今回は「外貨建取引」の前払金・前受金よる仕訳方法について解説します。
外貨建取引の為替換算
「外貨建取引」とは海外の取引先など外貨(外国の貨幣)で行う取引のことです。
海外取引のため外貨で購入・販売しますが
帳簿では円貨へ換算する必要があります。
外貨→円貨へ為替換算する際は
外国為替相場(為替レート)をもって換算します。
外貨建取引は原則、取引発生時(HR)の為替相場で換算します。
外貨建取引の前払金・前受金の仕訳方法
前払時・前受時
(1) | 前払金 | 4,000 | / | 現金 | 4,000 |
(2) | 現金 | 8,800 | / | 前受金 | 8,800 |
(1)前払金40ドル×@100円=4,000
(2)前受金80ドル×@110円=8,800
上記は契約しただけで商品の受け渡しは完了していないため、前払金・前受金で処理します。この時点では仕入・売上は計上しません。
輸入時・輸出時
(1) | 仕入 | 10,300 | / | 買掛金 | 6,300 |
/ | 前払金 | 4,000 | |||
(2) | 売掛金 | 7,140 | / | 売上 | 15,940 |
前受金 | 8,800 | / |
輸出入されたため、「仕入」および「売上」をします。
「仕入」および「売上」は直接計算せず下記のように算出します。
- 仕入=「前払金」+「買掛金」
- 売上=「前受金」+「売掛金」
(注)仕入100ドル×@105円=10,500と計算しないようにしましょう。
前払金・前受金を減少させ、差額の外貨金額に取引時(HR)の為替相場で換算し
売掛金および買掛金を計上します。
(1)買掛金の算出
(100-40)ドル×@105円=6,300
(2)売掛金の算出
(150-80)ドル×@102円=7,140
その後、円換算した買掛金に前払金を加算して仕入をもとめます。
- 前払金4,000+買掛金6,300=10,300(仕入)
売上も同じように円換算した売掛金に前受金を加算して求めます。
- 前受金8,800+売掛金7,140+=15,940(売上)
【前払金がある場合の仕訳の手順】
- 前払金を貸方で計上し減少させる
- [輸入価額]と[前払金]の差額(ドル)に輸入の取引時(HR)の為替相場で換算し[買掛金]を算出する
- ※計算式([輸入価額]-[前払金])ドル×@輸入時HR
- [前払金]と[買掛金]の合計が[仕入]となる。
この時点では為替差損益は発生しません。
決済時
(1) | 買掛金 | 6,300 | / | 現金 | 6,060 |
/ | 為替差損益 | 240 | |||
(2) | 現金 | 7,210 | / | 売掛金 | 7,140 |
/ | 為替差損益 | 70 |
(1)前払いで支払っているため、買掛金の残金は100-40=60ドルになります。
- 支払金額:60ドル×@101円=6,060(現金)
- 輸入時の買掛金:6,300
→差額:6,060-6,300=240(為替差損益)
(2)前受けで代金を受け取っているため、売掛金の残金は150-80=70ドルになります。
- 受取金額:70ドル×@103=7,210
- 輸出時の売掛金:7,140
→差額:7,210-7,140=70(為替差損益)
為替差損益は営業外費用(または収益)になります。
買掛金・売掛金による為替差損益は発生しますが
前払金・前受金による為替差損益は発生しません。
まとめ
今回は「外貨建取引」の前払金・前受金による仕訳方法について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
【仕訳の流れ】
- 前払金・前受金の仕訳
- 輸入・輸出の仕訳
- 決済時の仕訳←為替差損益が発生
【注意事項】
- 前払金があるときは仕入は「前払金」+「買掛金]で求める。
- 前受金があるときは売上は「前受金」+「売掛金」で求める。
- ※直接換算して計算するのは間違いのため注意
- 前払金・前受金による為替差損益は発生しない
上記のように為替差損益は決済時のみです。
輸入・輸出の時は為替差損益は発生しませんので注意しましょう。
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