経理の実務で税効果会計に携わっていると、必ずと言っていいほど直面する高い壁が
「評価性引当額(ひょうかせいひきあてがく)」です。
決算の時期になると、監査法人から「今年の回収可能性の判断はどうなりますか?」「評価性引当額の増減分析を出してください」と言われて戸惑った経験がある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、経理初心者の方に向けて「評価性引当額とは何か?」から、
実務で必須となる「会社分類(分類1〜5)」、
そして決算書に与えるインパクトまでをわかりやすく解説します。
↓税効果会計の基本や、数字がズレる要因である「税率差異」については、先に下記の記事をご覧ください。
「評価性引当額」とは?
評価性引当額とは税効果会計において、
将来の税金負担を減らす効果(回収可能性)がないと
判断された「繰延税金資産」の金額のことです。
- 税効果会計では、会計と税務の一時差異を調整し、将来税金が安くなる権利を「繰延税金資産」として貸借対照表(B/S)に計上します。
- しかし、この資産は「将来、会社が黒字(課税所得がある)になって税金を払うこと」が前提となっています。
仮に会社が赤字で今後も課税所得(≒利益)がない状態が続くのであれば
税金を支払うことがないため、将来の税金負担を減らす効果(回収可能性)がないと判断されます。
これが「評価性引当額」です。
回収可能性の判断(会社分類)
では、将来の利益をどうやって見積もるのでしょうか?
経理担当者の「たぶん来年は黒字になります!」という勘だけで決めることはできません。
税効果会計のルール(適用指針)では、
過去の業績や将来の事業計画をもとに、
会社を5つのパターン(分類1〜5)に当てはめて機械的に判断することが求められます。
5つの分類
分類1-5は下記のように区分されます。
- 分類1
過去も未来もずっと大幅な黒字。
評価性引当額:ゼロ(繰延税金資産は全額計上できる) - 分類2
業績は安定しており、通常の黒字が出ている。
評価性引当額:スケジューリング(いつ差異が解消するか)できるものは原則ゼロ。 - 分類3
黒字と赤字を繰り返していたり、利益が不安定。
評価性引当額:おおむね5年以内に見込まれる利益の範囲内だけ資産計上し、超えた分は引当額にする。 - 分類4
過去3年以内に大きな赤字(税務上の欠損金)を出している。
評価性引当額:翌1年間に見込まれる利益の範囲内だけ資産計上し、残りはすべて引当額にする。 - 分類5
毎年ずっと赤字を垂れ流している状態。
評価性引当額:全額。繰延税金資産は一切計上できない。
この分類1-5については下記の記事で詳しく解説しております。
税率差異との関係
有価証券報告書などに記載する「税率差異の注記」において、
評価性引当額の増減は最大の差異要因になります。
法定実効税率が30%なのに、
実際の税負担率が70%や100%になってしまうようなケースでは
この「評価性引当額の増加」が原因であることがあります。
↓税率差異の注記の書き方や、他の差異要因(交際費など)との違いについては、こちらの記事で具体例を用いて解説しております。

税率差異の要因の1つに「評価性引当額の増加」があるということです。
一時差異なのになぜ税率差異(注記)に反映させるケースはあるのか?
一時差異(繰延税金資産)を計上しているにもかかわらず、
税率差異の注記に影響が出るケースも存在します。
税率変更(税制改正)があった場合
最も一般的なケースです。
繰延税金資産は「解消(支払い)が見込まれる年度」の税率で計算します。
具体例:
状況: 期末に税制改正が決まり、次期の税率が 30% から 28% に下がることが確定した。
影響: 前期末に計上していた賞与引当金の繰延税金資産を、新しい税率(28%)で再評価する必要があります。
- この「再評価による減少分」は、当期の法人税等調整額(費用)として処理されます。
- 注記: 税引前利益に法定実効税率(当期分30%)を掛けた計算結果と、実際の税金費用の間に「税率変更による影響」として差異が表示されます。
評価性引当額の変動
賞与引当金などで一時差異が発生していても、その全額が「将来の税金を減らす効果がある」と認められない場合です。
具体例:
状況: 賞与引当金が1,000円あり、繰延税金資産を300円計上したが、会社の業績が悪く、将来の利益(課税所得)が足りないと判断して「評価性引当額」を50円設定した。
影響: 帳簿上の繰延税金資産は250円になります。
- 注記: 「評価性引当額の増減」という項目で、法定実効税率との差異として計上されます。

一時差異があるのに税率差異が出るパターンはこのようなケースがあります。
まとめ
今回は税効果会計の「評価性引当額」について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 評価性引当額とは、将来回収できないと見込まれる繰延税金資産のこと。
- 計上するかどうかは、会社の過去と未来の業績による「会社分類(1〜5)」で決まる。
- 評価性引当額が増減すると、P/Lの税金費用が大きく変動し、「税率差異」の最大の原因になる。




