今回は貸倒引当金の算定方法について解説します。
前回の記事では貸倒引当金の意味や仕訳方法を解説しました。
↓前回の貸倒引当金の記事はこちら
貸倒引当金は売掛金など債権残高に引当率を掛けて算出する方法がありますが
算定方法はこれに限った話ではありません。
今回は2つの算定方法を紹介します。
「貸倒引当金」とは?
「貸倒引当金」は当期末の債権残高(売掛金や貸付金など)が将来回収不能になることに備え、将来の損失を算出し計上することになります。
貸倒引当金繰入(費用) | / | 貸倒引当金(資産のマイナス) |
仕訳は上記のようになりますが、金額はどのように算出するのか?
その算定方法である「一括評価」と「個別評価」について解説します。
一括評価とは?
「一括評価」は一般債権と呼ばれているものが対象となります。
「一般債権」とは、回収期限が到来すれば問題なく入金されるであろう債権のことです。
これは簿記3級の内容と同じで債権残高に引当率を掛けて算出する方法です。
【一括評価】での算定方法
貸倒引当金の設定額=債権の期末残高 × 貸倒設定率(%)
債権の大半はこの一般債権です。
この複数の一般債権を一括して貸倒設定率(%)を掛けるため「一括評価」といいます。
貸倒設定率は「貸倒実績率」や「法定繰入率」を用いますが
簿記2級の試験問題では貸倒設定率が問題文に記載されています。
例①
貸倒引当金繰入(費用) | 60 | / | 貸倒引当金(資産のマイナス) | 60 |
※貸倒引当金の設定額=売掛金残高3,000×貸倒設定率2%=60円
個別評価とは?
「一括評価」は貸倒懸念債権と呼ばれているものが対象となります。
「貸倒懸念債権」とは経営破綻まで陥っていないが経営難により回収不能が見込まれる債権です。
上の一般債権は問題なしの通常の債権と言えるためで一括で評価しますが、「貸倒懸念債権」は回収不能になる可能性が高い債権のため個別で評価します。
このことから「個別評価」と呼ばれております。
「個別評価」での貸倒引当金の算定方法は下記になります。
【個別評価】での算定方法
貸倒引当金の設定額=(債権金額ー担保処分・保証回収見込額) × 貸倒設定率(%)
債権金額より、回収見込みのある担保や保証があれば減額し、貸倒設定率を掛けて算出します。
一括評価の貸倒設定率(%)は回収見込みが高いため、1-5%程度ですが
個別評価の貸倒設定率(%)は回収見込みが低いため、数十%程度になります。
例②
貸倒引当金繰入(費用) | 1,300 | / | 貸倒引当金(資産のマイナス) | 1,300 |
※貸倒引当金の設定額=(売掛金残高3,000-担保処分見込額400円)×貸倒設定率50%=1,300円
例③
貸倒引当金繰入(費用) | 1,220 | / | 貸倒引当金(資産のマイナス) | 1,220 |
今度は貸倒引当金の残高がある場合の問題です。
※貸倒引当金の設定額=(売掛金残高4,000-担保処分見込額400円)×貸倒設定率70%=2,520円
当期末の貸倒引当金2,520ー前期末の貸倒引当金1,300=1,220円
貸倒引当金の残高がある場合は、差額で計上するので注意しましょう。
余談:赤字子会社へ貸し付けた場合の貸倒引当金はどうなる?
少し経理の実務の話になりますが、貸倒引当金の設定は売掛金に限らず貸付金も対象となります。
回収見込みがない会社にお金を貸すことは通常ありませんが、相手が子会社(または関連会社)となると親会社が子会社へ貸し付けることがあります。
例えば、親会社P社が子会社Q社へ300万貸し付けた場合、P社の仕訳は下記になります。
貸付金(資産) | 3,000,000 | / | 現預金(資産) | 3,000,000 |
そして当期末、子会社Q社は経営難で100億の債務超過があり、将来1円も返済する見込みがないとします。
この場合、P社はQ社から貸付金を回収できる見込みがないためP社は下記のような仕訳を起票します。
貸倒引当金繰入(費用) | 3,000,000 | / | 貸倒引当金(資産のマイナス) | 3,000,000 |
※貸倒引当金の設定額=(売掛金残高3,000,000-担保処分見込額0円)×貸倒設定率100%=3,000,000円
つまり、返済見込みが全くない場合、貸付金がすべて費用になるということです。
商品を販売して売り上げたり、お金を貸し付けたりしても、回収見込みがないと費用計上されてしまいます。
物を売ることも大事ですが、回収することもとても重要ということです。
そのため新規の得意先と取引する場合は、「与信管理」を徹底し貸倒れリスクがないか事前に調べるようにしましょう。
「与信管理」とは得意先によって取引の可否を決定したり、取引限度額の設定や見直しを行うことです。
まとめ
今回は貸倒引当金の算定方法である「一括評価」と「個別評価」について解説しました。
「一括評価」は簿記3級、「個別評価」は簿記2級の試験範囲になります。
どちらも難しい計算ではないので覚えておきましょう。
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