今回は「新株発行(増資)の手続き」について解説します。
新株発行(増資)の手続きの流れ
取締役会にて新株の発行(増資)が決定した場合、
下記のような流れで増資を行います。
- 株主の募集
- 株式の申し込み
- 株式の割り当て
- 払込期日の到来
株主の募集
取締役会で新株の発行が決定した場合
発行する株式数などを公告をし株主を募集します。
まだ募集の段階のため仕訳なしとなります。
株式の申し込み
この募集を見て応募者が3人(仮にAさんBさんCさん)から申し込み受けたとします。
この時点で申込証拠金600円を受け取ったが、株式の発行は5株(500円)である。
誰に割り当てるか確定していないため、この時点では資本金としては計上せず
「株式申込証拠金(純資産)」で計上します。
株式の申し込みによりお金はもらったものの、申込者の中で誰に割り当てるか決めてない時は資本金ではなく「株式申込証拠金(純資産)」で計上します。
また申込者よりもらった600円は
現金や普通預金と区別するため
「別段預金(資産)」で処理します。
仕訳でいうと下記のようになります。
別段預金 (資産) | 600 | / | 株式申込証拠金 (純資産) | 600 |
株式の割り当て
申込期日が過ぎて、株式を発行した会社は
「誰に何株割り当てるか」決定します。
会社が発行した株式数より多く応募がある場合もあります。その場合は抽選により割り当てられます。
当選からもれたCさんには申込証拠金100円を返金します。
株式申込証拠金 (純資産) | 100 | / | 別段預金 (資産) | 100 |
払込期日の到来
AさんとBさんから払込期日までに払い込みが行われます。
ここで増資の手続きが完了するので、
増資の会計処理を行います。
(1)株式の割り当て
AさんBさんに株式を割り当て払込期日が到来したことで
申込者→株主へ変更となります。
そのため株式申込証拠金500→資本金500へ振り替えます。
(2)別段預金から振り替え
割り当てが決定し、現預金と区別する必要がなくなったため
AさんBさん計500円は
別段預金→当座預金などへ振り替えます。
(1) | 株式申込証拠金 (純資産) | 500 | / | 資本金 (純資産) | 500 |
(2) | 当座預金など (資産) | 500 | / | 別段預金 (資産) | 500 |
日本の場合、株式代金の全額が申込証拠金として支払われるため「払込期日」というものの、実際には払い込みはあまり行われません。ただし、試験上は「払込期日に増資の処理をする」と覚えておきましょう。
例題
申込証拠金を受け取ったとき
別段預金 (資産) | 15,000 | / | 株式申込証拠金 (純資産) | 15,000 |
@500×30株=15,000円
現時点では、払込期日は到来していないため、増資の会計処理は行いません。
申込拠出金は、あとで割り当てもれた申込者に返金しなければなりません。
つまり、この時点ではまだ会社のお金として確定していないため、現預金とは別で「別段預金」として管理する必要があります。
払込期日が到来したとき
(1) | 株式申込証拠金 (純資産) | 15,000 | / | 資本金 (純資産) | 7,500 |
/ | 資本準備金 (純資産) | 7,500 | |||
(2) | 当座預金 (資産) | 15,000 | / | 別段預金 (資産) | 15,000 |
払込期日が到来したため、
増資の会計処理を行います。
(1)株式の割り当て
株式申込証拠金→資本金に振り替えるが
※会社法の指示があるため容認処理として2分の1を「資本金」で処理し
残りを「資本準備金」で処理します。
15,000×1/2=7,500
(2)別段預金から振り替え
増資の手続き完了し問題文の指示により、
別段預金→当座預金へ振り替えます。
↓株式の発行については下記をご覧ください
まとめ
今回は「新株発行(増資)の手続き」について解説しました。
要点をまとめると下記のようになります。
【新株発行(増資)の手続き】
- 新株発行の流れは下記のようになる
- 株主の募集
- 株式の申し込み
- 株式の割り当て
- 払込期日の到来
- 申込時はまだ割り当てが確定していないため、増資の会計処理は行わず下記の勘定科目を用いる
- 資本金の代わりに「株式申込証拠金」
- 現預金の代わりに「別段預金」
- 割り当てが完了し払込期日が到来したら下記のように振り替える
- 株式申込証拠金→資本金
- 別段預金→当座預金などの現預金
- 申込証拠金のうち割り当てがもれた場合は返金処理を行う。
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