今回はセール・アンド・リースバック取引の仕訳方法について解説します。
※セールアンドリースバック取引は日商簿記1級の試験範囲になります。
セール・アンド・リースバック取引とは?
「セール・アンド・リースバック取引」とは会社の保有している資産を
リース会社に売却(セール)し、同時に
その資産のリースを受ける(リースバック)取引になります。
資産の売却と同時にリースを受けるため、実際の資産に動きはありません。
セール・アンド・リースバック取引のメリット
セール・アンド・リースバックの借手・貸手のそれぞれのメリットは下記のようになります。
【借手側のメリット】
→資産を売却することによって一時的な資金(お金)が手に入ります。
そしてリースバックすることで、その資産をこれまで通り使用し続けることができます。
【貸手(リース会社)のメリット】
→リースの売却によって支払った金額は、
利息を付けて返済してもらいます。
リース会社にとってこの利息は受取利息となり収益となります。
借手側がセール・アンド・リースバックをする目的は資金調達になります。
セール・アンド・リースバック取引の仕訳方法
セール・アンド・リースバック取引開始時は
- 売却時の仕訳
- リース取引開始時
の2つの仕訳処理をします。
売却時の発生する売却損益は下記のように計上します。
- 売却損は「長期前払費用(資産)」
- 売却益は「長期前受収益(負債)」
そしてこの「長期前払費用」「長期前受収益」は
残存耐用年数にわたって減価償却費へ振り替えます。
耐用年数ではなく、残存耐用年数です。
例題
(1)リース取引開始時
① | 現金 | 277,510 | / | 機械 | 400,000 |
減価償却累計額 | 160,000 | / | 長期前受収益 | 37,510 | |
② | リース資産 | 277,510 | / | リース債務 | 277,510 |
①売却時(セール)
売却益37,510円は長期前受収益で計上します。
②リース時(リースバック)
貸手の購入価額は売却額の277,510円のため、277,510円でリース資産を計上します。
(2)リース料支払い時
① | 支払利息 | 11,100 | / | 現金 | 100,000 |
② | リース債務 | 88,900 | / |
①支払利息の算出:リース債務に利率4%を掛けます。
リース債務277,510×4%=11,100(支払利息)
②リース債務の返済:支払リース料から支払利息を差し引きます。
支払リース料100,000-11,100=88,900(リース債務の返済)
(3)減価償却
① | 減価償却費 | 92,503 | / | 減価償却累計額 | 92,503 |
② | 長期前受収益 | 12,503 | / | 減価償却費 | 12,503 |
耐用年数は5年だが、取得日X1年4月のため、リース取引開始時では2年が経過しています。
そのため5-2=3年の残存耐用年数で
[①リース資産の減価償却]と[②長期前受収益の減価償却]を計上します。
①リース資産の減価償却:
リース資産277,510÷3年=92,503
②長期前受収益の減価償却:
長期前受収益37,510÷3年=12,503
耐用年数(5年)ではなく残存耐用年数(5-2=3年)で減価償却します。
まとめ
今回はセール・アンド・リースバック取引について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
- 「セール・アンド・リースバック取引」はリース会社に売却(セール)し、同時にその資産のリースを受ける(リースバック)取引
- 売却時の売却損益は「長期前払費用」「長期前受収益」で計上する
- [貸手の購入額]が借手の売却額となるため、リース取引時のリース資産の計上額は売却額で計上する
- 「長期前払費用」「長期前受収益」は残存耐用年数で減価償却する
※耐用年数ではなく、残存耐用年数になるので注意
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