原価率算定における返品・値引き・割戻しについて
原価率の算定において返品・値引き・割戻しは下記のようになっております。
仕入 | 売上 | |
戻し(返品) | 控除 | 控除 |
値引き・割戻し | 控除 | 控除しない |
日商簿記1級の勉強をされている方は上記の表はご存じだと思います。
しかし、なぜ「売上値引・売上割戻しだけ、控除しない」のか?という疑問を持つ方も多いでしょう。
私も最初これを見た時は疑問に感じました。
今回その理由について解説していきます。
まず原価率とは?
原価率とは、原価÷売価になります。
仕入戻し・値引き・割戻しは、分子から控除され
売上戻し・値引き・は分母から控除されます。
売上戻しと売上値引・割戻しの違いについて
原価率算定において
- 売上戻し(返品)は控除する
- 売上値引・割戻しは控除しない
となっております。
この両者の大きな違いは
売上戻し(返品)は商品が戻ってくるのに対し、売上値引・割戻しは商品が戻ってきません。
- 個数が変動するので、売上戻し(返品)は控除する。
- 個数が変動しないので、売上戻し(返品)は控除しない。
という考えとなります。
売上戻し(返品)の場合の計算はどうなるか?
例で考えると、
「100円の商品を200円で販売した場合」
100÷200で原価率は50%になります。
しかし「そのうち売価50円(原価25円)が返品となったとき」
売上戻しは控除するので
分母の売価は控除するので、200-50=150円
分子の原価の25円は在庫して商品勘定に戻るため、原価は100-25=75円となり、
75÷150円で原価率は50%で変化なしとなります。
商品が返品されたら、期末商品が増えるため、原価が減少します。
※売上原価=(期首商品+)仕入ー 期末商品
売上値引きの場合の計算はどうなるか?
例で考えると
「100円の商品を200円で販売した場合」
100÷200で原価率は50%になります。
しかし「そのうち売価50円(原価25円)が値引きとなったとき」
売上値引きは控除しないので
分母の売価は、控除しないため200円のまま
分子の原価は、値引きの場合、商品が戻ってこないため、100円のまま
よって、100÷200で原価率は50%になります。
売上戻し、値引きでも、原価率に変化はない。ということになります。
仕入値引・割戻しと売上値引・割戻しの違いについて
今度は仕入値引・割戻しは控除するのに対し、
売上値引・割戻しは控除しない理由について述べます。
上の説明だと
「売上値引・割戻しは控除しないなら、仕入値引・割戻しも控除しないんじゃないの?」
という疑問が湧いてきます。
この違いについて、日商簿記1級のテキストにも述べていないケースが多く、
明確な理由がわかりにくい部分でもあります。私なりの解釈ですが、下記のように考えています。
仕入値引きの場合の計算はどうなるか?
下記の例で考えると
- ①100円の商品を仕入れたが、汚損を発見したため20円値引きしてもらった。
- ②後日、この商品を200円で販売した。
→
①は仕入値引になりますね。②は売価です。仕入値引は控除するため
分子の原価は、100-20=80円となり
分母の売価は200円となり、80÷200で原価率=40%となります。
このとき、売上値引きと同様に、控除しないが正しいのではないか?という疑問ですが
この100円で仕入れた商品は汚損があったため、20円値引きされています。
そのため商品の価値は100円ではなく、80円です。
そのため、20円を控除して80円としております。
商品の価値が下がれば、減少後の価値の金額を表さなければなりません。
まとめ
解説は以上です。まとめると下記のようになります。
- 「仕入戻り」は、商品が返品して減少したため、控除する
- 「仕入値引・割戻し」は、商品の変動はないが、商品の価値が下がったため控除する
- 「売上戻り」は、商品が返品され戻ってくるため、控除する
- 「売上値引・割戻し」は、商品の変動がないため、控除しない
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