今回は減損会計の【資産のグルーピング/のれんがある場合(原則)】について解説します。
↓【原則処理】については下記をご覧ください。
減損会計とは?
減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。
減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。
【減損会計の考え方】
- 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
(資産の減少) - 損失を計上する
(費用の増加)
どういう時に減損を行うのか?
固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に
[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。
しかし、その固定資産の収益性が低下し、
[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合、
この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。
その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。
これが「減損」になります。
減損会計の流れ
減損会計は下記のような手順で行います。
今回は【資産のグルーピング】について解説します。
資産のグルーピング
複数の資産が一体となって独立したキャッシュフローを生み出す場合は
「資産のグルーピング」を行って減損会計を適用します。
工場(建物)の中に製品を製造する機械があるとします。
これは[工場]や[機械]のどちらかだけでは製品を作ることは出来ません。
両者がそろうことで製品を作ることができ、キャッシュフローを生み出す事が可能となります。
この[工場]と[機械]は1つのグループして減損の判定を行う必要があります。
これが「資産のグルーピング」になります。
1つ1つの固定資産が収益性について調べるのは困難です。
そのため、このような単位でグルーピングを行います。
資産のグルーピングの処理方法
資産のグルーピングの処理方法は、下記のようなパターンがあります。
今回は【のれんがある場合(容認)】について解説します。
「のれん」とは?
「のれん」とは、企業がM&A(買収・合併)で支払った金額のうち、買収先企業の純資産を上回った差額のことを言います。
合併と買収の違い
【合併】
複数の会社が一つになること
※消滅会社あり
【買収】
ある会社が、他の会社の株式や事業を買い取ること
買収された会社は存続し、買収した会社の「子会社」となります。
※消滅会社なし
↓「合併によるのれん」については下記で詳しく解説しております。
↓「買収によるのれん」については下記で詳しく解説しております。
のれんがある場合の減損処理
のれんがある場合の減損処理は、
まず「のれんの分割」を行います。
その後は「原則処理」「容認処理」によって処理方法が異なります。
【原則】
のれんを含むより大きな単位でグルーピングする方法
【容認】
のれんの帳簿価額を各資産・資産グループに配分する方法
のれんの分割
複数の事業に係るのれんが生じた場合
まず「のれんの分割」を行います。
[のれんの帳簿価額]を各事業部の時価などにもとづき分割します。
例題
(解答)
- X事業部係るのれん
→9,000円 - Y事業部係るのれん
→21,000円
(解説)
問題文の記載に従い、のれんの帳簿価額は各事業部の時価を基準に分割します。
〇X事業部係るのれん
のれんの帳簿価額30,000×X事業部の時価30,000/時価合計100,000=9,000円
〇Y事業部係るのれん
のれんの帳簿価額30,000×Y事業部の時価70,000/時価合計100,000=21,000円
「のれんの分割」は原則・容認どちらの場合でも処理方法は同じになります。
容認処理
容認処理では
「のれんの帳簿価額を各資産・資産グループに配分する方法」で行います。
具体的な手順は下記のようになります。
例題(容認)
(解答)
減損損失 | 9,400 | / | のれん | 5,400 |
/ | 機械 | 4,000 |
(解説)
のれんの帳簿価額を各資産へ配分
【機械】
30,000+のれん9,000×60%=35,400円
【備品】
25,000+のれん9,000×40%=28,600円
のれん配分後の減損処理
[減損の認識]では下記2つを比較します。
- のれん配分後の帳簿価額
- のれん配分後の割引前将来キャッシュフロー
[減損の測定]では下記2つの差額を減損損失とします。
- のれん配分後の帳簿価額
- のれん配分後の回収可能性価額
【機械】
①減損損失の認識
[帳簿価額]35,400円>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]27,500円のため
減損損失を認識する
①減損損失の測定
帳簿価額35,400円-回収可能性価額26,000円=9,400円(減損損失)
【備品】
①減損損失の認識
[帳簿価額]28,600円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]29,000円のため
減損損失を認識しない
※備品は減損の計上を行わない
のれん含めた機械の減損損失:9,400円
備品の減損損失:なし
「のれん配分額」を優先的に減損
上記の機械の減損損失9,400円はのれんの配分を含めた金額となります。
この場合「のれん配分額」を優先的に減損します。
- のれん配分額:9,000×60%=5,400円
→この金額を優先的に減損する
そのため下記のような仕訳になります。
減損損失 | 9,400 | / | のれん | 5,400 |
/ | 機械 | 4,000 |
- のれん含めた機械の減損損失:9,400円
- のれんの減損損失:9,000×60%=5,400円
- 機械の減損損失:9,400-5,400=4,000円
図解
上記がのれんがある場合の【容認処理】による減損処理になります。
まとめ
今回は減損会計の【資産のグルーピング/のれんがある場合(容認)】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
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