ファイナンス・リースは下記の2種類に分類されます。
- 所有権移転ファイナンス・リース(原則処理のみ)
- 所有権移転外ファイナンス・リース(原則処理と例外処理)
仕訳方法は[原則処理]と[例外処理]がありますが
今回は原則処理である利息法について解説します。
※ファイナンス・リースの[利息法]は日商簿記1級の試験範囲となります。
ファイナンス・リースの要件
ファイナンス・リースの要件は下記の判定フローによって区分されます。
移転と移転外による仕訳方法の違い
ファイナンス・リースはさらに下記2種類があります。
- 所有権移転ファイナンス・リース
- 所有権移転外ファイナンス・リース
上記2つによって使用する勘定科目は変わりませんが
リース資産の計上額や減価償却の方法が少し異なります。
【移転と移転外の仕訳の違い】
- リース資産の計上価額
- リース資産の減価償却
リース資産の計上価額
上記のように[貸手の購入価額]が明らかではない場合は
- [見積現金購入価額]
- [リース料総額の割引現在価値]
のいずれか低い方がリース資産の計上額になります。
また[貸手の購入価額]が明らかで
移転リースの場合はリース料の総額の割引現在価値と比較せず
[貸手の購入価額]で計上します。
リース資産の減価償却
[移転リース]は、通常の固定資産と同じように耐用年数で減価償却します。
[移転外リース]は、耐用年数ではなくリース期間で減価償却します。
下記の例題にて原則処理である利息法の仕訳について解説します。
リース取引開始時の仕訳方法
リース取引開始時は下記を元にリース資産を計上します。
また、割引率が複数ある場合は下記のように選択します。
【計算で使用する割引率】
・[貸手の計算利率]を使用する
・貸手の計算利率が不明な場合は[借手の追加借入利子率]を使用する
利息法のリース取引は非常に複雑です。
問題や解答の要点は赤字で記載してます。
(1)-(3)までのそれぞれパターンの仕訳を解説します。
(1)所有権移転ファイナンス・リース(貸手の購入価額が明らかな場合)
リース資産 | 287,721 | / | リース債務 | 287,721 |
所有権移転リースのため、リース資産の計上価額は貸手の購入価額である287,721になります。
(2)所有権移転ファイナンス・リース(貸手の購入価額が明らかでない場合)
リース資産 | 277,510 | / | リース債務 | 277,510 |
①計算で使用する割引率
- 借手の追加借入利子率6%
- 貸手の計算利率4%
[貸手の計算利率]がわかる場合はこちらを使用するため、割引率4%を用います。
②リース資産の計上額
問題分から[貸手の購入金額]の記載がないため下記の低い方を選択します。
- 見積現金購入価額287,721円
- リース料の総額の割引現在価値
リース料の総額の割引現在価値の算出:
100,000÷1.04=96,154
100,000÷1.04²=92,456
100,000÷1.04³=88,900
計:277,510円
見積現金購入価額287,721円>リース料の総額の割引現在価値277,510円
となり、リース料の総額の割引現在価値の方が低いため
リース資産の計上額277,510円となります。
(3)所有権移転外ファイナンス・リース
リース資産 | 267,302 | / | リース債務 | 267,302 |
移転外のため下記の低い方を選択します。
- 見積現金購入価額287,721円
- リース料総額の割引現在価値
貸手の割引率は不明のため、借手の追加借入利子率6%を用います。
リース料総額の割引現在価値
100,000÷1.06=94,340
100,000÷1.06²=89,000
100,000÷1.06³=83,962
計:267,302円
見積現金購入価額287,721円>リース料の総額の割引現在価値267,302円
となり、リース料総額の割引現在価値の方が低いため
リース資産の計上額267,302円となります。
リース料支払い時の仕訳
リース料の支払いには[リース債務の返済]と[支払利息]が含まれています。
リース債務に利率を掛けて[支払利息]を算出し、リース料と支払利息の差額を
[リース債務の返済]とします。
(1)リース料の支払い(1年目)
支払利息 | 11,100 | / | 現金 | 100,000 |
リース債務 | 88,900 | / |
所有権移転で[貸手の購入価額]277,510円と判明しているため
リース開始時のリース資産・負債の金額は277,510円になります。
①支払利息の算出:リース債務に利率4%を掛けます。
リース債務277,510×4%=11,100(支払利息)
②リース債務の返済:支払リース料から支払利息を差し引きます。
支払リース料100,000-11,100=88,900(リース債務の返済)
(2)リース料の支払い(2年目)
支払利息 | 7,544 | / | 現金 | 100,000 |
リース債務 | 92,456 | / |
(1)でリース債務88,491円減少したので、X3年3月時点のリース債務残高は
277,510-88,900=188,610円になります。
①支払利息の算出:リース債務に利率4%を掛けます。
リース債務188,610×4%=7,544(支払利息)
②リース債務の返済:支払リース料から支払利息を差し引きます。
支払リース料100,000-7,544=92,456(リース債務の返済)
(3)リース料の支払い(3年目・最終年度)
支払利息 | 3,846 | / | 現金 | 100,000 |
リース債務 | 96,154 | / |
X4年3月時点のリース債務の残高は
277,510-88,900-92,456=96,154
支払利息:96,154×4%=3,846円(支払利息)
リース期間の最終年度のため、当期でリース債務の残高を0にする必要があります。
そのためリース債務残高96,154円がリース債務の返済となります。
※リース債務96,154+支払利息3,846=1,00,000円で支払リース料と一致します。
リース期間の最終年度はリース債務の残高0にさせます。支払リース料との金額が不一致であれば支払利息で調整し一致させます。
減価償却費の仕訳
リース資産はの減価償却費は下記のようにして算出します。
(1)所有権移転ファイナンス・リース場合
減価償却費 | 55,502 | / | 減価償却費累計額 | 55,502 |
移転リースの場合は耐用年数で減価償却します。
277,510÷耐用年数5年=55,502円
(2)所有権移転外ファイナンス・リース場合
減価償却費 | 92,503 | / | 減価償却費累計額 | 92,503 |
移転外リースの場合はリース期間で減価償却します。
277,510÷リース期間3年=92,503円
所有権移転と移転外で償却期間が異なるので注意しましょう。
まとめ
今回は日商簿記1級の試験範囲であるファイナンス・リースの原則処理である利息法について解説しました。
例外処理である利子込み法・利子抜き法と比べると、非常に複雑です。
所有権移転と移転外で仕訳方法も異なるので気を付けましょう。
【移転と移転外の仕訳の違い】
- リース資産の計上価額
- リース資産の減価償却
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