今回は工業簿記の
直接原価計算②固定費調整について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
固定費調整とは?
固定費調整とは、
「直接原価計算の営業利益」を「全部原価計算の営業利益」へ修正することです。
財務諸表に記載する営業利益は、[全部原価計算の営業利益]でなければなりません。
[直接原価計算]は外部へ報告する財務諸表としては認められません。
そのため[直接原価計算]で営業利益を求めた場合は[全部原価計算の営業利益]へ修正する必要があります。
全部原価計算と直接原価計算の営業利益の差額
[全部原価計算]と[直接原価計算]の営業利益の差額はなぜ発生するのでしょうか?
それは「固定製造原価」の取り扱いが異なるためです。
【全部原価計算】
[固定製造原価]の金額は販売数量によって変動する
【直接原価計算】
[固定製造原価]の金額は販売数量に関係なく、全額計上する
↓こちらの詳しい解説は下記をご参照ください
固定費調整の方法
上記で[全部原価計算]と[直接原価計算]の営業利益の差額について説明しました。
この差額は、全部原価計算の
在庫(期首仕掛品・期末仕掛品・期首製品・期末製品)に含まれている固定製造原価
によって営業利益と差額が生じております。
そのため
[直接原価計算の営業利益]に在庫に含まれる固定製造原価を加減させることで、
[全部原価計算の営業利益]に修正することができます。
これが固定費調整です。
固定費調整の計算式
例題
(解答)
(解説)
まず直接原価計算の損益計算書を作成し、
それを元に固定費調整を行い、[全部原価計算の営業利益]を算出します。
直接原価計算の営業利益
〇製造原価の算出
- 直接材料費@30×100個=3,000円
- 変動加工費@20×100個=2,000円
→計:5,000円
月初仕掛品・月末仕掛品は0個のため
完成品原価5,000円となる。
〇変動売上原価の算出
完成品100個(5,000円)のうち、90個販売したため
- 期末:5,000円÷10個/100=500円
- 販売:5,000-期末500=4,500円(変動売上原価)
〇まとめ
- 売上高@100×90個=9,000円
- 変動売上原価:4,500円
- 変動販売費@10×90個=900円
- 固定費
- 固定製造原価(固定加工費)2,000円
- 固定販売費・一般管理費1,000円
営業利益:9,000-4,500-900-2,000-,1000=600円
固定費調整
固定費調整は下記のような計算式を行います。
今回の問題では、固定加工費が固定製造原価となります。
〇期首仕掛品・期末仕掛品
問題文(1)生産データは[仕掛品]を示しています。
期首・期末は0個のため
期首・期末仕掛品に含まれる固定製造原価は0円となります。
〇期首製品・期末製品
問題文(2)販売データは[製品]を示しています。
期首製品は0個ですが期末製品は10個となります。
そのため期末製品に含まれる固定製造原価(固定加工費)は下記のようになります。
- 期末:2,000円÷10個/100=200円
この期末製品200円が固定費調整の項目になります。
全部原価計算の営業利益=直接原価計算の営業利益600+期末製品200-期首製品0=800円
このように[全部原価計算の営業利益]は[直接原価計算の営業利益]から[固定費調整]することによって算出することが出来ます。
補足
上記の例題について
[直接原価計算の営業利益]600円から
固定費調整によって[全部原価計算の営業利益]は800円と算出することが出来ました。
全部原価計算の損益計算書を作成する場合でも
営業利益は800円となります。
全部原価計算の損益計算書
(解答)
(解説)
〇製造原価の算出
- 直接材料費@30×100個=3,000円
- 加工費@20×100個+固定加工費2,000円=4,000円
→計:7,000円
月初仕掛品・月末仕掛品は0個のため
完成品原価7,000円となる。
〇売上原価の算出
完成品100個(7,000円)のうち、90個販売したため
- 期末:7,000円÷10個/100=700円
- 販売:7,000-期末700=6,300円(売上原価)
〇まとめ
- 売上高@100×90個=9,000円
- 売上原価:6,300円
- 販売費および一般管理費
- 変動販売費@10×90個=900円
- 固定販売費・一般管理費1,000円
→計:1,900円
まとめ
今回は工業簿記の直接原価計算②固定費調整について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
- 固定費調整とは「直接原価計算の営業利益」を「全部原価計算の営業利益」へ修正すること
- 下記のような計算式で「直接原価計算の営業利益」から「全部原価計算の営業利益」を算出することができる。
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