日商簿記2級

新株発行(増資)の手続き|別段預金・株式申込証拠金とは?

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今回は「新株発行(増資)の手続き」について解説します。

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新株発行(増資)の手続きの流れ

取締役会にて新株の発行(増資)が決定した場合、

下記のような流れで増資を行います。

新株発行(増資)の手続きの流れ
  1. 株主の募集
  2. 株式の申し込み
  3. 株式の割り当て
  4. 払込期日の到来

株主の募集

取締役会で新株の発行が決定した場合

発行する株式数などを公告をし株主を募集します。

1株100円で5株まで発行する。

まだ募集の段階のため仕訳なしとなります。

株式の申し込み

この募集を見て応募者が3人(仮にAさんBさんCさん)から申し込み受けたとします。

  • Aさんから3株(300円)の応募
  • Bさんから2株(200円)の応募
  • Cさんから1株(100円)の応募

計6株(600円)の申し込みがあり、当社は申込者より申込証拠金600円受け取ったとする。

この時点で申込証拠金600円を受け取ったが、株式の発行は5株(500円)である。

誰に割り当てるか確定していないため、この時点では資本金としては計上せず

株式申込証拠金(純資産)」で計上します。

株式の申し込みによりお金はもらったものの、申込者の中で誰に割り当てるか決めてない時は資本金ではなく「株式申込証拠金(純資産)」で計上します。

また申込者よりもらった600円は

現金や普通預金と区別するため

別段預金(資産)」で処理します。

仕訳でいうと下記のようになります。

別段預金
(資産)
600/株式申込証拠金
(純資産)
600
資産の増加・純資産の増加

この申込者3人(AさんBさんCさん)で

まだ、この中の誰に株式を割り当てるか確定していないので

現時点では株主ではありません。

そのためこの時点では増資の会計処理は行わず

  • 資本金の代わりに「株式申込証拠金
  • 現預金の代わりに「別段預金

で処理します。

株式の割り当て

申込期日が過ぎて、株式を発行した会社は

「誰に何株割り当てるか」決定します。

  • Aさんへ3株(300円)割り当て
  • Bさんへ2株(200円)割り当て
  • Cさんへは割り当てなし

計5株(500円)割り当てた。

Cさんは割り当てられなかったため、申込証拠金100円はCさんへ返金します。

会社が発行した株式数より多く応募がある場合もあります。その場合は抽選により割り当てられます。

当選からもれたCさんには申込証拠金100円を返金します。

株式申込証拠金
(純資産)
100/別段預金
(資産)
100
純資産の減少・資産の減少

払込期日の到来

AさんとBさんから払込期日までに払い込みが行われます。

ここで増資の手続きが完了するので、

増資の会計処理を行います。

(1)株式の割り当て

AさんBさんに株式を割り当て払込期日が到来したことで

申込者→株主へ変更となります。

そのため株式申込証拠金500→資本金500へ振り替えます。

(2)別段預金から振り替え

割り当てが決定し、現預金と区別する必要がなくなったため

AさんBさん計500円は

別段預金→当座預金などへ振り替えます。

(1)株式申込証拠金
(純資産)
500/資本金
(純資産)
500
(2)当座預金など
(資産)
500/別段預金
(資産)
500

日本の場合、株式代金の全額が申込証拠金として支払われるため「払込期日」というものの、実際には払い込みはあまり行われません。ただし、試験上は「払込期日に増資の処理をする」と覚えておきましょう。

例題

申込証拠金を受け取ったとき

例題

A株式会社は、取締役会の決議により、新たに株式30株を1株あたり500円で募集したところ、申込期日までに全株式が申し込まれ、払込金額の全額を申込拠出金として受け入れ、別段預金とした。

別段預金
(資産)
15,000/株式申込証拠金
(純資産)
15,000
資産の増加・純資産の増加

@500×30株=15,000円

現時点では、払込期日は到来していないため、増資の会計処理は行いません。

申込拠出金は、あとで割り当てもれた申込者に返金しなければなりません。

つまり、この時点ではまだ会社のお金として確定していないため、現預金とは別で「別段預金」として管理する必要があります。

払込期日が到来したとき

例題

A株式会社は、払込期日が到来し、株式申込証拠金15,000円を資本金に振り替え、同時に別段預金を当座預金とした。

なお、払込金額のうち「会社法」で認められる最低金額を資本金として処理する。

(1)株式申込証拠金
(純資産)
15,000/資本金
(純資産)
7,500
/資本準備金
(純資産)
7,500
(2)当座預金
(資産)
15,000/別段預金
(資産)
15,000

払込期日が到来したため、

増資の会計処理を行います。

(1)株式の割り当て

株式申込証拠金→資本金に振り替えるが

※会社法の指示があるため容認処理として2分の1を「資本金」で処理し

残りを「資本準備金」で処理します。

15,000×1/2=7,500

(2)別段預金から振り替え

増資の手続き完了し問題文の指示により、

別段預金→当座預金へ振り替えます。

株式の発行については下記をご覧ください

まとめ

今回は「新株発行(増資)の手続き」について解説しました。

要点をまとめると下記のようになります。

新株発行(増資)の手続き

  • 新株発行の流れは下記のようになる
    • 株主の募集
    • 株式の申し込み
    • 株式の割り当て
    • 払込期日の到来
  • 申込時はまだ割り当てが確定していないため、増資の会計処理は行わず下記の勘定科目を用いる
    • 資本金の代わりに「株式申込証拠金
    • 現預金の代わりに「別段預金
  • 割り当てが完了し払込期日が到来したら下記のように振り替える
    • 株式申込証拠金→資本金
    • 別段預金→当座預金などの現預金
  • 申込証拠金のうち割り当てがもれた場合は返金処理を行う。

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