親子会社間の内部取引を相殺消去する「成果連結」には
下記のような連結修正仕訳があります。
- 内部取引高・債権債務の相殺消去
- 貸倒引当金の修正
- (税効果の適用なし)
- (税効果の適用あり)
- 手形割引の修正
- 未実現損益の消去
- (税効果の適用なし)
- (税効果の適用あり)
今回は「貸倒引当金の修正」の[税効果の適用なしの場合]について解説します。
連結財務諸表の作成の手順
連結財務諸表の作成は下記のような流れで行います。
貸倒引当金の修正
連結グループ間での債権による貸倒引当金を計上した場合
この債権(売掛金など)は内部取引の相殺消去により、連結上はなくなります。
そのため債権0となった場合は[貸倒引当金]を計上する必要はありません。
そのため連結上ではグループ会社に対する
[貸倒引当金]と[貸倒引当金繰入(P/L)]を取り消す必要があります。
これが「貸倒引当金の修正」です。
消去された債権に対しての貸倒引当金も消去する必要があります。
「貸倒引当金の修正」は[貸倒引当金]と[貸倒引当金繰入]を取り消すだけではなく
内容によっては下記も行う必要があります。
非支配株主持分の計上
子会社が貸倒引当金の計上した場合は、
[貸倒引当金繰入(費用)]の減少により、子会社の当期純利益が変動します。
その変動額のうち、非支配株主分は
[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替える必要があります。
↓[子会社の当期純損益の振替え]については下記をご参照ください。
期末貸倒引当金の修正
- [親会社]の貸倒引当金
- [子会社]の貸倒引当金
の連結修正仕訳について、それぞれ解説していきます。
親会社の貸倒引当金
(解答)※連結修正仕訳
買掛金 | 5,000 | / | 売掛金 | 5,000 | |
貸倒引当金 | 500 | / | 貸倒引当金繰入 (P/L) | 500 |
(個別上の仕訳)
P社 | 売掛金 | 5,000 | / | 売上 | 5,000 |
S社 | 仕入 | 5,000 | / | 買掛金 | 5,000 |
P社 | 貸倒引当金繰入 | 500 | / | 貸倒引当金 | 500 |
- P社の[売掛金]とS社の[買掛金]を相殺します。
- これにより連結上でP社のS社に対する[売掛金]は0となります。
- P社の個別財務諸表で[貸倒引当金]500円を計上しているので、取り消す必要があります。
- ※貸倒引当金:売掛金5,000×10%=500
子会社の貸倒引当金
次は子会社が貸倒引当金を計上した場合になります。
子会社の貸倒引当金の計上を、連結修正仕訳によって取り消した場合
子会社の当期純利益が変動します。
そのうち、非支配株主持分は連結グループとしての利益となりませんので
その分は[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替える必要があります。
(解答)※連結修正仕訳
買掛金 | 5,000 | / | 売掛金 | 5,000 | |
貸倒引当金 | 500 | / | 貸倒引当金繰入 (P/L) | 500 | |
非支配株主に 帰属する当期純損益 (P/L) | 100 | / | 非支配株主持分 当期変動額 | 100 |
(個別上の仕訳)
P社 | 仕入 | 5,000 | / | 買掛金 | 5,000 |
S社 | 売掛金 | 5,000 | / | 売上 | 5,000 |
S社 | 貸倒引当金繰入 | 500 | / | 貸倒引当金 | 500 |
- S社の[売掛金]とP社の[買掛金]を相殺します。
- これにより連結上でS社のP社に対する[売掛金]は0となります。
- S社の個別財務諸表で[貸倒引当金]500円を計上しているので、取り消す必要があります。
- ※貸倒引当金:売掛金5,000×10%=500
- この連結修正仕訳により子会社S社の当期純利益が500円増加します。
- この500円のうち、20%は親会社以外(非支配株主)の持分のため、振り替える必要があります。
- 非支配株主:100-80=20%
- [非支配株主に帰属する当期純損益]100円の振替
- ※500×20%=100
連結修正仕訳によって、
貸倒引当金繰入(P/L)が貸方に500円計上されるということは
500円の当期純利益が増加します。
この500円のうち
- 500×80%=400円→親会社
- 500×20%=100円→非支配株主
となるため、連結上では100円は
[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替える必要があります。
期首貸倒引当金の修正
前期以前の連結修正仕訳によって、貸倒引当金の修正を行っている場合は
当期で開始仕訳を行う必要があります。
開始仕訳では、P/L勘定である[貸倒引当金繰入]は[利益剰余金当期首残高]で処理します。
◆開始仕訳で使用する勘定科目
- 【純資産の項目】
→後ろに「~当期首残高」と付ける - 【損益項目(P/L)】
→「利益剰余金当期首残高」の勘定科目へ変更する
【解答の順序】
- 債権債務の相殺消去
- 前期以前の貸倒引当金の開始仕訳
- 当期の貸倒引当金の計上(差額補充法)
- ※子会社の貸倒引当金の修正の場合、[非支配株主]の振り替えを行う。
親会社の貸倒引当金
(解答)
◆債権債務の相殺消去
買掛金 | 5,000 | / | 売掛金 | 5,000 |
◆開始仕訳
貸倒引当金 | 100 | / | 利益剰余金当期首残高 (貸倒引当金繰入) | 100 |
※()内は前期に計上した連結修正仕訳の勘定科目になります。
前期で計上した貸倒引当金繰入100円はP/L勘定のため、
当期の開始仕訳では[利益剰余金当期首残高]で処理します。
◆当期の貸倒引当金の修正
貸倒引当金 | 400 | / | 貸倒引当金繰入 | 400 |
当期の貸倒引当金の計上額:
売掛金5,000×10%=500
前期に100円計上しているため、差額補充法により
500-100=400円が当期の貸倒引当金の計上額となります。
当期の個別上で計上された貸倒引当金400円を連結修正仕訳で取り消します。
※連結修正仕訳により債権債務が相殺され、貸倒引当金を計上する必要がないため
子会社の貸倒引当金
(解答)
◆債権債務の相殺消去
買掛金 | 5,000 | / | 売掛金 | 5,000 |
◆開始仕訳
貸倒引当金 | 100 | / | 利益剰余金当期首残高 (貸倒引当金繰入) | 100 |
利益剰余金当期首残高 (非支配株主に帰属する当期純損益) | 20 | / | 非支配株主持分 当期首残高 | 20 |
子会社の当期純利益が変動するため、非支配株主の振り替えが必要となります。
※()内は前期に計上した連結修正仕訳の勘定科目になります。
- [貸倒引当金繰入]100円
- [非支配株主に帰属する当期純損益]20円
前期で計上した上記はP/L勘定のため、
当期の開始仕訳では[利益剰余金当期首残高]で処理します。
- [非支配株主に帰属する当期純損益]:(100-40)×20%(非支配)=12円
- ※100-80=20%(非支配)
◆当期の貸倒引当金の修正
貸倒引当金 | 400 | / | 貸倒引当金繰入 | 400 |
非支配株主に帰属する 当期純損益 | 80 | / | 非支配株主持分 当期首残高 | 80 |
当期の貸倒引当金の計上額:5,000×10%=500
前期に100円計上しているため、差額補充法により
500-100=400円が当期の貸倒引当金の計上額となります。
当期の個別上で計上された貸倒引当金400円を連結修正仕訳で取り消します。
※連結修正仕訳により債権債務が相殺され、貸倒引当金を計上する必要がないため
さらに子会社の当期純利益400円が増加するため、
このうち20%は[非支配株主に帰属する当期純損益]へ振り替えます。
※400×20%(非支配)=80円
まとめ
今回は連結会計の[貸倒引当金の修正]について解説しました。
【貸倒引当金の修正】
- 内部取引による債権債務は連結上は相殺消去する。
- そのため内部取引による債権の貸倒引当金を計上した場合、連結上では取り消す必要がある。
- 貸倒引当金の計上の取り消すと、[当期純利益]が変動する。
- そのため、【子会社】の貸倒引当金の修正をした場合、連結上では非支配株主持分の[非支配株主に帰属する当期純損益(P/L)]へ振り替える必要がある。
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