今回は「外貨建取引」の決算時の換算による仕訳方法について解説します。
外貨建取引の為替換算
「外貨建取引」とは海外の取引先など外貨(外国の貨幣)で行う取引のことです。
海外取引のため外貨で購入・販売しますが
帳簿では円貨へ換算する必要があります。
外貨→円貨へ為替換算する際は、外国為替相場(為替レート)をもって換算します。
外貨建取引は原則、取引発生時(HR)の為替相場で換算します。
決算時の換算
為替相場は日々変動するため
取引発生時(HR)に外貨→円貨へ換算した資産・負債は
決算時には見直す必要があります。
決算時の為替相場はCRとあらわします。
外貨換算会計では、取引発生時・決算時・期中平均といった為替相場を用います。
この3つは下記のように省略することがあります。
- 取引発生時:HR(ヒトリカル・レート)
- 決算時:CR(カレント・レート)
- 期中平均:AR(アベレージ・レート)
貨幣項目と非貨幣項目
ただし、外貨の全ての資産・負債を決算時の為替相場(CR)に換算する訳ではありません。
- 貨幣項目
→決算時の為替相場(CR)へ換算 - 非貨幣項目
→取引発生時の為替相場(HR)
上記のように資産・負債のうち
貨幣項目に分類されるもののみ決算時の為替レート(CR)へ換算します。
【貨幣項目】→CR
外国通貨・外貨預金、売掛金、未収入金、受取手形、貸付金、未収収益
買掛金、未払金、支払手形、借入金、未払費用、社債など
【非貨幣項目】→HR
棚卸資産・前払金・前払費用・固定資産
前受金・前受収益など
前払金はなぜ決算時に換算しないのか?
[前払金・前受金・前払費用・前受収益]は
すでに金銭の支払い、あるいは受け取りが完了しています。
その後の決済に影響がないため、決算時の為替相場(CR)で換算をしません。
それに対して
[未収入金・未払金・未収収益・未払費用]は
これから金銭の支払い・受け取りを行います。
その後の決済で換算するため為替差損益が発生します。
そのため決算時の為替相場(CR)で換算します。
前払金・前受金が発生する取引は、
買掛金・売掛金による為替差損益は発生しますが
前払金・前受金による為替差損益は発生しません。
そのため、前払金・前受金は決算時の為替相場(CR)への換算は不要となります。
決算時の換算の仕訳方法
例題1(日商簿記2級)
為替差損益 | 5,000 | / | 現金 | 5,000 |
売掛金 | 400 | / | 為替差損益 | 400 |
買掛金 | 1,000 | / | 為替差損益 | 1,000 |
この中で貨幣項目は現金と売掛金と買掛金になります。
他は非貨幣項目のため決算時の換算はしません。
【現金の為替差損益】
(@100-@105)円×1,000ドル=△5,000
※現金(資産)が減少するため現金は貸方になります。
【売掛金の為替差損益】
(@100-@102)円×300ドル=△600
(@100-@95)円×200ドル=1,000
△600+1,000=400
※売掛金(資産)が増加するため売掛金は借方になります。
売掛金は取引が2つあるため、それぞれ計算して合算します。
【買掛金の為替差損益】
(@100-@102)円×500ドル=△1,000
※買掛金(負債)が減少するため買掛金は借方になります。
例題2(日商簿記1級)
利息など経過勘定が発生する場合は少し複雑になります。
※経過勘定の決算時の換算は[日商簿記1級]の試験範囲になります。
借入金 | 2,400 | / | 為替差損益 | 2,400 |
支払利息 | 900 | / | 未払費用 | 900 |
貸付金 | 1,500 | / | 為替差損益 | 1,500 |
受取利息 | 380 | / | 前受収益 | 380 |
借入金・貸付金は貨幣項目のため決算時の為替レート(CR)で換算をします。
また経過勘定による利息が発生します。
- 利息による借入金の[未払費用]は貨幣項目のためCR
- 利息による貸付金の[前受収益]は非貨幣項目のためHR
となります。
(借入金)
借入金の換算:(@100-@102)円×1,200ドル=△2,400円
※借入金(負債)が減少するため借方になります。
利息による未払費用の算出:
1,200ドル×年利3%×3ヶ月/12=9ドル(未払費用)
※X2年1-3月の3ヶ月
9ドル×@100(CR)=900円
未払費用は貨幣項目のため決算時(CR)@100円を用います。
(貸付金)
貸付金の換算:(@100-@95)円×300ドル=1,500円
※貸付金(資産)が増加するため借方になります。
利息による前受収益の算出:
300ドル×年利2%×8ヶ月/12=4ドル
※X2年4-11月の8ヶ月(翌期の収益の前受け)
4ドル×@95(HR)=380円
前受収益は非貨幣項目のため取引発生時(HR)を用います。
利息を支払った時の為替レート@95円を用います
まとめ
今回は「外貨建取引」の決算時の換算による仕訳方法について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
- 決算時、[貨幣項目]は決算時の為替レート(CR)へ換算する。
- 棚卸資産・前払金など[非貨幣項目]は取得時の為替レート(HR)。
- 利息など経過勘定が発生したとき、前受収益・前払利息は取引発生時(HR)で換算する。決算時(CR)で換算しないこと
- この取引発生時(HR)とは、利息を支払った時(あるいは受け取った時)の為替相場になる
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