[持分法]の修正仕訳は主に下記のようなものがあります。
- 株式取得時の処理
- 時価評価(評価差額)
※[部分時価評価法]と[全面時価評価法] - 投資差額の算定
- 時価評価(評価差額)
- 投資差額の償却
- 当期純利益の計上
- 受取配当金の修正
- 持分法の開始仕訳
- 株式の売却損益の修正
- 期末の未実現損益の消去
- 期首の未実現損益の仕訳
今回は「期末の未実現損益の消去」について解説します。
※税効果会計の適用ありで解説してます。
持分法の場合、連結と違い下記のような注意点があります。
持分法の未実現損益
持分法の場合も、連結と同様に[未実現利益の消去]を行う必要があります。
↓[連結会計の未実現利益]については下記をご参考ください。
連結会計と違い、持分法では個別財務諸表の合算を行いません。
そのため、未実現利益で用いる勘定科目も少し異なります。
連結会計の未実現利益の仕訳
(1) | 売上原価 (P/L) | 50 | / | 商品 | 50 |
(2) | 繰延税金資産 | 20 | / | 法人税等調整額 (P/L) | 20 |
(3) | 非支配株主持分当期変動額 | 6 | / | 非支配株主に帰属する当期純損益 (P/L) | 6 |
持分法の未実現利益の仕訳
持分法の場合は、下記により勘定科目が異なります。
- ダウンストリーム
- アップストリーム
また連結と違い、アップストリームによる非支配株主の振替えは発生しません。
持分法では個別財務諸表の合算を行わないため、非支配株主の振替えは発生しません。
持分法による未実現利益の消去の仕訳は下記のようになります。
繰り返しになりますが、
持分法の場合、個別財務諸表の合算を行いません。
連結上では、投資会社P社の個別財務諸表が主体となり、
被投資会社A社の利益だけ加減算しているかたちになります。
- ダウンストリーム
→投資会社P社の売上高が変動 - アップストリーム
→被投資会社A社の売上高が変動
アップストリームによる被投資会社のA社の売上高の変動は、
[持分法による投資損益]の変動となるため、この勘定科目を用います。
また相手科目である貸方も
- ダウンストリームでは[A社株式]
- アップストリームでは[商品]
と異なるため注意しましょう。
持分法の未実現利益の消去額
連結では、未実現利益の全額を消去しますが
持分法の場合、下記のようになります。
- ダウンストリームの[非連結子会社]→全額
- それ以外→持分(%)相当額
となります。
連結と持分法で未実現利益の消去額も異なるので注意しましょう。
なぜ連結と勘定科目が異なるのか?
ここで疑問に思うのは下記になります。
- 連結では[借方]は[売上原価]に対して、なぜ持分法のダウンストリームでは[売上高]なのか?
- アップストリームでは、[売上高]ではなく、なぜ[持分法による投資損益]なのか?
- [貸方]に関しては、なぜ下記のように異なるのか?
- ダウンストリーム→[A社株式]
- アップストリーム→[商品]
上記の疑問については下記のページで詳しく解説します。
ダウンストリーム(関連会社)の例題
※[関連会社]の場合、未実現利益の持分(%)相当額を消去額とします。
(1) | 売上高 | 30 | / | A社株式 | 30 |
(2) | 繰延税金資産 | 12 | / | 法人税等調整額 | 12 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×20%(持分)=30円
関連会社によるダウンストリームのため、持分(%)相当額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
30×40%(税率)=12円
ダウンストリーム(非連結子会社)の例題
※[非連結子会社]の場合、未実現利益の全額を消去額とします。
(1) | 売上高 | 150 | / | A社株式 | 150 |
(2) | 繰延税金資産 | 60 | / | 法人税等調整額 | 60 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×100%(全額)=150円
非連結子会社によるダウンストリームのため、全額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上高の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
150×40%(税率)=60円
アップストリーム
※アップストリームの場合は[関連会社][非連結会社]関係なく
未実現利益の持分(%)相当額を消去額とします。
またダウンストリームと勘定科目も異なるため注意しましょう。
(1) | 持分法による投資損益 | 30 | / | 商品 | 30 |
(2) | A社株式 | 12 | / | 持分法による投資損益 | 12 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×20%(持分)=30円
アップストリームのため、持分(%)相当額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上高の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
30×40%(税率)=12円
ダウンとアップで勘定科目が異なるので注意しましょう。
持分法だと税効果の勘定科目が異なる理由
ダウンストリームの場合
ダウンストリームの場合
投資会社(P社)が納税主体となるため
法人税等調整額で調整し、相手科目は繰延税金資産になります。
これに対してアップストリームの場合
アップストリームの場合
アップストリームの場合
被投資会社(A社)が納税主体となるため
法人税等調整額ではなく持分法による投資損益で調整し、
相手科目は繰延税金資産ではなく、A社株式になります。
「持分法」では、個別財務諸表の合算はせず
被投資会社A社の利益のうち、投資会社P社の持分のみ加算します。
連結では、合算して相殺消去しますが、持分法は利益のみで調整します。
この時に用いる勘定科目が「持分法による投資損益」「A社株式」です。
アップストリームの場合
被投資会社(A社)が納税主体となり、被投資会社(A社)の調整は
「持分法による投資損益」「A社株式」を用いるため
ダウンストリームとは勘定科目が異なります。
まとめ
今回は「期末の未実現損益の消去」について解説しました。
- 連結と同様に持分法でも、未実現利益の消去が必要である。
- 消去額は連結の場合は、未実利益の全額となる。
- しかし、持分法の場合は[持分相当額]と[全額]の場合とあるので注意
- ダウンストリームとアップストリームで使用する勘定科目も異なる。
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