今回は工業簿記の
直接原価計算の[CVP分析③目標営業利益率を達成するための売上高]について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
CVP分析とは?
CVP分析とは下記の3つの関係を明らかにする分析をいいます。
- 原価(Cost)
- 生産・販売量(Volume)
- 利益(Profit)
それぞれの頭文字をとることで「CVP分析」と呼びます。
CVP分析と直接原価計算の損益計算書
直接原価計算では下記のような損益計算書を作成します。
CVP分析では、この直接原価計算の損益計算書を下記のように簡略化します。
- [変動売上原価]と[変動販売費]
→[変動費] - [固定製造原価]と[固定販売費および一般管理費]
→[固定費]
変動費率と貢献利益率
売上高から[変動費]を差し引くことで[貢献利益]が算出されます。
この[変動費]と[貢献利益]は販売量によって一定の割合で変動します。
この売上高に対する割合は一定という性質を用いて
下記のように変動費率と貢献利益率を求めることができます。
変動費と貢献利益について
これにより売上高をS円とした時は下記のように表すことができます。
- 変動費は0.7S円
- 貢献利益は0.3S円
また販売単価@100で、販売量をX個とした時は下記のように表すことができます。
- 変動費は@100円×0.7=70X円
- 貢献利益は@100×0.3=30X円
この[変動費]と[貢献利益]の表し方はCVP分析では非常に重要な考え方となりますので覚えておきましょう
日商簿記2級で学習するCVP分析
日商簿記2級で学習するCVP分析は下記になります。
今回解説するのは【目標営業利益率を達成するための売上高】になります。
目標営業利益率を達成するための売上高とは?
[目標営業利益率を達成するための売上高]とは売上高に対して達成したい営業利益率(%)を獲得するための売上高をいいます。
営業利益率●●%を獲得するには、売上高はいくら必要か?という内容です。
[目標営業利益率を達成するための売上高]を求める場合は
営業利益=売上高×目標営業利益率(%)の場合の直接原価計算の損益計算書を作成します。
目標営業利益=売上高(円)×目標営業利益率(%)
売上高について
売上高は下記のような計算式で算出されます。
目標売上高=@販売単価(円)×販売量(個)
このとき
売上高=S(円)
または
販売量=X(個)
とすることで[目標営業利益率を達成するための売上高]を算出することが出来ます。
例題
(解答)
- 売上高30,000円
- 販売量300個
解き方としては下記の2通りがあります。
【2つの解き方】
- 売上高をS(円)とする場合
- 販売量をX(個)とする場合
売上高をS(円)とする場合
- 変動費:@30円+@20円+@10円=@60円
- 変動費率:@60/販売単価@100=0.6
- 貢献利益率:1-0.6=0.4
- 固定費:2,000円+1,000円=3,000円
目標営業利益率30%のため下記のような計算式で営業利益となります。
売上高S×目標営業利率30%=0.3S(目標営業利益)
目標営業利益=売上高×目標営業利益率(%)
これを元に「営業利益=0.3S円」の時の売上高を算出します。
貢献利益率は0.4のため、
貢献利益は0.4S(円)となります。
これに固定費3,000円を差し引いた金額が営業利益となるため
下記のような計算式ができます。
0.4S(貢献利益)-3,000円(固定費)=0.3S円(目標営業利益)
これにより[売上高]と[販売量]が算出できます。
〇売上高の算出
0.4S-3,000円=0.3S円
0.1S=3,000
S=30,000円
〇販売量の算出
販売単価@100円のため
売上30,000÷@100=300個
販売量をX(個)とする場合
- 変動費:@30円+@20円+@10円=@60円
- 変動費率:@60/販売単価@100=0.6
- 貢献利益率:1-0.6=0.4
- 固定費:2,000円+1,000円=3,000円
目標営業利益率30%のため下記のような計算式で営業利益となります。
売上高(@100×X個)×目標営業利益30%=30X(目標営業利益)
※売上高=@販売単価×販売量(X個)
目標営業利益=売上高×目標営業利益率(%)
これを元に「営業利益=30X円」の時の売上高を算出します。
販売単価は@100円のため販売量をX個とした場合
売上高は100X円となります。
売上高=@販売単価(円)×販売量(個)
また変動費は
100X円×変動費率0.6=60X円
貢献利益は
100X円×変動費率0.4=40X円
となります。
これに固定費3,000円を差し引いた金額が営業利益となるため
下記のような計算式ができます。
40X(貢献利益)-3,000円(固定費)=30X(目標営業利益)
これにより[売上高]と[販売量]が算出できます。
〇販売量の算出
40X-3,000円=30X
10X=3,000
X=300個
〇売上高の算出
販売単価@100円のため
300個×@100=30,000円
CVP分析の公式
[目標営業利益率を達成するための売上高]を公式を使って求める場合には
以下の公式にあてはめて計算します。
この公式は覚えなくても問題は解けますが、覚えることで計算時間を短縮することができます。
まとめ
今回は直接原価計算の[CVP分析③目標営業利益率を達成するための売上高]について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- CVP分析とは下記の3つの関係を明らかにする分析のことである。
- 原価(Cost)
- 生産・販売量(Volume)
- 利益(Profit)
- [目標営業利益率を達成するための売上高]とは売上高に対して達成したい営業利益率(%)を獲得するための売上高のことである。
これの解き方としては下記の2通りがある。- 売上高をS(円)とする場合
- 販売量をX(個)とする場合
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