日商簿記2級

サービス業の仕訳|役務収益と役務原価

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今回は【サービス業の仕訳/役務収益と役務原価】について解説します。

※[サービス業の仕訳]は2016年より日商簿記2級の試験範囲となりました。

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商品売買業とサービス業

まず商品販売業とサービス業の違いを解説します。

商品売買業

商品売買業」では商品という形のあるモノで取引が行われます。

商品売買業の具体例

デパート・スーパー・コンビニ・家電量販店など

形のあるモノを販売する業種

サービス業

これに対して「サービス業」ではサービスという形のないモノで取引が行われます。

このようなサービスのことを「役務えきむ」といいます。

サービス業の具体例

宿泊・レジャー・教育・コンサルティングなど

形のないモノを販売する業種

収益の計上時期

商品販売業の場合

商品販売業の場合、商品を引き渡した時に「売上」を計上します。

サービス業の場合

サービス業においては、サービスを提供したときに「役務収益」を計上します。

役務収益の計上時期は下記の2通りがあります。

役務収益の計上時期
  1. 役務提供の進捗度に応じて収益を計上する方法
  2. 役務提供が完了した時に一括して収益を計上する方法

下記でそれぞれの仕訳方法について解説していきます。

※ここでは受験指導サービスの塾を経営している会社を例に解説していきます。

役務提供の進捗度に応じて収益を計上する方法

代金を前受けした時

例題

(1)塾の経営を行っている当社は、来月開講予定の講座(受講期間12ヶ月)の受講料10,000円を現金で受け取った。

現金10,000/前受金(負債)10,000

(解説)

サービス(役務)を提供する前に代金を受け取っているため

前受金(負債)で処理します。

この時点では、まだ[役務収益]の計上はしないので注意しましょう。

サービスの提供による費用を支払った時

例題

(2)当社は来月に開講される講座の教材作成費用等4,000円を現金で支払った。

仕掛品(資産)4,000/現金4,000

(解説)

サービス業の仕訳では

サービス(役務)を提供した時に収益および費用を計上します。

そのため、サービス(役務)を提供していない時にかかった費用は

費用ではなく、仕掛品(資産)として計上します。

【仕掛品とは?】

仕掛品(資産)は「作りかけのもの」の原価になります。

役務提供が完了した時に「役務原価」へ振り替えます。

※仕掛品は工業簿記でよく用いられる勘定科目になります。

なぜ役務提供の前の時点では費用計上しないのか?

なぜ役務提供の前の時点では、費用計上せず

「仕掛品(資産)」で計上するのか?

それは「費用収益対応の原則」によるものになります。

収益に対応する費用は同じ時期に計上するという意味です。

費用収益対応の原則

費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

(企業会計原則より引用)

収益として計上していない原価は費用として計上してはならないということです。役務を提供し収益計上した時に費用として計上します。

こういう理由から役務提供の前の時点では、費用計上せず「仕掛品(資産)」で計上します。

決算時

例題

(3)決算日を迎え、上記の講座は40%が終了している。

  • 受講料10,000円は前受金で処理している。
  • 講座にかかる費用4,000円は仕掛品で処理している。

上記の場合の決算仕訳を示しなさい。

前受金4,000/役務収益4,000
役務原価1,600/仕掛品1,600

(解説)

[役務提供の進捗度に応じて収益を計上する方法]では

決算時に進捗度に応じて下記のように[役務収益]と[役務原価]へ振り替えます。

・前受金→役務収益(収益)
・仕掛品→役務原価(費用)

  • 前受金を[役務収益]へ振り替え
    10,000×40%=4,000円
  • 仕掛品を[役務原価]へ振り替え
    4,000×40%=1,600円
  • 商品販売業である「売上」はサービス業では「役務収益
  • 商品販売業である「売上原価」はサービス業では「役務原価

となります。

役務が完了した時

例題

(4)上記の講座は全て終了した。

前受金6,000/役務収益6,000
役務原価2,400/仕掛品2,400

(解説)

前の例題では40%まで役務収益・役務原価へ振り替えましたが

今回で役務はすべて完了したため、残り60%を役務収益・役務原価へ振り替えます。

  • 前受金を[役務収益]へ振り替え
    10,000-4,000=6,000円
  • 仕掛品を[役務原価]へ振り替え
    4,000-1,600=2,400円

役務提供が完了した時に一括して収益を計上する方法

この方法では決算時には何も処理しません。

役務を全て完了した時に[役務収益]と[役務原価]を計上します。

◆役務提供の進捗度に応じて収益を計上する方法

→決算時に進捗度に応じて[役務収益]と[役務原価]へ振り替える。

◆役務提供が完了した時に一括して収益を計上する方法

→決算時の処理なし

例題

(1)塾の経営を行っている当社は、来月開講予定の講座(受講期間12ヶ月)の受講料10,000円を現金で受け取った。

(2)当社は来月に開講される講座の教材作成費用等4,000円を現金で支払った。

(3)決算日を迎え、上記の講座は40%が終了している。

  • 受講料10,000円は前受金で処理している。
  • 講座にかかる費用4,000円は仕掛品で処理している。

上記の場合の決算仕訳を示しなさい。

(4)上記の講座は全て終了した。

※収益は役務提供が完了した時に一括して計上する

(1)現金10,000/前受金(負債)10,000
(2)仕掛品(資産)4,000/現金4,000
(3)※仕訳なし
(4)前受金(負債)10,000/役務収益10,000
役務原価4,000/仕掛品(資産)4,000

この場合、決算時の仕訳は不要となります。講座が全て完了した時点で一括して収益計上します。

仕掛品を経由しない場合の仕訳

[役務原価]と[役務収益]の発生がほぼ同時の場合は

「仕掛品」を経由せず「役務原価」に計上することができます。

例題

(1)旅行業を行う当社では、旅行のツアーについて顧客から申し込みがあり、旅行代金10,000円を現金で受け取った。

(2)上記のツアーを催行した。なお移動のための交通費などを4,000円支払った。

(1)現金10,000/前受金(負債)10,000
(2)前受金(負債)10,000/役務収益10,000
役務原価4,000/仕掛品(資産)4,000

(解説)

(1)ツアーを行う前に受け取った代金のため「前受金」で処理します。

(2)ツアーを行うことで役務の提供は完了したため

[前受金]から[役務収益]へ振り替えます。

また同時に役務原価が発生したため、[役務原価]の計上も行います。

この場合は[役務原価]と[役務収益]の発生がほぼ同時のため仕掛品は用いず直接[役務原価]で計上します。

まとめ

今回は【サービス業の仕訳/役務収益と役務原価】について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 商品売買業」では商品という形のあるモノで取引が行われる。
  • サービス業」ではサービスという形のないモノで取引が行われる。
  • サービス業においては、サービスを提供したときに「役務収益」を計上する
    • 役務を提供するまでに代金を受け取った場合は「前受金」で計上する
    • 役務を提供するまでに発生した原価は「仕掛品」で計上する
  • 役務収益の計上時期は下記の2通りがある。
    • 役務提供の進捗度に応じて収益を計上する方法
      →決算時に進捗度に応じて[役務収益]と[役務原価]へ振り替える。
    • 役務提供が完了した時に一括して収益を計上する方法
      →決算時の処理なし

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