貸倒引当金繰入は全てが損金算入される訳ではありません。
税法上で繰入限度額といい、これを超える場合は損金不算入になります。
今回は貸倒引当金繰入の「損金算入の要件」と「税効果会計の仕訳」について解説します。
※損金算入の要件は簿記の試験で出題されることはありません。
貸倒引当金繰入の損金算入の要件
貸倒引当金は一括評価金銭債権と個別評価金銭債権があります。
それぞれ算出方法も異なるため、税法上の損金算入の要件も異なります。
国税庁のホームペーシを元に記載してます。詳細は下記をご覧ください
一括評価金銭債権
「一括評価金銭債権」は引当率を求めて債権残高に引当率を掛けて算出します。
引当率の求め方は「実績繰入率」「法定繰入率」の2種類です。
実績繰入率
「実績繰入率」は、過去3年の貸倒実績により引当率を求める方法です。
詳しい計算方法は下記の「一般債権」をご参照ください。
またこちらは全ての法人が適用出来る訳ではありません。
平成24年度より、資本金が1億円以下の普通法人(大会社の子会社の除く)が対象となりました。
法定繰入率
「法定繰入率」は業種によって下記のように引当率が確定しております。
卸売業および小売業 | 10% |
製造業 | 8% |
金融業および保険業 | 3% |
信用購入あっせん業 | 13% |
その他 | 6% |
また、こちらも適用できる法人が限定されております。
資本金が1億円以下の普通法人(大会社の子会社の除く)が対象となります。
実績繰入率を計算するのが手間なため
中小企業では「法定繰入率」を用いられることが主です。
個別評価金銭債権
「個別評価金銭債権」は債務者が経営破綻に陥っており債権が回収できない場合、個別で貸倒引当金を算定する方法です。
ただ税法上は「回収期限過ぎているから」「なんとなく回収難しそうだから」という理由では損金算入できません。
債権を回収する努力をし、その努力の過程を記録し、回収できないという事実を証明するものが必要となります。
ここが非常にシビアで、損金算入で申告したが後で税務調査で否認を受けるということもよくあります。
そのため個別評価で損金算入するのであれば
顧問税理士に相談し慎重に判断する必要があります。
貸倒引当金繰入の計上は中小企業のみの適用だったりと
税務署は「基本的に損金として認めたくない」と言う考えです。
特に個別評価金銭債権はとても厳しくチェックされます。
損金算入して後で税務調査で否認されるリスクを負うのであれば
損金不算入で処理するという方法を取る会社も多くあります。
そのため貸倒引当金繰入の損金算入は慎重に判断しましょう。
上記内容は実務向けの知識であり、簿記の試験対策としては不要な内容になります。
「貸倒引当金の繰入限度超過額」の税効果会計の仕訳
前置きが長くなりましたが、次に貸倒引当金による税効果会計の仕訳について解説します。
貸倒引当金は会計上と税法上で金額に差異が出ても債権が回収されたり
貸倒損失が確定し損金算入となれば、差異が解消されます。そのため一時差異になります。
一時差異ということは税効果の適用になります。
(例題①)
(解答)
繰延税金資産 | 30 | / | 法人税等調整額 | 30 |
(400-300)×30%=30円
100円が損金不算入となり、将来の税金が減るため繰延税金資 100×実効税率30%=30円は繰
100円損金不算入になるということは
課税所得が+100円されます。
課税所得が増えるということは税金も増えるということです。
この差異は一時差異のため、将来の税金が減る”将来減算一時差異“となります。
そのため繰延税金資産で計上します。
(解答)
法人税等調整額 | 30 | / | 繰延税金資産 | 30 |
繰延税金資産 | 75 | / | 法人税等調整額 | 75 |
1行目は前期のに戻しです。
2行目は(550-300)×30%=75
また上記仕訳を相殺させて一行仕訳で示すと下記のようになります。
繰延税金資産 | 45 | / | 法人税等調整額 | 45 |
※75-30=45
まとめ
今回は貸倒引当金の繰入限度超過額による税効果会計の仕訳について解説しました。
「損金算入の要件」は実務向けの内容になります。
簿記の試験では問題文に損金不算入がいくらか記載してあるので
「損金算入の要件」は 簿記の試験対策としては覚える必要がありません。
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