今回は減損会計の【減損の認識/経済的残存使用期間が20年超える場合】について解説します。
減損会計とは?
減損とは資産の価値を減少させ、損失を計上することをいいます。
減損損失はP/L科目の「特別損失」になります。
【減損会計の考え方】
- 資産の価値(帳簿価額)を減少させる
(資産の減少) - 損失を計上する
(費用の増加)
どういう時に減損を行うのか?
固定資産は減価償却により、毎年費用計上すると供に
[固定資産の帳簿価額]を減少させていきます。
しかし、その固定資産の収益性が低下し、
[固定資産の帳簿価額]の回収が見込めなくなった場合、
この資産は帳簿価額としての価値がないと判断されます。
その場合、この帳簿価額を減額する必要があります。
これが「減損」になります。
減損会計の流れ
減損会計は下記のような手順で行います。
今回は【減損の認識】について解説します。
減損の認識とは?
減損の認識は、減損損失を実施するか否かを検討することです。
この判定は資産または資産グループから得られる
[割引前将来キャッシュフローの総額]が[帳簿価額]を下回る場合は
減損を「認識する」と判定します。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュフローの総額]
→減損を認識する。
割引前将来キャッシュ・フローの総額とは?
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」と聞くとイメージつきにくいかもしれません。
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」は、
経済的残存使用期間にわたって得られる将来キャッシュ・フローをいいます。
要するに「資産を使用することにより得られるリターンの総額」です。
下記の合計を「割引前将来キャッシュ・フローの総額」とします。
【割引前将来キャッシュ・フローの総額】
- 資産の使用により得られるキャッシュ・フローの総額
- 売却によるキャッシュ・フロー
資産の使用により得られるキャッシュ・フローの総額
資産を稼働させることによって、毎年得られるキャッシュ・フローのことです。
売却によるキャッシュ・フロー
使用期間経過後はその資産を売却すると考えます。
そのため、売却によって得られる[正味売却価額]を将来CFとして加算させます。
割引前とは?
「割引前将来キャッシュ・フローの総額」の「割引前」とは
割引計算する前の金額を指します。
↓[割引現在価値]については下記で詳しく解説していきます。
なぜ「割引前」なのか?
減損の認識では、将来キャッシュフローは「割引前」を用います。
それは、減損の認識は慎重に行う必要があるためです。
慎重に行う必要があるため、金額の大きい「割引前」の金額を帳簿価額と比較します。
減損の認識の次のステップの「減損の測定」では「割引後」を用います。
経済的残存使用期間が20年超える場合
経済的残存使用期間が20年超える場合は少し処理方法が異なります。
具体的には下記のように計算し、帳簿価額と比較します。
(経済的残存使用期間が20年超える場合)
割引前将来CF=20年間の割引前将来CFの総額+20年経過時点における回収可能価額
20年間までは通常通り[割引前将来CFの総額]で計算し
21年目以降はその時点の[回収可能性価額]で計算します。
つまり21年目以降のみ処理方法が異なるということです。
資産又は資産グループ中の主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超える場合には、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローに基づいて算定された20年経過時点における回収可能価額を、20 年目までの割引前将来キャッシュ・フローに加算する
固定資産の減損に係る会計基準の適用指針第18項
下記2ついずれかの金額が高い方を回収可能性価額としています。
【回収可能性価額】
- 20年経過時点の[正味売却価額]
- 20年経過時点の[使用価値]
※いずれかの金額が高い方
この[回収可能性価額]というのは【ステップ③減損の測定】で学習する内容になります。
20年経過時点の[正味売却価額]
正味売却価額とは
資産(または資産グループ)の時価から処分費用見込額を控除した金額になります。
◆正味売却価額=資産の時価ー処分費用見込額
20年経過時点の[使用価値]
資産または資産グループの[継続使用]と[その後の処分による正味売却価額]によって得られる将来CFの現在価値のことをいいます。
つまり使用価値とは、「割引後将来キャッシュ・フロー」です。
使用価値
→割引後将来キャッシュ・フロー
つまり21年目以降は割引計算が必要となります。
↓[割引計算]の解説は下記をご参照ください。
例題
(解答)
- ①帳簿価額
→4,000円 - ②割引前将来キャッシュ・フローの総額
→3,321円 - ③減損損失の認識
→減損損失を認識する
(解説)
残存使用期間残存使用期間が20年を超えるため下記のように計算します。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュ・フローの総額]
→減損を認識する。
(経済的残存使用期間が20年超える場合)
割引前将来CF=20年間の割引前将来CFの総額+20年経過時点における回収可能価額
①帳簿価額
取得価額5,000円-減価償却累計額1,000円=4,000円
②割引前将来キャッシュ・フローの総額
[1-20年目]と[21年目以降の回収可能性価額]で分けて計算します。
[1-20年目]
毎年の割引前将来CF100円×残存使用期間20年=2,000円
[21年目以降の回収可能性価額]
回収可能性価額は下記のいずれか高い方になります。
【回収可能性価額】
- 20年経過時点の[正味売却価額]
- 20年経過時点の[使用価値]
※いずれかの金額が高い方
20年経過時点の[正味売却価額]
→1,200円(問題文より)
20年経過時点の[使用価値]
21年目以降の将来CFを[割引後将来キャッシュフロー]で計算します。
また割引時は当期末ではなく、20年経過時点で割り引きます。
割引率は3%のため下記のように計算します。
(100円÷1.03¹)+(100÷1.03²)+(100÷1.03³)+(100÷1.03⁴)+((100+1,000)÷1.03⁵)≒1,321円
最後の25年目に正味売却価額1,000円を加算するのを忘れないようにしましょう。
25年目は[将来CF]に[正味売却価額]を加算させた状態で割引計算します。
- 20年経過時点の[正味売却価額]
→1,200円 - 20年経過時点の[使用価値]
→1,321円
上記より20年経過時点の[使用価値]の方が高いため
回収可能性価額は1,321円を用います。
割引前将来キャッシュ・フローの総額
つまり[割引前将来CFの総額]は下記になります。
[1-20年目]2,000円+[21年目以降の回収可能性価額]1,321円=3,321円
③減損損失の認識
[帳簿価額]4,000円<[割引前将来キャッシュ・フローの総額]3,321円のため
減損損失を認識する
なぜ20年超えた部分は回収可能性価額になるのか?
→それは20年を超えた部分はあまりに先の話で、その部分を見積もるのは困難だからです。
20年超える部分を[割引前将来CF]で用いるのは適切でないと考えれます。
そのため、20年超えた部部分は[20年経過時点の回収可能性価額]で判定します。
20年後は市場環境も現在と比べ変化している可能性があるため、それを超える部分は[回収可能性価額]で計算します。
まとめ
今回は減損会計の【減損の認識/経済的残存使用期間が20年超える場合】について解説しました。
要点をまとめると下記になります。
- 減損の認識は、減損損失を実施するか否かを検討することである。
- この判定は資産または資産グループから得られる[割引前将来キャッシュフローの総額]が[帳簿価額]を下回る場合は減損の「認識する」と判定する。
【減損の認識】
[帳簿価額]>[割引前将来キャッシュフローの総額]
→減損を認識する。
【経済的残存使用期間が20年超える場合】
経済的残存使用期間が20年超える場合、[割引前将来CF]は下記のように計算する
◆割引前将来CF=20年間の割引前将来CFの総額+20年経過時点における回収可能価額
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