今回は工業簿記の
本社工場会計について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
本社工場会計とは?
本社工場会計とは、
「本社」と「工場」の帳簿を分ける会計をいいます。
企業規模が大きくなったり、工場が遠隔地にある場合
工場の会計を本社の会計から独立させて、工場にも帳簿を設置することがあります。
工場の経理は、製造に関する会計を行い、
本社の経理は、それ以外の会計を行うことで業務を分担することができます。
【工場で用いる勘定科目】
材料・賃金・経費・仕掛品・製造間接費・製品など
製品の製造活動に用いられる勘定科目
【本社で用いる勘定科目】
上記以外
現金・買掛金・売掛金・売上原価など
工場勘定と本社勘定
工場会計を独立させた場合
「本社」と「工場」の取引は
「工場」勘定と「本社」勘定を用いて行います。
- 「工場」勘定
(本社の帳簿で使用) - 「本社」勘定
(工場の帳簿で使用)
商業簿記の「本支店会計」と似たようなイメージです。
本社工場会計の仕訳
本社工場会計の仕訳について
下記の例題に沿って解説していきます。
材料の購入
本社: | 工場 | 500 | / | 買掛金 | 500 |
工場: | 材料 | 500 | / | 本社 | 500 |
[本社]の仕訳
材料の支払いを行うのは本社のため、買掛金は本社で計上します。
その材料は工場が受け入れたため、相手勘定は「工場」となります。
[工場]の仕訳
材料は工場が受け入れたため、材料は工場で計上します。
材料の支払いは本社が行うため、相手勘定は「本社」となります。
材料の消費
本社: | 仕訳なし | ||||
工場: | 仕掛品 | 300 | / | 材料 | 400 |
製造間接費 | 100 | / |
[本社]の仕訳
材料の消費は工場で行う処理のため
本社側では仕訳なしとなります。
[工場]の仕訳
材料を消費した場合、その材料は下記のように振り替えます。
- 直接材料費の場合→「仕掛品」
- 間接材料費も場合→「製造間接費」
このように工場のみの仕訳の場合、「本社」勘定や「工場」勘定は用いません。
製品の完成
本社: | 仕訳なし | ||||
工場: | 製品 | 300 | / | 仕掛品 | 300 |
[本社]の仕訳
製品の製造は工場で行うため
本社側では仕訳なしとなります。
[工場]の仕訳
完成した製品は仕掛品→製品へ振り替えます。
製品の販売
本社: | 売上原価 | 300 | / | 工場 (製品) | 300 |
売掛金 | 500 | / | 売上 | 500 | |
工場: | 本社 (売上原価) | 300 | / | 製品 | 300 |
[本社]の仕訳
本社で製品の販売を行うことで製品→売上原価へ振り替えます。
ただし製品は工場で扱っている勘定科目のため、
売上原価の相手勘定は「工場」となります。
また、それと同時に売上の計上を行います。
[工場]の仕訳
製品を販売することで、工場の製品を減少させます。
販売活動を行うのは本社のため、相手勘定は「本社」となります。
また売上の計上も本社で行います。
製造活動の仕訳は工場で
販売活動の仕訳は本社で行います。
工場建物の減価償却費
本社: | 工場 | 1,000 | / | 減価償却累計額 | 1,000 |
工場: | 製造間接費 | 1,000 | / | 本社 | 1,000 |
[本社]の仕訳
減価償却費である製造間接費は工場で用いる科目のため
「工場」を用います。
また減価償却費累計額は本社で扱う勘定科目となります。
工場では製造活動による勘定科目のみ帳簿に設置されているため、減価償却累計額は本社で用います。
[工場]の仕訳
経費を消費したときは下記のように処理します。
- 直接経費は「仕掛品」
- 間接経費は「製造間接費」
減価償却費は間接経費のため「製造間接費」となります。
また相手科目である減価償却累計額は本社で用いるため「本社」勘定で計上します。
工場勘定と本社勘定の残高
工場勘定と本社勘定の残高は
貸借逆で必ず一致します。
これは本支店会計の「本店」勘定と「支店」勘定と同じイメージです。
まとめ
今回は工業簿記の本社工場会計について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 本社工場会計とは、「本社」と「工場」の帳簿を分ける会計をいう。
- 「本社」と「工場」の取引は「工場」勘定と「本社」勘定を用いて行う。
- 「工場」勘定
(本社の帳簿で使用) - 「本社」勘定
(工場の帳簿で使用)
- 「工場」勘定
【工場で用いる勘定科目】
材料・賃金・経費・仕掛品・製造間接費・製品など
製品の製造活動に用いられる勘定科目
【本社で用いる勘定科目】
上記以外
現金・買掛金・売掛金・売上原価など
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