ヘッジ会計の論点で出てくる「繰延ヘッジ損益」は税効果会計の適用となります。
今回は繰延ヘッジ損益の税効果会計の仕訳について解説します。
繰延ヘッジ損益とは?
ヘッジ会計の方法は下記の2種類あります。
- 繰延ヘッジ(原則)
- 時価ヘッジ(容認)
【繰延ヘッジ(原則)】
時価評価されているヘッジ手段にかかる損益または評価差額をヘッジ対象がかかる損益が認識されてるまで繰延ヘッジ損益(純資産)として繰り延べる方法
【時価ヘッジ(容認)】
ヘッジ対象である資産または負債にかかる相場変動を投資有価証券損益などの損益に反映させることにより。その損益とヘッジ手段にかかる損益とを同一の会計期間に認識する方法
上記を見て読み解きづらいかもしれませんが、
ざっくり言うと下記のようなイメージになります。
- 【繰延ヘッジ】は差額を純資産(B/S)で計上
※ヘッジ対象の損益が認識されるまで - 【時価ヘッジ】は差額を損益(P/L)で計上
繰延ヘッジ損益(純資産)は税法上では損金(または益金)に算入されません。
またこの差異はヘッジ対象が損益の認識される時に解消します。
そのため繰延ヘッジ損益(純資産)は一時差異となり税効果の適用となります。
繰延ヘッジ損益はなぜ”純資産”なのか?
ヘッジ対象の損益が認識されるまで損益を認識しないため、
それまでは「純資産(B/S)」として認識します。
損益(P/L)で計上しない代わりに、純資産として処理します。
「繰延ヘッジ損益」は
その他有価証券評価差額金(純資産)と同じく
評価・換算差額等に分類されます。
繰延ヘッジ損益の税効果会計の仕訳
繰延ヘッジ損益は、その他有価証券評価差額金と同じ純資産です。
その他有価証券評価差額金と同じく、P/Lを経由しないため
法人税等調整額を用いず、繰延ヘッジ損益で処理します。
購入時
(解答)
(1) | その他有価証券 | 288,000 | / | 現金 | 288,000 |
(2) | 先物取引差入証拠金 | 4,000 | / | 現金 | 4,000 |
(1)ヘッジ対象
3,000口×@96=288,000円
(2)ヘッジ手段
委託証拠金4,000円
この時点では税効果の適用はありません。
決算時
(解答)
(1) | その他有価証券評価差額金 | 3,000 | / | その他有価証券 | 3,000 |
繰延税金資産 | 900 | / | その他有価証券評価差額金 | 900 | |
(2) | 先物取引差金(資産) | 6,000 | / | 繰延ヘッジ損益 | 6,000 |
繰延ヘッジ損益 | 1,800 | / | 繰延税金負債 | 1,800 |
(1)ヘッジ対象
(国債時価@95-国債取得原価@96)×3,000口=3,000
税効果:3,000×30%=900
(2)ヘッジ手段
(先物売値@99-先物時価@97)×3,000口=6,000
税効果:6,000×30%=900
上記仕訳を同じ科目を相殺して表示させると下記のよな仕訳になります。
(1) | その他有価証券評価差額金 | 2,100 | / | その他有価証券 | 3,000 |
繰延税金資産 | 900 | / | |||
(2) | 先物取引差金(資産) | 6,000 | / | 繰延ヘッジ損益 | 4,200 |
/ | 繰延税金負債 | 1,800 |
(1)3,000-900=2,100
(2)6,000-1,800=4,200
翌期首
(解答)
(1) | その他有価証券 | 3,000 | / | その他有価証券評価差額金 | 3,000 |
その他有価証券評価差額金 | 900 | / | 繰延税金資産 | 900 | |
(2) | 繰延ヘッジ損益 | 6,000 | / | 先物取引差金(資産) | 6,000 |
繰延税金負債 | 1,800 | / | 繰延ヘッジ損益 | 1,800 |
ヘッジ対象もヘッジ手段も洗替方式のため
例題2の逆仕訳を起票します。
まとめ
今回は 今回は繰延ヘッジ損益の税効果会計の仕訳について解説しました。
仕訳方法はその他有価証券評価差額金と同じで、純資産の変動のため法人税等調整額を用いないので注意しましょう。
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