今回は工業簿記の
[部門別個別原価計算]の
補助部門の配賦(相互配賦法)について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
原価計算の流れ
原価計算は下記の3段階によって行われます。
今回解説する内容は
- 【第2段階:製造間接費の配賦】になります。
↓第1段階から第3段階までの「原価計算の流れ」については下記をご参照ください。
部門別個別原価計算とは?
「部門別個別原価計算」は
製造間接費の配賦を複数の部門別に行う個別原価計算をいいます。
上記の図解のように
「部門別個別原価計算」では
各製品へ配賦する前に、各部門へ配賦します。
部門別個別原価計算の流れ
[部門別個別原価計算]は下記のような流れで
製造間接費を配賦します。
【部門別個別原価計算の流れ】
- ①製造間接費を下記のように配賦する
- [部門個別費]を各部門へ賦課(直課)
- [部門共通費]を配賦基準を用いて各部門へ配賦
※各部門・・製造部門・補助部門
- ②[補助部門]に配賦された金額を[製造部門]へ配賦する。
配賦方法は下記の2通りである。- 直接配賦法
- 相互配賦法
- ③製造部門費を各製造指図書(製品No.1など)に配賦する。
※この時点で[仕掛品]へ振り替わる。
部門別個別原価計算では上記のような流れで製造間接費を配賦します。
今回解説するのは下記になります。
- ②補助部門の配賦[相互配賦法]
- ③製造部門費を各製造指図書に配賦する。
補助部門の配賦
前回の記事では[部門個別費と部門共通費の集計]を行いました。
上記のように[製造部門]と[補助部門]へ集計を行った後は
[補助部門]は各製造部門へ配賦する必要があります。
なぜ補助部門費は製造部門に配賦するのか?
補助部門は、製品の運搬や工場事務など製品の製造に直接かかわらない部門です。
しかし、補助部門も製造原価に含まれるため
最終的に「どの製品の製造原価になるのか」計算する必要があります。
そのため、製品の製造に直接かかわる「製造部門」へ配賦する必要があります。
その後、製造部門の製造間接費は各製品(製品No.1など)へ配賦を行います。
配賦方法
補助部門の配賦方法は下記の2通りあります。
- 直接配賦法
- 相互配賦法
今回解説するのは「相互配賦法」になります。
相互配賦法
「相互配賦法」とは補助部門間のサービスのやり取りを計算上無視せず
補助部門費を「製造部門」と「ほかの補助部門」に配賦する方法です。
「直接配賦法」では製造部門のみに配賦しますが
「相補配賦法」では製造部門とほかの補助部門に配賦します。
日商簿記2級の相互配賦法は下記のように2段階に分けて行います。
詳しい方法は下記の例題に沿って解説します。
相互配賦法の例題
(解答)
(解説)
第1次配賦
〇修繕部門費5,600円:
修繕部門費5,600円を各部門(第1・第2製造部門・工場事務部門)へ配賦します。
※修繕部門は自部門のため配賦しません。
第1製造部門 | 第2製造部門 | 修繕部門 | 工場事務部門 | |
修繕部門 (修繕回数) | 6回 | 2回 | – ※無視する | 2回 |
相互配賦法では自部門は無視します
- 第1製造部門:5,600円×6/(6+2+2)回=3,360円
- 第2製造部門:5,600円×2/(6+2+2)回=1,120円
- 工場事務部門:5,600円×2/(6+2+2)回=1,120円
- ※自部門である[修繕部門]には配賦しません。
配賦するのは「製造部門」と「ほかの補助部門」です。
自部門である[修繕部門]には配賦しないので注意しましょう。
〇工場事務部門費3,900円:
工場事務部門費3,900円を各部門(第1・第2製造部門・修繕部門)へ配賦します。
※修繕部門は自部門のため配賦しません。
第1製造部門 | 第2製造部門 | 修繕部門 | 工場事務部門 | |
工場事務部門 (従業員数) | 6人 | 4人 | 3人 | ※無視する |
相互配賦法では自部門は無視します
- 第1製造部門:3,900円×6/(6+4+3)人=1,800円
- 第2製造部門:3,900円×4/(6+4+3)人=1,200円
- 修繕部門:3,900円×3/(6+4+3)人=900円
- ※自部門である[工事事務部門]には配賦しません。
配賦するのは「製造部門」と「ほかの補助部門」です。
自部門である[工事事務部門]には配賦しないので注意しましょう。
第2次配賦
次に第2次配賦では
第1次配賦で配賦した下記の補助部門から「製造部門のみ」に配賦します。
- 修繕部門:900円
- 工事事務部門:1,120円
〇修繕部門費900円:
第1製造部門 | 第2製造部門 | 修繕部門 | 工場事務部門 | |
修繕部門 (修繕回数) | 6回 | 2回 | – ※無視する | ※無視する |
第2次配賦では製造部門のみに配賦します
- 第1製造部門:900円×6/(6+2)回=675円
- 第2製造部門:900円×2/(6+2)回=225円
〇工場事務部門費1,120円:
第1製造部門 | 第2製造部門 | 修繕部門 | 工場事務部門 | |
工場事務部門 (従業員数) | 6人 | 4人 | ※無視する | ※無視する |
第2次配賦では製造部門のみに配賦します
- 第1製造部門:1,120円×6/(6+4)人=672円
- 第2製造部門:1,120円×4/(6+4)人=448円
製造部門費の行
最後の行の[製造部門費]は下記のように記入します。
- [合計]欄
→[部門費]の金額26,000円をそのまま記入する - [製造部門]欄(第1・第2製造部門)
→[部門費][修繕費][工場事務部門]の合計額を記入する
9,500+3,360+1,800+675+672=16,007円
7,000+1,120+1,200+225+448=9,993円
仕訳
上記を仕訳で表すと、下記のようになります。
第1製造部門費 | 6,507 | / | 修繕部門費 | 5,600 |
第2製造部門費 | 2,993 | / | 工場事務部門費 | 3,900 |
※製造部門 | ※補助部門 |
- 第1製造部門費:3,360+1,800+675+672=6,507
- 第2製造部門費:1,120+1,200+225+448=2,993
製造部門費の各製造指図書へ配賦
上記で求めた「製造部門費」を
適切な配賦基準(直接作業時間など)にもとづいて
各製造指図書へ配賦します。
各製造指図書とは「製品No.1」「製品No.2」などの各製品のこと指します。
例題
(解答)
第1製造部門の配賦額:
- [製品No.1]9,604円
- [製品No.2]6,403円
第2製造部門の配賦額:
- [製品No.1]5,996円
- [製品No.2]3,997円
(解説)
第1製造部門の配賦額:
- [製品No.1]16,007円×120/200時間≒9,604円
- [製品No.2]16,007円×80/200時間≒6,403円
第2製造部門の配賦額:
- [製品No.1]9,993円×60/100時間≒5,996円
- [製品No.2]9,993円×40/100時間≒3,997円
問題文の指示により小数点が生じたら、小数点以下は四捨五入します。
仕訳
上記により各製品への製造間接費の配賦は完了したため
仕訳では下記のように仕掛品へ振り替わります。
仕掛品 | 26,000 | / | 第1製造部門費 | 16,007 |
/ | 第2製造部門費 | 9,993 |
部門別個別原価計算では、製造間接をこのようにして各製品へ配賦し、仕掛品へ振り替えます。
まとめ
今回は[部門別個別原価計算]の
補助部門の配賦(相互配賦法)について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
【部門別個別原価計算の流れ】
- ①製造間接費を下記のように配賦する
- [部門個別費]を各部門へ賦課(直課)
- [部門共通費]を配賦基準を用いて各部門へ配賦
※各部門・・製造部門・補助部門
- ②[補助部門]に配賦された金額を[製造部門]へ配賦する。
配賦方法は下記の2通りである。- 直接配賦法
- 相互配賦法
- ③製造部門費を各製造指図書(製品No.1など)に配賦する。
※この時点で[仕掛品]へ振り替わる。
コメント