今回は「建設仮勘定」について解説します。
建設仮勘定は簿記2級の試験範囲になります。
実務向けに消費税についても解説しますが、こちらは簿記の試験には出題されません。
建設仮勘定とは?
「建設仮勘定」は建設中の建物や製造中の建物など未完成の有形固定資産になります。
建物・機械と同じ「有形固定資産」に区分されます。
建物が完成する前に依頼した建設会社に手付金を支払う場合や建設に必要な資材を購入することがあります。
このとき「建設仮勘定」を用います。
そして、建物が完成すれば建設仮勘定→「建物」へ振り替えます。
建物(または機械)が
- 未完成→建設仮勘定
- 完成→建物(または機械)
また、建設仮勘定は減価償却しません。
建設仮勘定は減価償却しない理由
それは建設中の建物や製造中の機械は収益性がないからです。
これは企業会計原則の「費用収益対応の原則」によるものです。
収益に対応する費用は同じ時期に計上するという意味です。
費用収益対応の原則
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。
(企業会計原則より引用)
そのため収益性がない建設仮勘定は減価償却しません
建設仮勘定の仕訳方法
具体的な仕訳方法について下記の例題の沿って解説します。
手付金の支払い
(例題①)
新しい事務所を新築するため、建設会社と請負契約(請負金額1,000,000円)をした。手付金として現金200,000円支払った。
(解説)
建設仮勘定(資産) | 200,000 | / | 現金 | 200,000 |
請負金額1,000,000円はまだ完成していないため計上しません。
手付金200,000円は現金として支払いましたが、まだ未完成のため建設仮勘定で計上します。
建設に必要な資材の購入
(例題②)
上記の建設に必要な資材100,000円を現金で購入した。
(解説)
建設仮勘定(資産) | 100,000 | / | 現金 | 100,000 |
建設に必要な経費も建設仮勘定で計上します。
費用で計上しないので注意しましょう。
なぜ費用でないかは、これも「費用収益対応の原則」によるものです。
事務所がまだ完成しておらず、収益性がないためになります。
完成・引き渡し後
(例題③)
上記の建設中の事務所が完成し引き渡された。残りの代金は後日支払うとする。
(解説)
建物(資産) | 1,100,000 | / | 建設仮勘定(資産) | 300,000 |
/ | 未払金 | 800,000 |
請負金額1,000,000円の建物が完成したので
建設仮勘定から建物へ振り替えます。
残金800,000円は後日支払うため「未払金」で計上します。
また貸方の建設仮勘定は手付金200,000円(例題①)と資材100,000円(例題②)になります。
営業外取引のため「未払金」になります。
買掛金ではないので注意しましょう。
建設仮勘定の消費税の取り扱いについて
建設仮勘定の消費税についてですが、
計上時に課税仕入として仕入税額控除できる場合とできない場合があります。
※ここから下の内容は簿記の試験では出題されません。
①工事代金の手付金などの前払金
→計上時に仕入税額控除できない。
工事が完成し引き渡された日に課税仕入として仕入税額控除できます。
②工事に必要な資材などの経費
→計上時に仕入税額控除できる
①工事代金の手付金などの前払金
①は前払金のような性質のため、課税仕入として仕入税額控除となりません。
また、相手側の建設会社も「前受金」で計上しているため、課税売上にはなりません。
※この時点では消費税区分は不課税です。
①の工事は完成後に「建物」へ振り替わり課税仕入で計上します。
また、相手側の建設会社も「売上」で計上しているため、課税売上になります。
②工事に必要な資材などの経費
②は経費として購入して引き渡しを受けているため
課税仕入として計上できます。
また、相手側の資材販売会社も「売上」で計上しているため、課税売上になります。
補足
国税庁のホームページには下記のように記載してます。
消費税法においては、建設仮勘定に計上されている金額であっても、原則として物の引渡しや役務の提供があった日の課税期間において課税仕入れに対する税額の控除を行うことになりますから、当該設計料に係る役務の提供や資材の購入等の課税仕入れについては、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入税額控除を行うことになります。
国税庁のホームページ
読み解きづらいかもしれませんが、下記のようになります。
- 役務の提供が終わった後(工事完成後)に課税仕入として税務額控除を行う
- 資材の購入は都度仕入控除できる。
建設仮勘定の消費税を考慮した仕訳
上記の例題①ー③を消費税考慮した場合、下記のようになります。
【例題①】手付金の支払い
建設仮勘定(不課税) | 200,000 | / | 現金 | 200,000 |
※この時点では課税仕入しません。
【例題②】建設に必要な資材の購入
建設仮勘定(課税) | 90,909 | / | 現金 | 100,000 |
仮払消費税 | 9,091 |
※この時点では課税仕入します。
100,000÷110%=90,909
【例題③】完成・引き渡し後
建物(課税) | 1,000,000 | / | 建設仮勘定(不課税) | 200,000 |
仮払消費税 | 100,000 | / | 建設仮勘定(課税) | 90,909 |
/ | 仮払消費税 | 9,091 | ||
/ | 未払金 | 800,000 |
※完成後の建物1,100,000円を課税仕入します。
例題①1,100,000÷110%=1,000,000
会計ソフトに入力する際は税込で入力し、
税区分を()内の課税or不課税にすれば消費税は自動で計算されます。
まとめ
今回は建設仮勘定について解説しました。
まとめると下記のようになります。
- 建設中の建物や製造中の機械は「建設仮勘定」
- 「建設仮勘定」は収益性が減価償却しない。
- 完成後に「建設仮勘定」から「建物」「機械」などに振り替える
- 手付金と工事に必要な資材も建設仮勘定になるが消費税の取り扱いが異なるため注意
「建設仮勘定」は簿記2級の範囲となりますが、消費税については出題されません。
実務で扱うのにご参考にして頂ければと思います。
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