今回は工業簿記の
標準原価計算③原価差異の計算について解説します。
※本記事は日商簿記2級の内容になります。
標準原価計算とは?
「実際原価計算」と「標準原価計算」を比較して説明します。
実際原価計算
これまで学習した原価計算は
実際に発生した原価(実際原価)をもとに製品の原価を計算していました。
これを「実際原価計算」といいます。
標準原価計算
標準原価計算は、あらかじめ目標となる原価(標準原価)を決め
この標準原価をもとに製品の原価を計算する方法です。
標準原価計算の目的
標準原価計算では、標準原価を用いますが
これは無駄や非効率を省略した場合の原価です。
そのため、標準原価と実際原価を比較することで、無駄や非効率を改善することができます。
これが標準原価計算の目的です。
標準原価計算を取り入れることで、製造過程の中の非効率となる部分を把握することができます。
標準原価計算の流れ
標準原価計算は下記のような流れで行います。
【標準原価計算の流れ】
- 原価標準の設定
製品1個あたりの標準原価を設定する - 原価標準の計算
原価標準にもとづいて[完成品原価]や[月末仕掛品原価]を計算する - 実際原価の計算
当月において実際にかかった[直接材料費][直接労務費][製造間接費]を計算する
・総合原価計算について - 原価差異の計算、分析
当月の実際原価と標準原価から原価差異を計算し、その原因を分析する
〇原価差異の計算
・原価差異の計算
・パーシャル・プランとシングル・プラン
〇原価差異の分析
・直接材料費差異・直接労務費差異
・製造間接費差異|シュラッター図 - 原価報告
原価差異の内容を経営管理者に報告し、必要に応じて原価の改善を行う
今回解説する内容は
【原価差異の計算】になります。
原価差異の計算
前回の【②原価標準の計算】では、下記を求めました。
- 月初仕掛品原価
- 当月標準製造費用
- 完成品原価
- 月末仕掛品
上記の[当月標準製造費用]と[実際の当月製造費用]の差額が
原価差異となります。
下記の差額が原価差異となります。
- 当月標準製造費用(標準原価)
- 実際の当月製造費用(実際原価)
原価差異の種類
原価差異の種類は下記のような種類があります。
- 直接材料費差異
- 直接労務費差異
- 製造間接費差異
不利差異と有利差異
この差異は下記のように判定します。
- 標準原価<実際原価→不利差異(借方差異)
- 標準原価>実際原価→有利差異(貸方差異)
実際原価の方が多いということは、予定していたよりも多く原価(費用)がかかったことになります。
その場合は、不利差異といいます。
またこの逆は有利差異といいます。
この判定は「材料消費価格差異」「賃率差異」「製造間接費配賦差異」と同じになります。
例題
(解答)
- 直接材料費差異:510円(不利差異・貸方差異)
- 直接労務費差異:650円(有利差異・貸方差異)
- 製造間接費差異:5,095円(不利差異・貸方差異)
[当月標準製造費用]を計算し、
これと実際原価である当月製造費用の差異を計算します。
標準原価の計算
標準原価カードをもとに[当月標準製造費用]を計算します。
下記のように[直接材料費][直接労務費][製造間接費]に分けて計算します。
当月数量=完成100+月末50-月初30=120個
- 月末の完成品換算量=50個×加工進捗度60%=30個
- 月初の完成品換算量=30個×加工進捗度50%=15個
- 当月の完成品換算量=完成100+月末30–月初15=115個
- 標準直接材料費=@400×120個=48,000円
- 標準直接労務費=@450×115個=51,750円
- 標準製造間接費=@600×115個=69,000円
[標準直接労務費][標準製造間接費]は完成品換算量へ換算するので注意しましょう。
実際原価の計算
問題文の(3)実際原価データより
[実際の当月製造費用]は下記のようになります。
- 直接材料費:48,510円
- 直接労務費:51,100円
- 製造間接費:74,095円
原価差異の計算
上記の[標準原価]と[実際原価]により原価差異を計算します。
- 直接材料費差異
標準48,000-実際48,510=510円(不利差異・貸方差異) - 直接労務費差異
標準51,750-実際51,100=650円(有利差異・貸方差異) - 製造間接費差異
標準69,000-実際74,095=5,095円(不利差異・貸方差異)
これにより[直接材料費][直接労務費][製造間接費]の中で
どこで原価が多く発生してしまったのか把握することができます。
しかしこの時点では「直接材料費の中で何が原因で差異が発生したのか」がわかりません。これについて原価差異の分析で詳しく説明します。
まとめ
今回は工業簿記の標準原価計算③原価差異の計算について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
下記の差額が原価差異となる。
- 当月標準製造費用(標準原価)
- 実際の当月製造費用(実際原価)
上記の原価差異を下記に分類してそれぞれ差額を求める。
- 直接材料費差異
- 直接労務費差異
- 製造間接費差異
原価差異は下記のように判定する。
- 標準原価<実際原価→不利差異(借方差異)
- 標準原価>実際原価→有利差異(貸方差異)
これにより、どこで原価が多く発生してしまったのか把握することができる。
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