今回は工業簿記の
組別総合原価計算の平均法・先入先出法について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
総合原価計算とは?
「総合原価計算」とは同一商品を大量生産する場合に用いられる原価計算です。
一定期間にかかった費用に数量で割って1単位ごとの原価を算出します。
組別総合原価計算とは?
「組別総合原価計算」とは、同じ作業工程で、2つ以上の異種製品を大量生産する場合の原価計算をいいます。
組別総合原価計算では製品の種類のことを「組」と呼びます。
組別総合原価計算の例
例えば、同じ作業工程で
[木製の机]と[スチール製の机]を製造しているといます。
上記2つは異なる製品のため、本来は別々で原価計算しますが
同じ作業工程で製造しているため、共通して発生する原価があります。
それを何かしらの基準で各製品へ振り分け、原価計算をした方が計算の手間が省けます。
このように、同じ作業工程で、2つ以上の異種製品を大量生産する場合に適用される原価計算が「組別総合原価計算」となります。
図解
組直接費と組間接費の分類
組別総合原価計算では、下記のように
組直接費と組間接費に分類します。
組直接費
「組直接費」とはどの製品にかかった費用か明らかなものです。
上記で説明した[木製の机]と[スチール製の机]を製造を例にすると
下記が組直接費となります。
- 木材
- スチール板
木材を用いて[木製の机]を
スチール板を用いて[スチール製の机]を製造するため
どの製品にかかった費用か明らかになります。
組直接費は、各製品に個別で賦課(直課)します。
組直接費は[直接材料費][直接労務費][直接経費]が該当します。
組間接費
「組間接費」とはどの製品にかかった費用か不明確なものです。
上記で説明した[木製の机]と[スチール製の机]を製造を例にすると
下記が組間接費となります。
- 机を製造する工員の賃金
机を製造する工員が[木製の机]と[スチール製の机]を製造します。
そのため、この賃金は[木製の机]と[スチール製の机]どちらの費用か不明確となります。
組間接費は、何かしらの基準によって各製品へ配賦します。
組間接費は[製造間接費]が該当します。
組別総合原価計算の計算方法
組別総合原価計算は下記のようにして計算します。
【組別総合原価計算の計算方法】
- 組直接費は各製品へ賦課(直課)する。
- 組間接費は何かしらの基準によって各製品へ配賦する。
- 各製品の原価計算を行う。
例題
組別総合原価計算も、総合原価原価計算と同じく
[先入先出法]と[平均法]があります。
今回はA組製品は平均法、B組製品は先入先出法という例題で解説します。
(解答)
[A組製品]
- 月末仕掛品原価:1,750円
- 完成品総合原価:4,100円
- 完成品単位原価:@41円
[B組製品]
- 月末仕掛品原価:1,540円
- 完成品総合原価:2,820円
- 完成品単位原価:@47円
(解説)
まず、組間接費の配賦を行い
それを元にA組製品(平均法)とB組製品(先入先出法)の原価計算を行います。
【解答の手順】
- 組間接費の配賦
- A組製品(平均法)の原価計算
- B組製品(先入先出法)
組間接費の配賦
A組製品=2,000円×140/200時間=1,400円
B組製品=2,000円×60/200時間=600円
上記の配賦により問題文の?円の金額は下記になります。
- A組製品の加工費:1,400円
- B組製品の加工費:600円
A組製品(平均法)
平均法の場合、
平均単価を求め、それを用いて[月末仕掛品][完成品総合原価]を計算します。
【A組製品:直接材料費】
①月末仕掛品:
平均単価=(月初900+当月3,000)/(完成100+月末50)=@26
月末仕掛品=@26×月末数量50個=1,300円
②完成品:
月初900+当月3,000-月末1,300=2,600円
【A組製品:加工費】
①月末仕掛品:
- 月初数量30個×50%=15個(月初)
- 月末数量50個×60%=30個(月末)
当月数量:完成100+月末30–月初15=115個(当月)
加工費の場合、[当月数量]が変動するので注意しましょう。
平均単価=(月初550+当月1,400)/(完成100+月末30)=@15
月末仕掛品=@15×月末数量30個=450円
②完成品:
月初550+当月1,400-月末450=1,500円
【A組製品:合計】
①月末仕掛品:
直接材料費1,300+加工費450=1,750円
②完成品総合原価:
直接材料費2,600+加工費1,500=4,100円
②完成品単位原価:
4,100円÷完成数量100個=@41円
B組製品(先入先出法)
先入先出法の場合、
[月末仕掛品]はすべて[当月投入分]から発生したとして計算します。
【B組製品:直接材料費】
①月末仕掛品:
当月金額2,600円÷当月数量80個×月末40個=1,300円
②完成品:
月初800+当月2,600-月末1,300=2,100円
【B組製品:加工費】
①月末仕掛品:
- 月初数量20個×60%=12個(月初)
- 月末数量40個×80%=32個(月末)
当月数量:完成60+月末32–月初12=80個(当月)
加工費の場合、[当月数量]が変動するので注意しましょう。
月末仕掛品=当月金額600円÷当月数量80個×月末32個=240円
②完成品:
月初360+当月600-月末240=720円
【B組製品:合計】
①月末仕掛品:
直接材料費1,300+加工費240=1,540円
②完成品総合原価:
直接材料費2,100+加工費720=2,820円
②完成品単位原価:
2,820円÷完成数量60個=@47円
まとめ
今回は組別総合原価計算の平均法・先入先出法について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
- 「組別総合原価計算」とは、同じ作業工程で、2つ以上の異種製品を大量生産する場合の原価計算である。
- 組別総合原価計算では組直接費と組間接費に分類する
- 「組直接費」はどの製品にかかった費用か明らかなもの
- 「組間接費」はどの製品にかかった費用か不明確なもの
【組別総合原価計算の計算方法】
- 組直接費は各製品へ賦課(直課)する。
- 組間接費は何かしらの基準によって各製品へ配賦する。
- 各製品の原価計算を行う。
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