日商簿記2級

【図解】未実現損益の消去(税効果の適用なし)|連結会計

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親子会社間の内部取引を相殺消去する

成果連結」には下記のような連結修正仕訳があります。

今回は「未実現損益の消去(税効果の適用なし)」について解説します。

本記事の内容
  • 連結財務諸表の作成の手順
  • 未実現損益の消去とは?
  • ダウンストリーム・アップストリームとは?
  • 期末棚卸資産の未実現利益の消去の仕訳

※日商簿記2級の試験範囲である【税効果の適用なし】の場合で、解説します。

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連結財務諸表の作成の手順

連結財務諸表の作成は下記のような流れで行います。

  • [親会社]と[子会社]の財務諸表を合算させる。
  • 連結修正仕訳を起票する
  • 連結財務諸表の完成

未実現損益の消去とは?

連結会社間で商品を売買する場合、

外部と取引する場合と同様に仕入原価に利益を上乗せした価額で販売します。

しかし、連結グループ内の取引は単なる商品の移動であるため、

グループ内取引に上乗せされた利益は消去する必要があります。

この期末棚卸資産(商品)に含まれる利益を未実現利益といいます。

図解

上記の図解で解説すると下記のようになります。

  • [商品B]は外部へ販売しているため、実現となり未実現の対象にはなりません。
  • [商品A]は子会社S社で棚卸資産として残っており、内部利益10円は未実現利益になります。

子会社で商品Aは110円(内部利益10円含む)は

棚卸資産の計上により個別上は下記のような仕訳が計上されています。

(個別上の仕訳)

商品
(繰越商品)
110/仕入
(売上原価)
110

「しいくりくりしい」の「くりしい」の仕訳になります。

連結上では、商品110円のうち内部利益10円は未実現利益のため

商品10円を減少させます。

相手科目は[売上原価]です。

(連結修正仕訳)※未実現利益の消去

売上原価10/商品
(繰越商品)
10

これが未実現利益の消去の連結修正仕訳になります。

あくまで期末商品として残っているものに限ります。

外部へ販売されたものは対象になりませんので注意しましょう。

商品Aは個別上はP社から110円で仕入れたが

連結上は外部から100円で仕入れたことになるため

この差額10円が連結修正仕訳の対象となります。

↓「なぜ売上ではなく、売上原価なのか?」については下記をご参照ください。

↓「しいくりくりしい」の解説は下記をご参照ください。

ダウンストリーム・アップストリームとは?

期末棚卸資産の未実現利益は下記の2つがあります。

  • ダウンストリーム
  • アップストリーム

【ダウンストリーム】

親会社→子会社へ商品などを販売すること

【アップストリーム】

子会社→親会社へ商品などを販売すること

ダウンストリーム

親会社→子会社へ商品などを販売することです。

アップストリーム

子会社→親会社へ商品などを販売することです。

アップストリームの場合、未実現利益の消去によって子会社の当期純利益が変動します。

子会社の純利益が変動するということは

その変動額のうち、非支配株主分は

[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替える必要があります。

詳しく解説

[未実現利益の消去]によって

下記のように売上原価が変動して

当期純利益も変動します。

売上原価10/商品10

子会社が外部から仕入れて

親会社へ販売しているため

この売上原価は[子会社]によるものです。

そのため、この[未実現利益の消去]によって

子会社の当期純利益が変動します。

その変動額のうち、非支配株主分は

[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替える必要があります。

(連結修正仕訳)

売上原価
(P/L)
/商品
非支配株主持分
当期変動額
/非支配株主に
帰属する当期純損益

(P/L)

↓[子会社の当期純損益の振替え]については下記をご参照ください。

【ダウンストリーム】

  • 未実現損益の消去

【アップストリーム】

  • 未実現損益の消去
  • [非支配株主に帰属する当期純損益]への振り替え

【子会社の当期純利益】が変動する場合、[非支配株主に帰属する当期純損益]への振り替えが発生します。

期末棚卸資産の未実現利益の消去の仕訳

次に下記2つの未実現利益の消去について例題に沿って解説します。

  1. ダウンストリーム
  2. アップストリーム

ダウンストリーム

親会社P社→子会社S社へ販売する場合です。

例題

P社はS社の発行済株式の80%保有し、支配している。

当期、親会社P社は子会社S社に商品3,000円を現金で販売した。

当期末のS社の個別B/Sの商品は、P社から仕入れた商品が500円含まれる。

なお、P社はS社に対して原価率90%で商品を販売している。

この取引について当期の連結修正仕訳を示しなさい。

なお、税効果会計の適用はなしとする。

(解答)※連結修正仕訳

(1)売上高3,000/売上原価3,000
(2)売上原価50/商品50
  • (1)売上高と売上原価の3,000円を相殺消去します。
  • (2)未実現利益の消去
  • 500×利益率10%=50円
  • 利益率:100-原価90=10%

(個別上の仕訳)

P社仕入(売上原価)
※外部からの仕入
450
※1
/現金450
P社現金3,000/売上高3,000
S社売上原価(仕入)3,000/現金3,000
S社商品500/売上原価(仕入)500
50円の内部利益が含まれている
※1棚卸資産500×原価90%=450円
補足

商品500円のうち、50円は内部利益となるため、未実現利益となる

  • 500×(100-90)%=50円(利益)
  • 500×90%=450円(原価)

アップストリーム

子会社S社→親会社P社へ販売する場合です。

例題

P社はS社の発行済株式の80%保有し、支配している。

当期、子会社S社は親会社P社に商品3,000円を現金で販売した。

当期末のP社の個別B/Sの商品は、S社から仕入れた商品が500円含まれる。

なお、S社はP社に対して原価率90%で商品を販売している。

この取引について当期の連結修正仕訳を示しなさい。

なお、税効果会計の適用はなしとする。

(解答)※連結修正仕訳

(1)売上高3,000/売上原価3,000
(2)売上原価
(P/L)
50/商品50
(3)非支配株主持分当期変動額10/非支配株主に帰属する当期純損益
(P/L)
10
  • (1)売上高と売上原価の3,000円を相殺消去します。
  • (2)未実現利益の消去
  • 500×利益率10%=50円
  • 利益率:100-原価90=10%
  • (3)[非支配株主に帰属する当期純損益]への振り替え
  • 売上原価50円の計上により、子会社の当期純利益が50円減少します。
  • この50円のうち、20%である10円を
    [非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替えます。
  • 50×20%=10円
  • ※100-80%=20(非支配)

(個別上の仕訳)

S社仕入(売上原価)
※外部からの仕入
450
※1
/現金450
S社現金3,000/売上高3,000
P社売上原価(仕入)3,000/現金3,000
P社商品500/売上原価(仕入)500
50円の内部利益が含まれている
※1棚卸資産500×原価90%=450円

【子会社の当期純利益】が変動する場合、[非支配株主に帰属する当期純損益]への振り替えが発生します。

まとめ

今回は「未実現損益の消去」について解説しました。

要点をまとめると下記のようになります。

【未実現利益の消去】

  • 未実現利益とは、連結グループ間で仕入れて、期末に残った商品に含まれる内部利益のこと
  • この内部利益は下記のような連結修正仕訳を行う。
  • →[売上原価/商品]
  • また、アップストリーム(子会社→親会社)の場合は
    子会社の売上原価(P/L)の変動により、【子会社の当期純利益】が変動する。
  • そのため連結上では非支配株主持分の[非支配株主に帰属する当期純損益(P/L)]へ振り替える必要がある。

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経理歴8年で企業経理で働いています。経理や簿記について解説していきます。

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