[持分法]の修正仕訳は主に下記のようなものがあります。
- 株式取得時の処理
- 時価評価(評価差額)
※[部分時価評価法]と[全面時価評価法] - 投資差額の算定
- 時価評価(評価差額)
- 投資差額の償却
- 当期純利益の計上
- 受取配当金の修正
- 持分法の開始仕訳
- 株式の売却損益の修正
- 期末の未実現損益の消去
- 期首の未実現損益の仕訳
今回は「期首の未実現損益の仕訳」について解説します。
※税効果会計の適用ありで解説してます。
持分法の未実現損益
持分法による未実現利益の消去の仕訳は下記のようになります。



持分法の期首の未実現利益
前期末に未実現利益の消去を行った場合、
連結と同様に当期において、下記を行います。
- 開始仕訳
- 実現仕訳

前期においての未実現利益は当期で実現したとして処理します。
↓連結の場合の処理については下記をご参考ください。
◆開始仕訳で使用する勘定科目
- 【損益項目(P/L)】
→「利益剰余金当期首残高」の勘定科目へ変更する
持分法による[期首の未実現利益の修正仕訳]は下記になります。
ダウンストリーム

① | 利益剰余金当期首残高 | / | 売上高 |
② | 法人税等調整額 | / | 利益剰余金当期首残高 |
※[A社株式]と[繰延税金資産]は相殺されます。
アップストリーム

① | 利益剰余金当期首残高 | / | 持分法による投資損益 |
② | 持分法による投資損益 | / | 利益剰余金当期首残高 |
※[商品]と[A社株式]は相殺されます。
- [開始仕訳]では、売上高などの損益項目は[利益剰余金当期首残高]で処理します。
- [実現仕訳]は、前期の未実現利益の消去の仕訳の逆仕訳になります。

開始仕訳と実現仕訳の考え方は
連結の場合と同様になります。
例題
ダウンストリーム(関連会社)
※[関連会社]の場合、未実現利益の持分(%)相当額を消去額とします。
P社はA社の発行済株式の20%を1,200円で取得し
関連会社として持分法を適用している。
下記の資料に基づき、当期X2年3月31日の連結財務諸表を作成するために必要な
修正仕訳を示しなさい。
[資料]
- 前期末X1年3月31日のA社の期末棚卸商品のうち1,000円はP社から仕入れたものである。
- なお、P社はA社に利益率15%で商品を販売している。
- 実効税率は40%である。
(解答)※持分法による修正仕訳
(1) | 利益剰余金当期首残高 | 30 | / | 売上高 | 30 |
(2) | 法人税等調整額 | 12 | / | 利益剰余金当期首残高 | 12 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×20%(持分)=30円

関連会社によるダウンストリームのため、持分(%)相当額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
30×40%(税率)=12円
↓上記の(解答)の内訳は下記になります。
(1)開始仕訳 | 利益剰余金当期首残高 (売上高) | 30 | / | A社株式 | 30 |
(1)実現仕訳 | A社株式 | 30 | / | 売上高 | 30 |
(2)開始仕訳 | 繰延税金資産 | 12 | / | 利益剰余金当期首残高 (法人税等調整額) | 12 |
(2)実現仕訳 | 法人税等調整額 | 12 | / | 繰延税金資産 | 12 |
※解答では[A社株式]と[繰延税金資産]が相殺されます。
ダウンストリーム(非連結子会社)
※[非連結子会社]の場合、未実現利益の全額を消去額とします。
P社はA社の発行済株式の60%を1,200円で取得し
非連結子会社として持分法を適用している。
下記の資料に基づき、当期X2年3月31日の連結財務諸表を作成するために必要な
修正仕訳を示しなさい。
[資料]
- 前期末X1年3月31日のA社の期末棚卸商品のうち1,000円はP社から仕入れたものである。
- なお、P社はA社に利益率15%で商品を販売している。
- 実効税率は40%である。
(解答)※持分法による修正仕訳
(1) | 利益剰余金当期首残高 | 150 | / | 売上高 | 150 |
(2) | 法人税等調整額 | 60 | / | 利益剰余金当期首残高 | 60 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×100%(全額)=150円

非連結子会社によるダウンストリームのため、全額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上高の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
150×40%(税率)=60円

↓上記の(解答)の内訳は下記になります。
(1)開始仕訳 | 利益剰余金当期首残高 (売上高) | 150 | / | A社株式 | 150 |
(1)実現仕訳 | A社株式 | 150 | / | 売上高 | 150 |
(2)開始仕訳 | 繰延税金資産 | 60 | / | 利益剰余金当期首残高 (法人税等調整額) | 60 |
(2)実現仕訳 | 法人税等調整額 | 60 | / | 繰延税金資産 | 60 |
※解答では[A社株式]と[繰延税金資産]が相殺されます。
アップストリーム
※アップストリームの場合は[関連会社][非連結会社]関係なく
未実現利益の持分(%)相当額を消去額とします。
またダウンストリームと勘定科目も異なるため注意しましょう。
P社はA社の発行済株式の20%を1,200円で取得し
関連会社として持分法を適用している。
下記の資料に基づき、当期X2年3月31日の連結財務諸表を作成するために必要な
修正仕訳を示しなさい。
[資料]
- 前期末X1年3月31日のP社の期末棚卸商品のうち1,000円はA社から仕入れたものである。
- なお、A社はP社に利益率15%で商品を販売している。
- 実効税率は40%である。
(解答)※持分法による修正仕訳
(1) | 利益剰余金当期首残高 | 30 | / | 持分法による投資損益 | 30 |
(2) | 持分法による投資損益 | 12 | / | 利益剰余金当期首残高 | 12 |
(1)未実現利益の消去額
期末商品1,000×15%(利益率)×20%(持分)=30円

アップストリームのため、持分(%)相当額となります。
(2)税効果会計の適用
連結上の売上高の変動により、利益も変動するため
税効果会計の適用が必要となります。
30×40%(税率)=12円


ダウンとアップで勘定科目が異なるので注意しましょう。
↓上記の(解答)の内訳は下記になります。
(1)開始仕訳 | 利益剰余金当期首残高 (持分法による投資損益) | 30 | / | 商品 | 30 |
(1)実現仕訳 | 商品 | 30 | / | 持分法による投資損益 | 30 |
(2)開始仕訳 | 繰延税金資産 | 12 | / | 利益剰余金当期首残高 (持分法による投資損益) | 12 |
(2)実現仕訳 | 持分法による投資損益 | 12 | / | 繰延税金資産 | 12 |
※解答では[商品]と[繰延税金資産]が相殺されます。
まとめ
今回は「期首の未実現損益の消去」について解説しました。
- 前期に未実現利益の消去を行った場合、持分法の場合も、連結と同様に
当期で[開始仕訳]と[実現仕訳]を行う。 - 開始仕訳では、損益項目を[利益剰余金当期首残高]で処理する。
- 仕訳は下記のとおりである。


<連結会計>
<資本連結>
※下記は[日商簿記1級]の試験範囲
<成果連結>
(税効果会計の適用なし)
※日商簿記2級
(税効果会計の適用あり)
※日商簿記1級
<その他>
<持分法>
※持分法は日商簿記1級の試験範囲になります。
<修正仕訳>
<その他>
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