「圧縮記帳」の会計処理は下記の2つあります。
【圧縮記帳】
- 直接減額方式(簿記2級)
- 積立金方式(簿記1級)
今回は「直接減額方式」について解説します。
圧縮記帳は上記2つとも簿記1級の試験範囲でしたが
2017年度より「直接減額方式」のみ簿記2級の試験範囲へ改定されました。
圧縮記帳とは?
「圧縮記帳」は国から補助金などを受け取り、有形固定資産を購入する時に
取得原価を減額(圧縮)する会計処理のことをいいます。
圧縮記帳のメリット
せっかく補助金もらったのに収益計上してしまえば利益(所得)が増えてしまい、
収める税金も増えてしまいます。
現預金100 | / | 収益の増加100 |
そこで圧縮記帳(取得原価を減額)することにより
費用(損金)が増加し、課税所得を減額させることができます。
費用の増加100 | / | 固定資産100 (資産の減少) |
これにより一時的な節税効果に繋がります。
なぜ節税になるのか?
所得(利益)が減れば、収める税金も減るからです。
益金(収益)ー損金(費用)=所得(利益)
- 益金(収益)の増加→所得(利益)の増加→税金の増加
- 損金(費用)の増加→所得(利益)の減少→税金の減少
ただし、この節税は一時的なものです。
取得原価を減らせば減価償却費も減りますので
償却終了後の利益(所得)は変わりません。
圧縮記帳の対象
圧縮記帳の対象は以下の資金で取得した有形固定資産になります。
①国庫補助金
国や地方公共団体からの補助金
②工事負担金
電気・ガス・通信などの公益事業会社が、利用者から受け取る設備の建設資金
③保険金
災害などにより滅失した資産に代わり新しく資産を購入する際の保険金収入
圧縮記帳の直接減額方式の仕訳
圧縮記帳の「直接減額方式」の仕訳について解説します。
【圧縮記帳の直接減額方式の仕訳方法】
- ①補助金を受け取った時
- ②固定資産を取得した時
①補助金を受け取った時
「国庫補助金収益」「工事負担金収益」で計上します。
現預金 | / | 国庫補助金収益 または 工事負担金収益 |
どちらも特別利益の収益勘定になります。
この時点では収益が増えて課税所得が増加してしまいます。
②固定資産を取得した時
固定資産の取得の計上とともに
①で受け取った補助金を「固定資産圧縮損(費用)」で計上し
取得原価から減額(圧縮)させます。
固定資産 | / | 現金 |
固定資産圧縮損 (費用の増加) | / | 固定資産 (資産の減少) |
固定資産圧縮損は特別損失の費用勘定になります。
これにより収益と費用が相殺され課税所得の増加を防ぎます。
仕訳
(1)国庫補助金受け取った時
現金 | 500,000 | / | 国庫補助金収入 | 500,000 |
国庫補助金500,000円を受け取ったため、収益として計上します。
(2)機械を購入した時
機械 | 1,500,000 | / | 現金 | 1,500,000 |
固定資産圧縮損 (費用の増加) | 500,000 | / | 機械 (資産の減少) | 500,000 |
2行目が圧縮記帳の直接減額方式になります。
補助金収入の金額を機械の取得原価から減少させ、
相手勘定は固定資産圧縮損(費用)で計上します。
圧縮記帳したことにより、機械の
取得原価は1,500,000-500,000=1,000,000円となります。
(3)X3年3月決算時
減価償却費 | 200,000 | / | 機械減価償却費累計額 | 200,000 |
減価償却費の計算
取得原価(1,500,000-固定資産圧縮損500,000)÷5年=200,000円
圧縮記帳した場合としなかった場合の利益の違い
上の例題を元に、圧縮記帳した場合としなかった場合の違いは下記になります。
- 圧縮記帳した場合
- 圧縮記帳しなかった場合
このように比較して見ると
①圧縮記帳した場合は圧縮損することで利益(所得)を押さえられますが
減価償却費の金額も小さくなります。
そのため利益が減るは1年目のみで、2年目以降は利益が増えるということです。
最終的に償却後の利益(所得)の累計は△1,000,000と一致します。
このため節税効果は一時的ということになります。
貸借対照表上の表示
減価償却の直接法と間接法の似たようなかたちで
圧縮記帳にも【直接控除注記方式】と【間接控除方式】があります。
BS上のそれぞれの表記は下記のようになります。
直接控除注記方式
【直接控除注記方式】
機械 | 1,000,000 | |
減価償却累計額 | △200,000 | 800,000 |
(注)機械圧縮額△500,000円が控除されている。
間接控除方式
【間接控除方式】
機械 | 1,500,000 | |
機械圧縮額 | △500,000 | |
減価償却累計額 | △200,000 | 800,000 |
まとめ
今回は圧縮記帳の直接減額方式について解説しました。
圧縮記帳のメリットは節税になりますが、あくまで所得が減るのは1年目だけになります。
その分2年目以降の所得は増えてしまうというのが、デメリットの1つでもあります。
まとめると下記のようになります。
- 圧縮記帳は取得原価を減額(圧縮)する会計処理のこと
- 直接減額方式は、固定資産の取得原価を直接減額し、
相手勘定は固定資産圧縮損で計上する方法 - メリットは圧縮時の年度は節税できる。
- デメリットは2年目以降は税額が増えること。また会計処理が少し複雑
- BS上の表示は【直接控除注記方式】と【間接控除方式】がある。
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