今回は工業簿記の
[総合原価計算②]先入先出法について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
総合原価計算とは?
「総合原価計算」とは同一商品を大量生産する場合に用いられる原価計算です。
一定期間にかかった費用に数量で割って1単位ごとの原価を算出します。
主に下記のような業種の会社が用いられます。
- 食品製造業
- 自動車製造業
- 電気製品製造業
- 化学工業
など
総合原価計算の計算方法
総合原価計算は下記のようにして
[完成品総合原価]と[完成品単位原価]を算出します。
直接材料費と加工費
総合原価計算では、製造原価を
直接材料費と加工費に分類して計算します。
【直接材料費】
ある製品にいくらかかったか明らかな材料費
【加工費】
直接材料費以外の原価
なぜ直接材料費と加工費を分けるのか?
なぜこのように分類するかというと
「直接材料費」と「加工費」で原価の発生の仕方が異なるからです。
直接材料費とは?
「直接材料費」は主に製品の材料となります。
(例)・・家具製造業における木材、パン製造業にける小麦粉・卵など
通常完成までに必要な量がすべて投入され、投入された時点ですべて消費します。
そのため加工の進捗に比例して、直接材料費が増加する訳ではありません。
試験問題では「材料はすべて工程の始点で投入する」という指示がつきます。
加工費とは?
上記に対して「加工費」は加工が進むにつれて発生する原価です。
(例)・・直接労務費である直接作業時間の賃金など
製品を製造を開始する時の賃金は0円ですが
加工の進捗に比例して賃金は増加します。
このように加工が進むことで増加する費用が「加工費」となります。
加工費の計算
加工費は製品の加工が進めば進むほど多く原価が発生します。
この加工の進捗を表したものを加工進捗度(%)といいます。
加工費の計算をする際は、[月初仕掛品]と[月末仕掛品]の数量に加工進捗度(%)を掛けて
「完成品換算量」を算出します。
月初仕掛品がある場合の計算方法
前回の記事では、総合原価計算の
月初仕掛品がない場合を解説しました。
[月初仕掛品]がある場合の計算方法は下記の2つがあります。
今回は「先入先出法」について解説します。
↓先入先出法と平均法の計算は[材料費]の時に学習した内容と考え方は同じになります。
総合原価計算:先入先出法
「先入先出法」は、先に投入したものから先に完成したと仮定して
[月末仕掛品]と[完成品総合原価]を計算する方法です。
月初仕掛品が「先に投入したもの」となります。
つまり、[月初仕掛品]から先に完成し、残り完成品は[当月投入分]となります。
そのため、[月末仕掛品]はすべて[当月投入分]から発生したとして計算します。
例題
(解答)
- 月末仕掛品原価:1,910円
- 完成品総合原価:4,980円
- 完成品単位原価:@49.8円
(解説)
先入先出法の場合、
[月末仕掛品]はすべて[当月投入分]から発生したとして計算します。
【直接材料費】
①月末仕掛品:
当月金額3,000円÷当月数量120個×月末50個=1,250円
②完成品:
月初900+当月3,000-月末1,250=2,650円
【加工費】
①月末仕掛品:
- 月初数量30個×50%=15個(月初)
- 月末数量50個×60%=30個(月末)
当月数量:完成100+月末30–月初15=115個(当月)
加工費の場合、[当月数量]が変動するので注意しましょう。
月末仕掛品=当月金額2,530円÷当月数量115個×月末30個=660円
②完成品:
月初460+当月2,530-月末660=2,330円
【合計】
①月末仕掛品:
直接材料費1,250+加工費660=1,910円
②完成品総合原価:
直接材料費2,650+加工費2,330=4,980円
②完成品単位原価:
4,980円÷完成数量100個=@49.8円
総合原価計算のボックス図
上記の例題をボックス図で表すと下記のようになります。
まず[月末仕掛品]を計算し、差額で[完成品総合原価]を算出します。
仕掛品勘定の記入
上記の例題を仕掛品勘定へ記入すると下記のようになります。
総合原価計算表の記入
上記の例題を総合原価計算表へ記入すると下記のようになります。
まとめ
今回は総合原価計算の先入先出法について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
【総合原価計算】
- 「総合原価計算」とは同一商品を大量生産する場合に用いられる原価計算である。
- 総合原価計算では、下記のような計算式で完成品総合原価を求める。
- 完成品総合原価=月初仕掛品原価+当月総製造原価-月末仕掛品原価
- 完成品単位原価=完成品総合原価÷当月完成数量
- 総合原価計算では、直接材料費と加工費に分類して計算します。
- 加工費は、月初・月末仕掛品に加工進捗度(%)を掛けることで完成品換算量を求めて解く
- 加工費の場合、当月数量も変動するので注意。
【先入先出法】
- 「先入先出法」は、先に投入したものから先に完成したと仮定して[月末仕掛品]と[完成品総合原価]を計算する方法である。
- [月初仕掛品]から先に完成し、残り完成品は[当月投入分]となるため、[月末仕掛品]はすべて[当月投入分]から発生したとして計算します。
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