今回は減損会計【減損の認識】について解説します。
減損会計とは?
減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。
減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。
【減損会計の考え方】
- 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
(資産の減少) - 損失を計上する
(費用の増加)
どういう時に減損を行うのか?
固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に
[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。
しかし、その固定資産の収益性が低下し、
[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合、
この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。
その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。
これが「減損」になります。
減損会計の流れ
減損会計は下記のような手順で行います。
今回は【減損の認識】について解説します。
減損の認識とは?
減損の認識は、減損損失を実施するか否かを検討することです。
この判定は資産または資産グループから得られる
[割引前将来キャッシュフローの総額]が[帳簿価額]を下回る場合は
減損を「認識する」と判定します。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュフローの総額]
→減損を認識する。
割引前将来キャッシュ・フローの総額とは?
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」と聞くとイメージつきにくいかもしれません。
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」は、
経済的残存使用期間にわたって得られる将来キャッシュ・フローをいいます。
要するに「資産を使用することにより得られるリターンの総額」です。
下記の合計を「割引前将来キャッシュ・フローの総額」とします。
【割引前将来キャッシュ・フローの総額】
- 資産の使用により得られるキャッシュ・フローの総額
- 売却によるキャッシュ・フロー
「資産の使用により得られるキャッシュ・フローの総額」とは?
資産を稼働させることによって、毎年得られるキャッシュ・フローのことです。
売却によるキャッシュ・フロー
使用期間経過後はその資産を売却すると考えます。
そのため、売却によって得られる[正味売却価額]を将来CFとして加算させます。
割引前とは?
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」の「割引前」とは
割引計算する前の金額を指します。
↓[割引現在価値]については下記で詳しく解説していきます。
なぜ「割引前」なのか?
それは、減損の認識は慎重に行う必要があるためです。
慎重に行う必要があるため、金額の大きい「割引前」の金額を帳簿価額と比較します。
減損の認識の次のステップの「測定」では「割引後」を用います。
例題
(解答)
【機械A】
- ①帳簿価額
→800円 - ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
→500円 - ③減損損失の認識
→減損損失を認識する
【機械B】
- ①帳簿価額
→700円 - ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
→1,000円 - ③減損損失の認識
→減損損失を認識しない
(解説)
機械A,Bそれぞれを解説していきます。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]
→減損を認識する。
【機械A】
①帳簿価額
取得価額1,000円-減価償却累計額200円=800円
②割引前将来キャッシュ・フローの総額
毎年の割引前将来CF100円×残存使用期間2年+正味売却価額200円=500円
③減損損失の認識
[帳簿価額]800円>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]500円のため
減損損失を認識する
【機械B】
①帳簿価額
取得価額1,200円-減価償却累計額500円=700円
②割引前将来キャッシュ・フローの総額
毎年の割引前将来CF300円×残存使用期間3年+正味売却価額100円=1,000円
③減損損失の認識
[帳簿価額]800円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]1,000円のため
減損損失を認識しない
実務での将来キャッシュ・フローの見積もり方法
日商簿記の試験では[毎年の割引前将来キャッシュフロー]が問題文に記載されています。
→それについては基本は「中長期計画」をベースに見積もります。
上場企業であれば5年程度の期間の中長期計画を策定している会社が多くあります。
事業別に作成していれば、これを元に将来CFを見積もるのが一般的になります。
ただし、中長期計画の数値が高めに設定されていたり、実態と合わない場合は修正する必要があります。
経済的残存使用期間が20年超える場合
経済的残存使用期間が20年超える場合は少し処理方法が異なります。
具体的には下記のように計算し、帳簿価額と比較します。
↓[20年超える場合の減損の認識]は下記で詳しく解説しております。
まとめ
今回は減損会計【減損の認識】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 減損の認識は、減損損失を実施するか否かを検討することである。
- この判定は資産または資産グループから得られる[割引前将来キャッシュフローの総額]が[帳簿価額]を下回る場合は減損の「認識する」と判定する。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュフローの総額]
→減損を認識する。
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