今回は【事業所税】の計算方法について解説します。
また似たような名前で「事業税」という税金もありますが
こちらは全く別の税金になります。
↓事業税(法人事業税)については下記で解説しております・
事業所税とは?
事業所税は、一定の規模の法人・個人に課せられる地方税で
都市環境の整備及び改善に関する事業の財源にあてるための税金となります。
納付期限
【個人の場合】
事業を行った年の翌年3月15日まで
【法人の場合】
事業年度終了の日から2か月以内
納税の対象地域
事業所税は地方税になりますが、全ての地域が対象となる訳ではありません。
対象となる地域は下記になります。
【事業所税の対象となる地域】
- 東京都23区
- 人口30万人以上の都市や政令指定都市など
事業所税は全ての地域が対象となる訳ではありません。
事業所税の種類
事業所税は「資産割」「従業者割」の2つで構成されております。
事業所税は、一定規模以上の事業を行っている事業主に対して課税される税金で、
「事業所等の床面積を対象とする資産割」と
「従業者の給与総額を対象とする従業者割」とに分かれます。
東京都主税局ホームページ
つまり、課税対象となるものは下記2つになります。
納税の対象者(免税判定)
ただし一定の規模以上の事業者が対象となり、対象地域でも
全ての事業者が対象となる訳ではありません。
【免税判定】
- 合計事業所床面積が1,000㎡以下の場合は免税(資産割)
- 合計従業者数が100人以下の場合は免税(従業者割)
免税とは、税金を免除するという意味です。
またどちらか片方でも課税対象であれば、申告及び納付は必要となります。
例題
(解答)
必要
- 資産割→必要
- 従業者割→不要
(解説)
資産割は800㎡以下だが、
従業者割は80人以上のため申告が必要となる。
また100人以上になるため、課税対象になる。
この場合、従業者割のみ計算し納付する必要があります。
アルバイトやパートタイマーの取り扱い
免税点を判定する場合の従業者の範囲:含めない
課税標準となる従業者給与総額の範囲:含める
■免税点を判定
合計従業者数が100人以下の場合は免税(従業者割)でとなりますが
ここではアルバイトやパートタイマーは従業員数として含めません
■課税標準の範囲
従業員数100人超えとなり免税対象外となった場合、
従業者給与総額にアルバイトやパートタイマーは従業員数として含めます。
アルバイトやパートタイマーの定義
アルバイトやパートタイマーとは、形式的な呼称ではなく
勤務の状態によって判定されます。
就業規則等で定められた 1 日の所定労働時間が正規従業者と比較して 4 分の 3 未満である
ものをいいます
アルバイトやパートタイマーは
就業規則等で定められた 1 日の所定労働時間が正規従業者と比較して 4 分の 3 未満を指す。
つまりフルタイムで勤務しているアルバイトは、正規従業者と同じ扱いになります。
事業所税の算出方法
上記に述べた通り、事業所税は
「資産割」「従業者割」の2つで構成されております。
それぞれの算出方法は下記になります。
【資産割】
合計事業所床面積(㎡)×600円
【従業者割】
従業者給与総額×0.25/100
例題に沿って下記で実際の計算方法を解説します。
非課税部分については後ほど説明します。
(解答)
事象所税の金額:1,620,000円
租税公課 (事業所税) | 1,620,000 | / | 未払事業所税 | 1,620,000 |
(解説)
まず事業所税は1,000㎡超え、従業員は100人越えのため
どちらも課税対象となります。
〇資産割:
1,200㎡×600円=720,000円
〇従業者割:
360,000,000×0.25/100=900,000円
〇合計:
720,000+900,000=1,620,000円
事業所税は上記のようにしてを算出します。
みなし共同事業について
事業所税は下記のように、面積1,000㎡以下・従業員100名以下の場合は免税となり申告も不要となります。
【免税判定】
- 合計事業所床面積が1,000㎡以下の場合は免税(資産割)
- 合計従業者数が100人以下の場合は免税(従業者割)
しかし、同一の建物に2つ以上の法人が存在し、それらが
同族会社などの特殊関係者であれば、それらの法人の
面積および従業員数を合算させた数値で免税判定を行います。
これが「みなし共同事業」です。
例題
(解答)
課税対象となる。
A社の事業所税:360,000円
(解説)
A社単体で見れば600㎡のため申告不要になりますが、
同じビル内に特殊関係者に該当するB社(500㎡)が存在します。
この場合、みなし共同事業に該当し、A社とB社の合計面積で免税判定を行います。
A社600㎡+B社500㎡=1,100㎡
1,000㎡超えのため、課税対象となります。
ただし、免税判定は1,100㎡ですが、
A社の事業所税の金額は600㎡(A社の面積)より算出します。
600㎡×600円=360,000円
なぜみなし共同事業の判定が必要なのか?
これは分社化による免税を防ぐためと思われます。
みなし共同事業の詳細について
上記で「みなし共同事業」について説明しましたが、
みなし共同事業は少し複雑な部分もあり、
特殊関係者の範囲も上記に書かれた内容以外にもありますので
詳しくは東京都主税局の「事業所税の手引き」をご覧ください。
他の自治体でも「事業所税の手引き」はありますので、詳細については対象の地域の手引きをご参照ください。
非課税部分について
【資産割】について
事業所床面積のうち、
食堂、売店などの福利厚生施設については非課税となります。
【従業者割】について
従業員給与のうち、
65歳以上の者や、障害者の給与は従業者給与総額から控除することができます。
つまり上記に該当する分だけ納める税金を少なくすることが可能ということです。
これらの非課税部分や控除に関しての
詳細は「事業所税の手引き」をご覧ください。
共用床面積について
事業所税の「資産割」は事業所床面積を元に算出しますが
事業所の床面積は主に下記ようなものがあります。
【事業所の床面積】
- 専用面積
- 共用面積
専用面積とは?
専用面積とは、ビルや建物内などで
その事業者が事業のために専用で使用している部分のことをいいます。
賃貸借契約においては、一般的には契約床面積に相当します
共用面積とは?
共用面積とは、共用のロビー、廊下、通路、エレベーター、階段、機械室などのことをいいます。
共用面積の計算
共用床面積は、入居者の専用床面積の割合に応じて按分し算出します。
(解答)
- (1)共用面積:500㎡
- (2)事業所床面積:1,200㎡
- (3)資産割:720,000円
(解説)
(1)共用面積:
共用面積は全体の専用面積から按分して算出します。
共用面積5,000×当社の専用面積700/全体の専用面積7,000
=500㎡
(2)事業所床面積:
専用面積700+共用面積500=1,200㎡
(3)資産割:
1,000㎡超えのため課税対象となる。
1,200㎡×600円=720,000
専用面積だけだと課税対象とならないが、共用面積含めると課税対象となる場合もあるので注意しましょう。
事業所税と事業税の違い
事業所税と事業税は名前は似ていますが、全く異なる税金になります。
【業所税と事業税の違い】
- 事業所税→租税公課
- 事業税→法人税等
事業所税は上記で述べた通りですが
事業税は「法人事業税」とも呼ばれ、法人税等に含まれるもので
課税所得(税法上の利益)から一定の税率を掛けて算出します。
事業所税は税効果会計の適用あり
事業所税は、原則的に申告書を提出した事業年度に損金算入が認められます。
事業所税は法人であれば
事業年度終了の日から2か月以内に申告して納付します。
しかし、会計上はその事業年度で事業所税を計上します。
例えば3月決算であれば
3月決算の場合
- 3/31事業所税の計上
- 5/31までに申告および納付
会計上は3月に計上しますが、税法上は申告書を提出した
5月に損金(税法上の費用)として認められます。
3月決算の場合
- 会計上→3月に費用計上
- 税法上→5月に損金計上
※税法上は3月の損金計上は認められない。
そのため、損金不算入の一時差異が発生するため
3月決算の法人税申告書上では
別表四で税務加算(留保)する必要があります。
また一時差異のため、税効果会計の適用となります。
税効果会計に関しては上記の記事をご参照ください。
まとめ
今回は「事業所税」の計算方法について解説しました。
【免税判定】
- 合計事業所床面積が1,000㎡以下の場合は免税(資産割)
- 合計従業者数が100人以下の場合は免税(従業者割)
【資産割】
合計事業所床面積(㎡)×600円
【従業者割】
従業者給与総額×0.25/100