「電子記録債権」は紙である手形を電子化したものです。
元々日商簿記1級の範囲でしたが、
2016年度には簿記2級の試験範囲、2019年度には簿記3級の試験範囲へ変更となりました。
※電子記録債権の(裏書)譲渡、割引は日商簿記2級の試験範囲になります。
今回は「電子記録債権」について解説していきます。
「電子記録債権」とは?
「電子記録債権」は紙である手形を電子化したものです。
略して「でんさい」とも呼ばれております。
「電子債権記録機関」に必要事項を電子記録することで発生する債権を電子記録債権といいます。
電子記録債権は、手形のデメリットを補ったものです。
以下が手形と比べた場合の電子記録債権のメリットになります。
- 電子なので紛失・盗難のリスクがない。
- 封入や郵送などの手続きがない。
- 印紙税がかからない。(手形では印紙が必要)
- 債権の分割も可能(手形の場合、一部裏書きのようなことができない)
この利便性が評価され手形に代わる決済手段として普及が進んでおります。
このように普及が進み実務でも扱うことが増えてきたため、
日商簿記1級→3級へ試験範囲が変わりました。
約束手形の解説は下記をご参照ください。
「電子記録債権」の仕組み
電子記録債権は、電子債権記録機関という機関のコンピューターに記録し、相手側がそれに了解することで電子記録債権およびで電子記録債務が発生します。
電子記録債権の発生方式は2パターンあります。
- 債務者請求方式:債権者からの申し出により登録する場合。
- 債権者請求方式:債権者からの申し出により登録する場合。この場合は債務者の同意が必要となる。
「電子記録債権」は仕訳処理
「電子記録債権」は手形を電子化でしたものと説明しました。
大まかな流れは手形と同じで、勘定科目は下記のように変わります。
- 「受取手形(資産)」 →「電子記録債権(資産)」
- 「支払手形(負債)」→「電子記録債務(負債)」
- 「手形売却損(費用)」→「電子記録債権売却損(費用)」
例①
(A社の仕訳)
買掛金 | 200 | / | 電子記録債務 | 200 |
※買掛金(負債)が減少し、電子記録債務(負債)が増加します。
(B社の仕訳)
電子記録債権 | 200 | / | 売掛金 | 200 |
※売掛金(資産)が減少し、電子記録債権(資産)が増加します。
例②
(A社の仕訳)
電子記録債務 | 200 | / | 当座預金 | 200 |
※電子記録債務(負債)が減少し、当座預金(資産)が減少します。
(B社の仕訳)
当座預金 | 200 | / | 電子記録債権 | 200 |
※電子記録債権(資産)が減少し、当座預金(資産)が増加します。
勘定科目が変わっただけで、手形と同じ仕訳処理になります。
「電子記録債権」で譲渡・割引きが発生した場合の仕訳
※こちらは日商簿記2級の範囲になります。
例③譲渡した場合
(C社の仕訳)
買掛金 | 150 | / | 電子記録債権 | 150 |
※電子記録債権を譲渡したため電子記録債権(資産)の減少→貸方
買掛金(負債)の減少→借方
(D社の仕訳)
電子記録債権 | 150 | / | 売掛金 | 150 |
売掛金の回収として電子記録債権を受け取るため
電子記録債権(資産)が増加→借方
売掛金(資産)が減少→貸方
例④割引きした場合
(D社の仕訳)
当座預金 | 120 | / | 電子記録債権 | 150 |
電子記録債権売却損 | 30 | / |
※電子記録債権売却損は営業外費用となります。
貸付金・借入金に係る電子記録債権
手形による貸付金の場合、「手形貸付金」という勘定科目を用いますが
電子記録債権による貸付金は「貸付金」を用います。
電子記録債権は用いないので注意しましょう。
(A社の仕訳)
貸付金(資産) | 500 | / | 現金 | 500 |
貸付金(資産)が増加→借方
現金(資産)の減少→貸方
(B社の仕訳)
現金 | 500 | / | 借入金 | 500(負債) |
借入金(負債)が増加→貸方
現金(資産)の増加→借方
(A社・B社の仕訳)
※仕訳なし |
貸付金の電子記録債権は「貸付金」で処理するため、電子記録債権に振り替える必要はありません。
借入金も同様です。
まとめ
以上が「電子記録債権」の解説になります。
勘定科目だけ変わっただけで、仕訳方法は手形とほとんど変わりません。
今後、手形よりも電子記録債権の普及が進んできますので覚えておきましょう。
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