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【収益認識】独立販売価格とは?わかりやすく解説

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2021年4月より

「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」の適用が開始されました。

収益認識では「独立販売価格」という用語が出てきます。

今回は独立販売価格について解説します。

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独立販売価格とは?

独立販売価格とは

財又はサービスを単独で顧客へ販売した場合の価格になります。

独立販売価格とは

財又はサービスを単独で顧客へ販売した場合の価格のこと

商品を販売する際にセットで販売すると「値引き」になることがあります。

この値引きを考慮せず、単独で販売した場合の価格が「独立販売価格」になります。

具体例

スマートフォンを購入するケースを例に解説します。

スマートフォンの販売価格が「5万円」のところ

通信回線とセットで販売した場合、

スマートフォンの販売価格が2万円値引きで「3万円」となるとします。

この場合の独立販売価格は5万円になります

■スマートフォンの販売価格

  • ①単独で購入した場合:5万円
  • ②通信回線契約とセットで購入した場合:3万円
    →①が独立販売価格となる。

セットで購入すると値引きされることがありますが、「独立販売価格」は単体で販売した場合の価格を指します。

独立販売価格と収益認識

収益認識は上記の5ステップで構成されいますが

「独立販売価格」はステップ④の「履行義務への取引価格の配分」で使用します。

取引価格を配分する際に、独立販売価格の比率に基づき配分を行います。

財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分する。

収益認識会計基準66項

独立販売価格の見積もり

下記のように「単独での販売価格(独立販売価格)」が明確なケースもありますが

■販売価格

  • ①単独で購入した場合:5万円
  • ②他の契約とセットで購入した場合:3万円
    →①が独立販売価格となる。

セット販売しかしていない場合、独立販売価格が不明となります。

■販売価格

  • ①単独で購入した場合:?円
  • ②他の契約とセットで購入した場合:3万円
    →①が独立販売価格となる。

セット販売しかしていない場合、単独で購入した時の販売価格がわかりません。

この場合、独立販売価格の見積もりを行います。

独立販売価格の見積もり方法は下記の3種類があります。

【独立販売価格の見積もり方法】

(1)調整した市場評価アプローチ

財又はサービスが販売される市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格を見積る方法

(2)予想コストに利益相当額を加算するアプローチ

履行義務を充足するために発生するコストを見積り、当該財又はサービスの適切な利益相当額を加算する方法

(3)残余アプローチ

契約における取引価格の総額から契約において約束した他の財又はサービスについて観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積る方法。

(収益認識適用指針31項)

(1)調整した市場評価アプローチ

同業他社が、同じ商品を独立して販売した場合の取引価格

を参考として算出する方法です。

(2)予想コストに利益相当額を加算するアプローチ

履行義務を充足するために発生するコストを項目ごと(労務費や経費など)

に積み上げそれに適切な利益相当額を加算する方法です。

(3)残余アプローチ

契約における取引価格の総額から、

他の観察可能な独立販売価格の合計額を引き算して、差額で求める方法です。

ただし残余アプローチは下記①②のいずれか該当する場合に限り使用できます。

(3)残余アプローチの使用条件

  • ①同一の財又はサービスを異なる顧客に同時又はほぼ同時に幅広い価格帯で販売していること
  • ②当該財又はサービスの価格を企業が未だ設定しておらず、当該財又はサービスを独立して販売したことがないこと(すなわち、販売価格が確定していない。)

上記①②に当てはまらない場合は「残余アプローチ」を用いることができません。

「観察できる」とは?

明白・明らかという意味合いになります。

「独立販売価格を直接観察できる」とは

独立販売価格が明らか、見積もらなくても金額がわかる状態のことです。

ポイント制度の独立販売価格の影響

ポイント制度を導入している場合、

独立販売価格の見積もりに大きく影響します。

顧客へ商品を販売したとき、顧客へポイントを付与するケースがあります。

このポイント制度も独立した履行義務として判断された場合

このポイント部分の独立販売価格の見積もりが必要となっていきます。

一般的にポイントカードのようなものです。

ポイント制度の見積もり方法

例えば、1P=1円で顧客へ1,000ポイント付与した場合

独立販売価格が1,000円になる訳ではありません。

付与したポイントが将来すべて利用されるとは限らないため

過去の実績から利用率を算出し、それにポイント付与額を掛けて独立販売価格を算出します。

例えば

仮に利用率を90%とした場合は、独立販売価格は

1,000P×1円×90%=900円となります。

↓新収益認識基準による「ポイント制度」についての詳細は下記をご覧ください。

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取引価格の配分の例題

取引価格の配分は、独立販売価格の比率に基づき配分を行います。

財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分する。

収益認識会計基準66項

次に実際に取引価格の配分を行う方法を例題に沿って解説します。

例題

当社は下記2つを1つとした契約を締結し8,000円で販売した。

  • 商品Aの販売
    (独立販売価格7,000円)
  • 保守サービスの提供
    (独立販売価格3,000円)

上記2つはそれぞれ別個の履行義務とされている。

この場合の「履行義務への取引価格の配分」について求めなさい

(解答)

  • 商品A:5,600円
  • 2年間の保守サービス:2,400円

(解説)

問題文より独立販売価格は下記のようになります。

  • 商品A:7,000円
  • 2年間の保守サービス:3,000円

取引価格8,000円から下記のように配分します。

商品A:

8,000×7,000/(7,000+3,000)=5,600円

保守サービス:

8,000×3,000/(7,000+3,000)=2,400円

取引価格の配分はステップ4になります。

まとめ

今回は【独立販売価格】について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 独立販売価格とは財又はサービスを単独で顧客へ販売した場合の価格のこと
  • 収益認識基準の「ステップ4:取引価格の配分」では独立販売価格の比率に基づき取引価格を配分する。(基準66項)
  • 独立販売価格の見積もり方法は下記の3種類である。(適用指針31項)
    • (1)調整した市場評価アプローチ
    • (2)予想コストに利益相当額を加算するアプローチ
    • (3)残余アプローチ

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