今回は減損会計の【資産のグルーピング/共用資産がある場合(原則)】について解説します。
↓【容認処理】については下記をご覧ください。
減損会計とは?
減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。
減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。
【減損会計の考え方】
- 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
(資産の減少) - 損失を計上する
(費用の増加)
どういう時に減損を行うのか?
固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に
[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。
しかし、その固定資産の収益性が低下し、
[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合、
この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。
その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。
これが「減損」になります。
減損会計の流れ
減損会計は下記のような手順で行います。
今回は【資産のグルーピング】について解説します。
資産のグルーピング
複数の資産が一体となって独立したキャッシュフローを生み出す場合は
「資産のグルーピング」を行って減損会計を適用します。
1つ1つの固定資産が収益性について調べるのは困難です。
そのため、このような単位でグルーピングを行います。
資産のグルーピングの処理方法
資産のグルーピングの処理方法は、下記のようなパターンがあります。
今回は【共用資産がある場合(原則)】について解説します。
共用資産とは?
共用資産とは、複数の資産・資産グループの将来キャッシュフローを生み出すのに貢献する資産をいいます。
例を出すと本社の建物が該当します。
本社の建物があることで、本社の建物内の資産が将来キャッシュフローを生み出します。
この本社の建物が共用資産になります。
共用資産がある場合の減損処理
共用資産がある場合の減損処理は、
下記のように「原則処理」「容認処理」によって処理方法が異なります。
【原則】
共用資産を含むより大きな単位でグルーピングする方法
【容認】
共用資産の帳簿価額を各資産・資産グループに配分する方法
原則処理
原則処理では
「共用資産を含むより大きな単位でグルーピングする方法」で行います。
具体的な手順は下記のようになります。
例題(原則)
(解答)
減損損失 | 5,500 | / | 共用資産 | 5,500 |
(解説)
①資産ごとの減損処理
まず、共用資産を含めずに資産ごとに減損の兆候→認識→測定を行います。
【機械】
①減損損失の認識
[帳簿価額]30,000円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]31,500円のため
減損損失を認識しない
※機械は減損の計上を行わない
【備品】
①減損損失の認識
[帳簿価額]25,000円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]26,000円のため
減損損失を認識しない
※備品は減損の計上を行わない
機械の減損損失:なし
備品の減損損失:なし
②共用資産を含むより大きな単位での減損処理
次に共用資産を含めて資産または資産グループごとに減損の兆候→認識→測定を行います。
【共用資産を含むより大きな単位】
※[機械]と[備品]と[共用資産]
①減損損失の認識
帳簿価額:機械30,000+備品25,000+共用資産10,000=65,000円
[帳簿価額]65,000円>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]57,500円のため
減損損失を認識する
①減損損失の測定
帳簿価額65,000円-回収可能性価額59,500円=5,500円(減損損失)
減損損失の合計:5,500円
増加分を「共用資産」として配分
上記により減損損失の計上額は下記のようになります。
- 機械:なし
- 備品:なし
- 共用資産を含めた合計:5,500円
この増加分を[共用資産]として計上します。
減損損失の合計5,500円-機械0-備品0=5,500(共用資産)
〇減損後の共用資産の帳簿価額
共用資産10,000円-減損損失5,500円=4,500円
減損後の帳簿価額4,500円は回収可能性価額3,500円を上回っているため、
全額減損させます。
減損後の帳簿価額が、共用資産の回収可能性価額を下回る場合、その超過額は各資産の帳簿価額にもとづき配分します。今回は超過額はないため、全額減損させます。
これにより仕訳は下記のようになります。
減損損失 | 5,500 | / | 共用資産 | 5,500 |
図解
[のれん]と[共用資産]がある場合の違い
[のれん]と[共用資産]がある場合の減損処理は基本同じですが、下記のような違いがあります。
【のれん】
- 分割を行う
- のれんを減損する場合は帳簿価額まで減損し、超過額は各資産の帳簿価額にもとづき配分する。
【共用資産】
- 分割を行わない
- 共用資産を減損する場合は回収可能性価額まで減損し、超過額は各資産の帳簿価額にもとづき配分する。
両者の違いはよく覚えておきましょう。
まとめ
今回は減損会計の【資産のグルーピング/共用資産がある場合(原則)】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
コメント