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【図解】ステップ③減損の測定|減損会計

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今回は減損会計の【減損の測定】について解説します。

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減損会計とは?

減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。

減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。

【減損会計の考え方】

  • 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
    (資産の減少)
  • 損失を計上する
    (費用の増加)

どういう時に減損を行うのか?

固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に

[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。

しかし、その固定資産の収益性が低下し、

[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合

この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。

その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。

これが「減損」になります。

【帳簿価額とは?】

帳簿価額とは、取得原価から減価償却累計額を差し引いた金額です。

例えば取得原価が100万で、減価償却累計額が20万であれば

帳簿価額は80万となります。

◆帳簿価額 = 取得原価 − 減価償却累計額

減損会計の流れ

減損会計は下記のような手順で行います。

今回は減損の測定について解説します。

減損の測定

減損の測定とは、減損の認識された資産または資産グループの

減損損失の金額を測定することをいいます。

減損損失は下記のようにして求めます。

【減損の測定】

減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額

※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方

これにより減損損失を計上し、資産の帳簿価額を[回収可能性価額]まで減額させます。

下記のような仕訳で減損損失を計上します。

減損損失
(費用)
/固定資産
(資産のマイナス)
※帳簿価額800円-回収可能性価額470円=330円

減損の測定により、帳簿価額は[回収可能性価額]まで減損させます。

【回収可能性価額とは?】

回収可能性価額とは、その資産を将来利用することで回収が見込まれる金額のことをいいます。

下記2ついずれかの金額が高い方を[回収可能性価額]とします。

回収可能性価額

  1. 正味売却価額
  2. 使用価値

正味売却価額

正味売却価額とは

資産(または資産グループ)の時価から処分費用見込額を控除した金額になります。

◆正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額

使用価値

資産または資産グループの[継続使用]と[その後の処分による正味売却価額]によって得られる将来CFの現在価値のことをいいます。

つまり使用価値とは、「割引将来キャッシュ・フロー」です。

使用価値

割引将来キャッシュ・フロー

ステップ②「減損の認識」では

割引将来キャッシュ・フローを用いましたが

ステップ③「減損の測定」では

割引将来キャッシュ・フローを用います。

減損の測定では割引計算が必要となります。

例題

例題

下記の資料にもとづき機械A,Bの次の問いについて答えなさい

  • ①帳簿価額
  • ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
  • ③減損損失の認識
  • ④減損損失の測定およびその仕訳

[資料Ⅰ]

機械A機械B
取得原価1,000円1,200円
減価償却累計額200円500円
残存使用期間3年3年
毎年の割引前将来CF150円300円
正味売却価額50円100円

※上記は資産はどちらも減損の兆候がある。

当期末時点の[時価]および[処分費用見込額]は下記のとおりである。

機械A機械B
時価600円900円
処分費用見込額150円100円

割引率は3%で、小数点以下は四捨五入する。

(解答)

【機械A】

  • ①帳簿価額
    800円
  • ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
    500円
  • ③減損損失の認識
    減損損失を認識する
  • ④減損損失の測定
    330円

(仕訳)

減損損失330/機械330
※帳簿価額800円-回収可能性価額470円=330円

【機械B】

  • ①帳簿価額
    700円
  • ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
    1,000円
  • ③減損損失の認識
    減損損失を認識しない
  • ④減損損失の測定
    減損損失の計上は行わない。

(解説)

機械A,Bそれぞれについて

減損の認識減損の測定の順で解説していきます。

減損の認識(①-③)

【減損の認識】

[帳簿価額]>[割引将来キャッシュ・フローの総額]

減損を認識する。

【機械A】

機械A

①帳簿価額

取得価額1,000円-減価償却累計額200円=800円

②割引前将来キャッシュ・フローの総額

毎年の割引前将来CF150円×残存使用期間3年+正味売却価額50円=500円

③減損損失の認識

[帳簿価額]800円>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]500円のため

減損損失を認識する

【機械B】

機械B

①帳簿価額

取得価額1,200円-減価償却累計額500円=700円

②割引前将来キャッシュ・フローの総額

毎年の割引前将来CF300円×残存使用期間3年+正味売却価額100円=1,000円

③減損損失の認識

[帳簿価額]700円[割引前将来キャッシュ・フローの総額]1,000円のため

減損損失を認識しない

  • 機械A→減損を認識する
  • 機械B→減損を認識しない
割引前将来キャッシュ・フロー

ここで減損の認識された機械Aは次のステップである「減損の測定」を行います。

減損の測定(④)

機械Aは減損の「認識あり」と判定されたため

減損の測定を行う必要があります。

※機械Bは減損を認識しないため、減損損失の計上は行いません。

【減損の測定】

減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額

※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方となります。

  • 正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
  • 使用価値割引将来キャッシュ・フロー

【機械A】

機械A

④減損損失の測定

(1)正味売却価額

時価600円-処分費用見込額150円=450円

(2)使用価値(割引後将来キャッシュ・フロー)

割引率3%なので、1.03で年数によって割っていきます。

(150円÷1.03¹)+(150円÷1.03²)+((150円+50)÷1.03³)≒470円

(1)<(2)のため、高い方の使用価値470円を[回収可能性価額]とします。

帳簿価額800円-回収可能性価額470円=330円(減損損失)

最終年度では正味売却価額50円も含んだ金額で割引計算を行うので注意しましょう。

割引計算について

ここで少し割引計算について解説します。

割引後とは?

[減損の測定]の使用価値は

割引後将来キャッシュ・フロー」で求めます。

この「割引後将来キャッシュ・フロー」の「割引」とは

割引計算したの金額を指します。

詳しく解説

例えば3年後に100万が受け取ることができるとします。

しかし[3年後の100万][現在の100万]は同じ価値ではありません。

仮に割引率が2%とした場合

[3年後の100万]の現在の価値(割引現在価値)は下記のように計算されます。

100万÷1.02³=94.232..万

割引」とは、この割引を行う前の100万であり

割引」とは、この割引を行う後の94.232..万となります。

↓[割引計算]の詳しい解説は下記をご参照ください。

減損損失の表示

減損損失の財務諸表での表示について解説します。

損益計算書(P/L)

減損損失が原則「特別損失」で計上します。

貸借対照表(B/S)

B/S上の表示では下記の3種類があります。

減損損失の貸借対照表の表示

  • 直接控除形式★原則
  • 独立間接控除形式
  • 合算間接控除形式
例えば
  • 機械の取得原価1,000円
  • 減価償却累計額200円
  • 減損損失300円

上記の場合、それぞれ下記のように表示します。

直接控除形式(原則)

取得原価から減損損失を直接控除して表示します。

※機械:取得原価1,000-減損損失300=700円

独立間接控除形式(容認①)

減損損失は[減損損失累計額]と表示します。

合算間接控除形式(容認②)

減価償却累計額に減損損失を合算させて表示します。

※減価償却累計額200+減損損失300=500円

原則は【直接控除形式】で表示します。

原則処理の[直接控除形式]の場合は

[貸方]は累計額ではなく[固定資産]の勘定科目を用います。

減損損失/機械など
減損損失の計上の仕訳

まとめ

今回は減損会計の【減損の測定】について解説しました。

要点をまとめると下記になります。

  • 減損の測定とは、減損の認識された資産または資産グループの減損損失の金額を測定することである。
  • 減損損失は下記のようにして測定する。

【減損の測定】

減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額

※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方

  • 正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
  • 使用価値割引将来キャッシュ・フロー
減損の測定(割引後将来CF)
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