今回は減損会計の【減損の測定】について解説します。
減損会計とは?
減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。
減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。
【減損会計の考え方】
- 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
(資産の減少) - 損失を計上する
(費用の増加)
どういう時に減損を行うのか?
固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に
[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。
しかし、その固定資産の収益性が低下し、
[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合、
この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。
その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。
これが「減損」になります。
減損会計の流れ
減損会計は下記のような手順で行います。
今回は【減損の測定】について解説します。
減損の測定
減損の測定とは、減損の認識された資産または資産グループの
減損損失の金額を測定することをいいます。
減損損失は下記のようにして求めます。
【減損の測定】
減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額
※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方
これにより減損損失を計上し、資産の帳簿価額を[回収可能性価額]まで減額させます。
下記のような仕訳で減損損失を計上します。
減損損失 (費用) | / | 固定資産 (資産のマイナス) |
減損の測定により、帳簿価額は[回収可能性価額]まで減損させます。
下記2ついずれかの金額が高い方を[回収可能性価額]とします。
【回収可能性価額】
- 正味売却価額
- 使用価値
正味売却価額
正味売却価額とは
資産(または資産グループ)の時価から処分費用見込額を控除した金額になります。
◆正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
使用価値
資産または資産グループの[継続使用]と[その後の処分による正味売却価額]によって得られる将来CFの現在価値のことをいいます。
つまり使用価値とは、「割引後将来キャッシュ・フロー」です。
使用価値
→割引後将来キャッシュ・フロー
減損の測定では割引計算が必要となります。
例題
(解答)
【機械A】
- ①帳簿価額
→800円 - ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
→500円 - ③減損損失の認識
→減損損失を認識する - ④減損損失の測定
→330円
(仕訳)
減損損失 | 330 | / | 機械 | 330 |
【機械B】
- ①帳簿価額
→700円 - ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
→1,000円 - ③減損損失の認識
→減損損失を認識しない - ④減損損失の測定
→減損損失の計上は行わない。
(解説)
機械A,Bそれぞれについて
減損の認識→減損の測定の順で解説していきます。
減損の認識(①-③)
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]
→減損を認識する。
【機械A】
①帳簿価額
取得価額1,000円-減価償却累計額200円=800円
②割引前将来キャッシュ・フローの総額
毎年の割引前将来CF150円×残存使用期間3年+正味売却価額50円=500円
③減損損失の認識
[帳簿価額]800円>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]500円のため
減損損失を認識する
【機械B】
①帳簿価額
取得価額1,200円-減価償却累計額500円=700円
②割引前将来キャッシュ・フローの総額
毎年の割引前将来CF300円×残存使用期間3年+正味売却価額100円=1,000円
③減損損失の認識
[帳簿価額]700円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]1,000円のため
減損損失を認識しない
- 機械A→減損を認識する
- 機械B→減損を認識しない
ここで減損の認識された機械Aは次のステップである「減損の測定」を行います。
減損の測定(④)
機械Aは減損の「認識あり」と判定されたため
減損の測定を行う必要があります。
※機械Bは減損を認識しないため、減損損失の計上は行いません。
【減損の測定】
減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額
※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方となります。
- 正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
- 使用価値→割引後将来キャッシュ・フロー
【機械A】
④減損損失の測定
(1)正味売却価額
時価600円-処分費用見込額150円=450円
(2)使用価値(割引後将来キャッシュ・フロー)
割引率3%なので、1.03で年数によって割っていきます。
(150円÷1.03¹)+(150円÷1.03²)+((150円+50)÷1.03³)≒470円
(1)<(2)のため、高い方の使用価値470円を[回収可能性価額]とします。
帳簿価額800円-回収可能性価額470円=330円(減損損失)
最終年度では正味売却価額50円も含んだ金額で割引計算を行うので注意しましょう。
割引計算について
ここで少し割引計算について解説します。
割引後とは?
[減損の測定]の使用価値は
「割引後将来キャッシュ・フロー」で求めます。
この「割引後将来キャッシュ・フロー」の「割引後」とは
割引計算した後の金額を指します。
↓[割引計算]の詳しい解説は下記をご参照ください。
減損損失の表示
減損損失の財務諸表での表示について解説します。
損益計算書(P/L)
減損損失が原則「特別損失」で計上します。
貸借対照表(B/S)
B/S上の表示では下記の3種類があります。
【減損損失の貸借対照表の表示】
- 直接控除形式←★原則
- 独立間接控除形式
- 合算間接控除形式
直接控除形式(原則)
取得原価から減損損失を直接控除して表示します。
※機械:取得原価1,000-減損損失300=700円
独立間接控除形式(容認①)
減損損失は[減損損失累計額]と表示します。
合算間接控除形式(容認②)
減価償却累計額に減損損失を合算させて表示します。
※減価償却累計額200+減損損失300=500円
原則は【直接控除形式】で表示します。
原則処理の[直接控除形式]の場合は
[貸方]は累計額ではなく[固定資産]の勘定科目を用います。
減損損失 | / | 機械など |
まとめ
今回は減損会計の【減損の測定】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 減損の測定とは、減損の認識された資産または資産グループの減損損失の金額を測定することである。
- 減損損失は下記のようにして測定する。
【減損の測定】
減損損失=帳簿価額ー回収可能性価額
※回収可能性価額は[正味売却価額]と[使用価値]のいずれか高い方
- 正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
- 使用価値→割引後将来キャッシュ・フロー
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