今回は【金融所得課税・1億円の壁・超富裕層ミニマム税】について解説します
金融所得課税とは?
金融所得課税とは、株式・預金などの金融商品から得た利益にかかる税金のことになります。
配当金・利子・株式譲渡益などに対して税金を徴収します。
金融所得課税と累進課税制度の税率
金融所得課税と累進課税制度の税率の違いについて説明します。
累進課税制度
給与所得や事業所得などの税率は累進課税制度が適用されます。
累進課税制度とは、所得が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みです。
上記は所得税の税率で、さらに別途住民税が徴収されます。
金融所得課税
これに対して金融所得課税の税率は
一律20.315%になります。
所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%の計20.315%になります
累進課税制度の場合、所得が多ければ多いほど税率が高くなり、
税率は最大55%(所得税45%+住民税10%)となります。
これに対して株式譲渡益などの金融所得税の場合、一律20.315%となります
1億円の壁
ここで問題視されているのが「1億円の壁」です。
累進課税制度の場合、所得が多ければ多いほど税率が高くなっておりますが
下記の資料によると所得が年間1億円を超えると税率が低くなるという問題が起きております。
これが1億円の壁です。
年間の所得が1億円を超える人の大半は株式譲渡所得の割合が多くなります。
そうなると、株式譲渡所得の場合の税率は一律20.315%のため
税率が最大55%の累進課税制度と比較すると低くなります。
株式譲渡所得の割合が多ければ多いほど、税率が下がってしまうということです
累進課税制度は所得格差の緩和が目的で導入されていますが
これでは所得格差の拡大へ繋がってしまうという問題が発生します。
この問題を解決するため、超富裕層ミニマム税の導入が開始されます。
超富裕層ミニマム税とは?
令和5年度税制改正法案で「極めて高い水準の所得に対する負担の適正処置」が可決されました。
「超富裕層ミニマム税」「ミニマムタックス」とも呼ばれており、
本記事では超富裕層ミニマム税の名称で解説します。
超富裕層ミニマム税とは
超富裕層に最低22.5%の税負担を求める制度になります。
年間所得が3.3億円超の納税者において
3.3億円超の部分の所得に対する所得税額の割合が22.5%を下回る場合
22.5%との差額分を追加課税する仕組みになります。
名前の通り超富裕層向けによる税制改正となります。
なぜ22.5%なのか?
所得税の最大税率は45%になります。
これの半分は納税してくださいという意味合いから
45%÷2=22.5%となります。
適用時期
超富裕層ミニマム税の適用時期は2025年1月からとなります。
超富裕層ミニマム税の導入による影響
超富裕層ミニマム税に影響が出る対象者は下記になります。
- 年間の合計所得が30億円以上
または - 年間の株式譲渡益が10億円以上
現時点の対象者は200-300人ほどで対象者は極めて少ないかたちになります。
具体例
超富裕層ミニマム税による納税額の影響について具体例をだして解説します。
(解答)
- 導入前:1億5000万円
- 導入後:1億5075万円
- →差額:75万円
【超富裕層ミニマム税の導入前】の所得税
- 10億円×15%=1億5000万円
【超富裕層ミニマム税の導入後】の所得税
- (10億円-3.3億円)×22.5%=1億5075万円
金融所得課税の今後の行方
超富裕層ミニマム税の導入により、所得格差の拡大を抑える仕組みとなっております。
しかし上記の対象となるのは現時点で200-300人ほどしかいません。
今後の流れとしては、超富裕層ミニマム税の
3.3億円の基準が下げたり、税率22.5%を上げることで
対象者を広げる動きとなることが予測されます。
まとめ
今回は【金融所得課税・1億円の壁・超富裕層ミニマム税】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 金融所得課税は、株式・預金などの金融商品から得た利益にかかる税金のこと
- 給与所得や事業所得などの税率は累進課税制度が適用されている。
- 税率は最大55%(所得税45%+住民税10%)である。
- これに対して金融所得課税は一律20.315%となる。
- 所得が年間1億円を超えると税率が低くなるという問題があり、これを「1億円の壁」と呼ばれている。
- 所得格差の拡大を抑えるため、超富裕層ミニマム税が2025年1月より導入される。