日商簿記2級

手形割引の修正|連結会計

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親子会社間の内部取引を相殺消去する「成果連結」には

下記のような連結修正仕訳があります。

成果連結の種類
  • 内部取引高・債権債務の相殺消去
  • 貸倒引当金の修正
    • (税効果の適用なし)
    • (税効果の適用あり)
  • 手形割引の修正
  • 未実現損益の消去
    • (税効果の適用なし)
    • (税効果の適用あり)

今回は「手形割引の修正」について解説します。

本記事の内容
  • 連結財務諸表の作成の手順
  • 「手形の割引き」とは?
  • 連結上の「手形割引の修正」とは?
  • 手形の裏書譲渡による連結修正仕訳
  • 連結上の[手形割引の修正]による税効果会計の適用について

※本記事は日商簿記2級向けの内容となります。

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連結財務諸表の作成の手順

連結財務諸表の作成は下記のような流れで行います。

  • [親会社]と[子会社]の財務諸表を合算させる。
  • 連結修正仕訳を起票する
  • 連結財務諸表の完成

「手形の割引き」とは?

所有している受取手形は、支払期日前に銀行などの金融機関へ買い取ってもらうことができます。

これが「手形の割引き」です。

ただし、買い取るには一部手数料・利息として割り引かれます

そのため「割引き」と呼んでおります。

この銀行などの金融機関へ支払う手数料や利息を「割引料」といいます。

例えば受取手形100万を、支払期日前に銀行等へ持っていった場合、割引料10万引かれ、残り90万が受け取ることができます。

この割引料は、「手形売却損(費用)」という勘定科目を用います。

手形割引の修正とは?

連結グループ間で約束手形により、債権債務が発生すれば

こちらは相殺消去する必要があります。

支払手形
(負債の減少)
/受取手形
(資産の減少)

しかし、受取手形を「手形の割引」により現金化してしまうと

受取手形のみ減少し

連結グループ間で、受取手形・支払手形による債権債務は一致しなくなります。

詳しく解説

子会社S社が親会社P社に対して100円の約束手形を振り出した時

  • P社の受取手形100円
  • S社の支払手形100円

となります。連結上はこれを相殺しますが

もしP社が受取手形100円を銀行へ持ち込み、手形の割引により現金化すれば

  • P社の受取手形0円
  • S社の支払手形100円

となってしまい、P社・S社の債権債務は不一致となります。

S社の支払手形100円は、P社に対する債務になりますが

P社は銀行に持ち込むことで支払先はP社→銀行へ移りました。

これにより連結上は「銀行に手形を振り出して借入れおこなった」と考えられるため

支払手形(P社)→短期借入金(銀行)へ振り替えます。

※()内は取引先名

また、手形の割引による「手形売却損」は

連結グループ上では借入金による「支払利息」に該当するため

「手形売却損」→「支払利息」へ振り替えます。

そのため下記の連結修正仕訳が必要となります。

支払手形
(負債の減少)
100/短期借入金
(負債の増加)
100
支払利息
(費用の増加)
/手形売却損
(費用の減少)

連結上の【手形割引の修正】による振替

  • 支払手形→【短期借入金】
  • 手形売却損→【支払利息】

※支払手形の支払期日が1年以上超える場合は[長期借入金]となる。

手形を割引することによって、債権が銀行へ移ります。

銀行からお金を借りているようなもののため「借入金」「支払利息」を用います。

例題

例題

子会社S社は当期に親会社P社に対して約束手形3,000円を振り出した。

P社は期中にこの約束手形のうち、1,000円を銀行で割り引き、割引料100円を差し引いた金額で現金を受け取った。残額は期末まで保有している。

この取引について当期の連結修正仕訳を示しなさい。

(解答)※連結修正仕訳

(1)支払手形2,000/受取手形2,000
(2)支払手形1,000/短期借入金1,000
(3)支払利息100/手形売却損100

(個別上の仕訳)

P社受取手形3,000/売上など2,000
S社仕入など3,000/支払手形3,000
P社現金900/受取手形1,000
手形売却損100/1,000
  • 問題文より、個別上の仕訳は上記のようになります。
  • これによりP社・S社の債権債務は下記のようになります。
    • P社の受取手形2,000円
      (3,000-割引1,000=2,000)
    • S社の支払手形3,000円
  • (1)期末残高の[受取手形][支払手形]2,000円を相殺消去する
  • 残りの支払手形1,000円は、P社が割り引いたことで、債務がP社→銀行へ移ったため下記のように振り替えます。
  • (2)[支払手形]1,000円→[短期借入金]1,000円
  • また[手形売却損]は連結グループ上では銀行に対する利息に近いため下記のように振り替えます。
  • (3)[手形売却損]100円→[支払利息]100円

【解答の手順】

  • 期末時点で残高として残っている「受取手形」「支払手形」を相殺消去する。
  • 受取手形を割り引きにより現金化している場合は、
  • 支払手形→【短期借入金】
  • 手形売却損→【支払利息】
  • 上記のように振り替える。
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手形の裏書譲渡による連結修正仕訳

結論から申し上げますと

手形の裏書譲渡による連結修正仕訳は不要となります。

手形の裏書譲渡とは?

手形の裏書譲渡とは、手形を受け取った名宛人が他の企業に、

その手形を渡す(譲渡する)ことをいいます。

手形を他社へ裏書譲渡した場合、

支払手形の支払先がP社(親会社)→他社へ変更となります。

連結グループの視点でも「支払手形」であることは変わらないため、連結修正仕訳は不要となります。

【手形の割引】の場合

→支払先が銀行へ変わるため、借入金の近いイメージになる。

そのため「借入金」へ振り替える

【手形の裏書譲渡】の場合

→支払先が他社へ変わるため、支払手形であることは変わりはない。

そのため連結修正仕訳は不要となる

連結上の[手形割引の修正]による税効果会計の適用について

結論から申し上げると、

[手形割引の修正]による税効果会計の適用は発生しません。

手形割引の修正による連結修正仕訳は下記のようなものになります。

(1)支払手形
(負債の減少)
2,000/受取手形
(資産の増加)
2,000
(2)支払手形
(負債の減少)
1,000/短期借入金
(負債の増加)
1,000
(3)支払利息
(費用の増加)
100/手形売却損
(費用の減少)
100

連結修正仕訳によって、

一時差異による当期純利益が変動した場合、税効果会計の適用となります。

しかし上記仕訳では、P/L勘定の振り替えは(3)のみで費用の振り替えになるため

当期純利益に変動はありません。

※費用が100円増加して、100円減少しているため、結果±0となります。

そのため、[手形割引の修正]による税効果会計の適用は発生しません。

補足

また連結修正仕訳によって当期純利益が変動しないため

[非支配株主に帰属する当期純損益]の振り替えも発生しません。

連結上の税効果会計は日商簿記1級の試験範囲となります。

まとめ

今回は連結修正仕訳の「手形割引の修正」について解説しました。

要点をまとめると下記のようになります。

手形割引の修正

  • 連結グループ内で発生した手形を割り引いた場合、個別上では手形の割引きになる。
  • しかし連結グループで考えた場合、銀行に手形を振り出して借入れおこなったと考える。
  • そのため連結上では下記のように修正仕訳を行う。
  • 支払手形→【短期借入金】
  • 手形売却損→【支払利息】
  • また[手形の裏書譲渡]は譲渡先が銀行ではなく他社の企業のため、「支払手形」であることは変わりがないため連結修正仕訳は不要となる。
  • [手形割引の修正]により当期純利益は変動しないため、税効果会計の適用はない
  • [非支配株主に帰属する当期純損益]の振り替えも発生しない。

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かつお

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