工業簿記

標準原価計算②原価標準の計算

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今回は工業簿記の

標準原価計算②原価標準の計算について解説します。

※本記事は日商簿記2級の内容になります。

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標準原価計算とは?

「実際原価計算」と「標準原価計算」を比較して説明します。

実際原価計算

これまで学習した原価計算は

実際に発生した原価(実際原価)をもとに製品の原価を計算していました。

これを「実際原価計算」といいます。

標準原価計算

標準原価計算は、あらかじめ目標となる原価(標準原価)を決め

この標準原価をもとに製品の原価を計算する方法です。

標準原価計算の目的

標準原価計算では、標準原価を用いますが

これは無駄や非効率を省略した場合の原価です。

そのため、標準原価と実際原価を比較することで、無駄や非効率を改善することができます。

これが標準原価計算の目的です。

標準原価計算を取り入れることで、製造過程の中の非効率となる部分を把握することができます。

標準原価計算の流れ

標準原価計算は下記のような流れで行います。

【標準原価計算の流れ】

  1. 原価標準の設定
    製品1個あたりの標準原価を設定する
  2. 原価標準の計算
    原価標準にもとづいて[完成品原価]や[月末仕掛品原価]を計算する
  3. 実際原価の計算
    当月において実際にかかった[直接材料費][直接労務費][製造間接費]を計算する
    総合原価計算について
  4. 原価差異の計算、分析
    当月の実際原価と標準原価から原価差異を計算し、その原因を分析する
    〇原価差異の計算
    原価差異の計算
    パーシャル・プランとシングル・プラン
    原価差異の分析
    直接材料費差異・直接労務費差異
    製造間接費差異|シュラッター図
  5. 原価報告
    原価差異の内容を経営管理者に報告し、必要に応じて原価の改善を行う

今回解説する内容は

原価標準の計算になります。

標準原価の計算

前回の【①原価標準の設定】では、下記のように

製品1個あたりの目標原価を求めました。

標準原価カード

標準原価の計算」ではこれをもとに下記を算出します。

  • 月初仕掛品原価
  • 当月標準製造費用
  • 完成品原価
  • 月末仕掛品

完成品原価の計算

完成品原価は、標準原価を用いて下記のように計算します。

完成品原価の計算
  • 完成品原価=@標準原価(円)×完成品数量(個)

※@標準原価(円)=製品1個あたりの標準原価

月初・月末仕掛品の計算

月末仕掛品・月初仕掛品は、標準原価を用いて下記のように計算します。

月初・月末仕掛品の計算
  • 標準直接材料費=@標準原価(円)×仕掛品数量(個)
  • 標準直接労務費=@標準原価(円)×完成品換算量(個)
  • 標準製造間接費=@標準原価(円)×完成品換算量(個)

※@標準原価(円)=製品1個あたりの標準原価

完成品換算量(個)=数量×加工進捗度(%)

[標準直接労務費][標準製造間接費]は加工費に分類されるため

加工進捗度を加味して完成品換算量で計算します。

直接材料費と加工費

【加工進捗度とは?】

加工進捗度とは作業の進捗度のことです。
完成品を100%とした時の仕掛品の進捗度(%)のことを意味します。 

【完成品換算量とは?】

完成品換算量とは、仕掛品に掛かった加工費は完成品何個当たりに相当するかを算定するための計算上の数量のことです。

当月標準製造費用の計算

当月標準製造費用は、標準原価を用いて下記のように計算します。

当月標準製造費用の計算
  • 標準直接材料費=@標準原価(円)×仕掛品数量(個)
  • 標準直接労務費=@標準原価(円)×完成品換算量(個)
  • 標準製造間接費=@標準原価(円)×完成品換算量(個)

※@標準原価(円)=製品1個あたりの標準原価

完成品換算量(個)=数量×加工進捗度(%)

仕掛品と同様に[標準直接労務費][標準製造間接費]は加工費に分類されるため

加工進捗度を加味して完成品換算量で計算します。

また、この[当月標準製造費用]は、

原価差異を計算する際に実際原価と比較するために用いられます。

例題

下記で例題に沿って解説します。

例題

次の資料にもとづき、下記を求めなさい。

なお当社は標準原価計算を採用している。

  • 完成品原価
  • 月末仕掛品原価
  • 月初仕掛品原価
  • 当月標準製造費用

【資料】

(1)生産データ

月初仕掛品30個
(50%)
当月投入120
合計150個
月末仕掛品50
(60%)
完成品100個
※()内の数値は加工進捗度

材料はすべて工程の始点で投入している。

(2)標準原価カード

標準原価カード

(解答)

  • 完成品原価:145,000
  • 月末仕掛品原価:51,500円
  • 月初仕掛品原価:27,750円
  • 当月標準製造費用:168,750円

完成品原価

@1,450円×完成品数量100個=145,000円

月末仕掛品原価

下記のように[直接材料費][直接労務費][製造間接費]に分けて計算します。

月末数量=50個

月末の完成品換算量=50個×加工進捗度60%=30個

  • 標準直接材料費=@400×50個=20,000円
  • 標準直接労務費=@450×30個=13,500円
  • 標準製造間接費=@600×30個=18,000円

51,500円

月初仕掛品原価

下記のように[直接材料費][直接労務費][製造間接費]に分けて計算します。

月初数量=30個

月初の完成品換算量=30個×加工進捗度50%=15個

  • 標準直接材料費=@400×30個=12,000円
  • 標準直接労務費=@450×15個=6,750円
  • 標準製造間接費=@600×15個=9,000円

計:27,750円

当月標準製造費用

下記のように[直接材料費][直接労務費][製造間接費]に分けて計算します。

当月数量=完成100+月末50-月初30=120個

当月の完成品換算量=完成100+月末30-月初15=115個

  • 標準直接材料費=@400×120個=48,000円
  • 標準直接労務費=@450×115個=51,750円
  • 標準製造間接費=@600×115個=69,000円

計:168,750円

[標準直接労務費][標準製造間接費]は完成品換算量へ換算するので注意しましょう。

補足

  • 完成品原価:145,000円
  • 月末仕掛品原価:51,500円
  • 月初仕掛品原価:27,750円
  • 当月標準製造費用:168,750円

上記の解答は下記のように一致します。

完成品+月末=月初+当月

完成品145,000+月末51,500=月初27,750+当月168,750

上記のように計算した後に検算すると、計算ミスを事前に防ぐことが出来るでしょう。

まとめ

今回は工業簿記の標準原価計算②原価標準の計算について解説しました。

要点をまとめると下記のようになります。

  • 標準原価計算は、あらかじめ目標となる原価(標準原価)を決め、この標準原価をもとに製品の原価を計算する方法である。
  • 標準原価計算は下記のような流れで行う。

【標準原価計算の流れ】

  1. 原価標準の設定
  2. 標準原価の計算
  3. 実際原価の計算
  4. 原価差異の計算、分析
  5. 原価報告

【②原価標準の計算】

  • 標準原価の計算」では標準原価カードをもとに下記を算出する。
    • 月初仕掛品原価
    • 当月標準製造費用
    • 完成品原価
    • 月末仕掛品
  • [直接労務費][製造間接費]は加工費となるため、完成品換算量(数量×加工進捗度)へ換算して計算する。

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