため、
子会社の当期純利益のうち20%は連結上は利益として計上しません。
20%の当期純利益を借方で減少させる必要があります。
③子会社の配当金の修正
受取配当金 ↑(親会社) | 80 | / | 剰余金の配当 ↑(子会社) | 100 |
非支配株主持分 当期変動額 | 20 | / |
仮に80%子会社の場合、
残り20%は[非支配株主持分]になります。
親会社が子会社から配当金もらった場合、内部取引になるため連結上では相殺させる必要があります。
そのため受取配当金(収益)を減少させるため貸方で計上します。
また子会社は利益剰余金から配当金を支払っているため
個別上は利益剰余金が減少(借方)します。
これを取り消すため、「剰余金の配当(利益剰余金)」という勘定科目で貸方に計上します。
※上記①②③の詳細に関してはそれぞれのリンク先をご参照ください。
まとめ
今回は[支配獲得日後1年目の連結の開始仕訳]について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります
- 支配獲得日は[子会社の資産・負債の時価評価][投資と資本の相殺消去]をする
- 支配獲得日後の1年目は上記の開始仕訳を行う。
- そして下記の3つの連結修正仕訳を行う。
- ①のれんの償却
- ②子会社の当期純損益の振替え
- ③子会社の配当金の修正
- 開始仕訳は支配獲得日から前期まで行った連結修正仕訳を当期で再度仕訳すること。
- 純資産の勘定科目には後ろに「~当期首残高」と付ける。
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